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フラロビのSS置き場。
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本当は彼岸花の画像を貼りたかった…。


去年一年間はあまりSSを書く気力が湧かなかったり、環境が整わなかったりで、更新は惨憺たる様だったわけですが。
アウトプットに難があっただけで、脳内妄想はいつも通り活発でした。


後、ピクシブなんぞに別名義でUPしてみたりしようかなー、と画策して新作に手をつけたりしてまして。
結局は、ニート気質が抜けなくて断念しました。
だってあそこ、ハートに何かが付くんだもん…心死ぬ。
ここにカウンターつけないのも、イイネ機能つけないのも、アクセス解析絶対やんないのも、数字を見たらモチベーションがダダ下がりそうだからです。


そんなわけで、導入部分しか書いてないSSが2本、宙ぶらりん。
書架にUPするかどうか悩んでます。
UPしたところで『忘れられた島』の二の舞だって分かってんだけど。どうしよ。


++++++++++





花妻恋歌





葉見ず花見ず


夕映えに日暮の物悲しい声が木霊する季節も、いつの間にやら遠く過ぎ去ってしまった。
日も大分短くなって、あれ程猛威を振るった酷暑もどこへやら、山の夕暮れは肌寒く感じるくらいだ。
暑さ寒さも彼岸まで、とはよく言ったもの。
おまけに、山が秋めくのは町よりも早い。
ここいらではもう、彼岸花すらも殆ど見かけない。
時折、道端に見かける彼岸花は、終わりかけの線香花火のようにしょぼくれて、細長い葉陰に隠れている。


一日の仕事を終え、帰り支度を整えたフランキーが、楠の前に立つ。
そして、その樹肌に両掌と頬を押し当て、深く瞼を下した。
いつの頃から始めた習慣か、忘れてしまったけれど、別れ際、フランキーは必ず、楠と寄り添う。
決して姿を見せない女神、仮に姿を見せたとて触れることの叶わない女神。
その神籬である楠を抱き締めれば、己の恋慕も幾らか癒されるかもしれないと、自己欺瞞と知っていながらも行わずにはいられない。


ごつごつした樹肌は、本来の女神の柔肌からは遠く掛け離れたものだなんて分かり切っている。
でも、きっと、この内側には、フランキーの想像も及ばない程に滑らかなものが在るのだ。
硬い茹で卵の殻の内側には、崩れそうに柔らかな身が在るように、
野暮ったい果物の皮の内側には、瑞々しい果肉が在るように、
花と香る、彼女が在る。


会いたくて、
苦しくて、
堪らないのに、


間もなく、ここの修理が全て終わってしまう。
最近では、腕のいい職人の姿はどこへやら、まるで仕事の進みが遅い。
芽生えたばかりの雑草を抜き、鏡のように建具を磨く。
しなくてもいい仕事を見つけることに躍起になって、本来の進捗を牛歩の如く遅らせている。
しかしそれでも、確実に終焉に近づいている。
終わってしまったらもう、フランキーはここに足を運ぶ理由が無くなる。


神籬の楠が根を生やすこの山から、女神は離れることが出来ない。
彼女にはここを離れる理由がない。
自分が手掛けた神社を見に来る、そんな理由では滅多に来られない。
会いたい事情は、自分にしかない。


樹肌をゆっくりと撫でる。
見つけた微かな曲線に、指先を往復させる。
唇を押し当てる。
食い縛った唇から漏れるのは、願い。





女神さんよ
おれはアンタの信仰者だよ
たぶん、この世でたったひとりのさ
神様ってのァ 人間のお願いを聴いてくれるもんじゃなかったっけ?
おれは多くは願わない
ただ一つだけ





「アンタに、会いてェよ…一度でいいからさ…」





そうしたら、諦めるから
その先にある、とんでもなく罰当たりな本当の願いは、よ





今日も、女神は現れてくれなかった。
溜息を吐きつつ、フランキーは帰っていく。
バンが吐き出す排気ガスも、白く煙るようになった。
トムズのバンがガタガタと車体を揺らし、遠ざかっていく。
車が鳥居から見えなくなった時、その傍らに咲き残っていた曼殊沙華の赤色が薄くなった。
それは、完成間近の社殿に戻っていく、緋袴の色の分。


曼殊沙華は、花が咲いている時には葉がなく、葉が茂る時は花が咲かない。
花と葉がお互いを見ることがない花      



続く
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