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フラロビのSS置き場。
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書架の方ではちょこちょこUPもしていたけれど、こちらでは随分とご無沙汰になってました。
やっぱり本誌に推しがいないとモチベーションが保てない。
自己発電にも限度ってもんが。


そんなわけで、
祝!ワノ国編スタート!
フラの介とおロビの未来に祝福あれ!


ややグロ注意。


++++++++++





「アウ。目ェ、覚めたか?」
呟きのように、ロビンに声を掛ける。
「ええ…」
ロビンは寝惚け声で返事をしてから、しばらくの後、フランキーの腕の中に納まっている自分に気付いて、
「…あ     
と身体を離した。
「ご、ごめんなさい、私…」


だらしのない姿をさらしたことが余程恥ずかしかったのか、いつも冷静な女にしては珍しく小さな動揺を見せた。
フランキーは膝に抱えていた細い身体を傍らに下ろすと、ソファに腰掛ける互いの距離を遠くもなくさりとて近くもないものにした。
「ここに来たら、スツールから寝コケそうになってたからよ。こっちに連れて来た。まァ、抱えてたのは……成り行きだ」
フランキーが「何にもしてねェぞ」と大袈裟に肩を竦めて見せれば、ロビンも「分かっているわ」と淡く笑う。
「ね?」
「ん?」
「私……何か、言ってた?」


彼女の伺う意図は透けている。
けれど、何でもない風を装っているから、フランキーはそれに歩調を合わせてやることにした。
「魘されてたな。何か喋ってはいたけども…判読は不明」
取り立てて、大したことでもないように。
「…そう…」
なよ竹のような首が少し俯いて、滑り落ちた黒髪の間から白い首が覗いた。


「お前さ…
「なあに」
「…いや、何でもねェ」


大したことではない建前だから、それに纏わる質問もさりげなく投げ掛けようと思ったけれど、途中で止めた。
フランキー自身、己の過去に魘されたとて、その内容を誰かに詳らかにするかと問われれば、答えはNOだ。
ロビンは、フランキーの計らいを知ってか知らずか、
「ありがとう」
と小さくこぼした。
別に、礼を言われる話でもないので、フランキーは軽く流す。


「寝るなら部屋に行けよ?遅いし、冷える」
太い指にチョイチョイと指された、フランキーと膝を突き合わせた形の自分の剥き出しの脚に、ロビンは苦笑する。
壁に掛かった時計の針に教えられた、自分の中の空白時間が結構なものだった。
そんな時刻にここにいる隣人に当然、素朴な疑問が湧いた。
「あなたは何をしに来たの?こんな、遅い時間に」
ロビンの問いに、フランキーは襟足をぼそぼそと掻いた。


「おれは、仕事上がりの寝酒でも、って思ってよ」
飲み残しのワイングラスの隣に置きっぱなしにされた酒瓶に親指を向ける。
「良くやんだ。一人酒しながら考え事すんのもオツでな」
「考え事?」
小首を傾げる、ロビンの肩で黒髪がサラと鳴った。


「あなた   考えること、あるの?」
「へ。随分と失礼な言い草してくれるじゃねェの」
「ううん、そんなではなくて」
ロビンは俯きがちに小さく首を振ると、
「あなたは……もう、吹っ切れているように見えていたから」
と言った。


エニエス・ロビーに縛された時、互いの深い事情は    互いの了承を得ることもなく、そして望んだわけでもなく    聞き知ってしまった。
それら、他のクルー達は、船長ですら知らない部分を共有してしまったふたりも、あえて話題にしたことはない。
日常は日常として、年長者として、歪んだ己を表に出すこともなく、若い連中に混じって馬鹿をやっているフランキーを見れば、過去を清算できていると思えた。
ロビンの眼差しには、何ら含みも嘘もない。


「あ…余り、触れて欲しくない話だったかしら。踏み込みすぎたわね…私…」
腰を上げようとするロビンの細腕を緩く掴んで引き留める。
「いや、気にするな」
別に、自分の過去話がしたいわけじゃない。
ただ、絶対的な孤独を抱えた者同士、傷を舐め合いたい、そんな夜もある。
フランキーは小さく息を吐くと、独り言のように言葉にした。


「ま、色々とな……島を出たってこたァ、自分で自分に与えた呪縛は断ち切れたんだって、理解してる。バカバーグと…この船のヤツらのお陰で大抵のことは前向きになった。何かっちゃァ大騒ぎで、考えるヒマもくれねェし。…おれは、おれの夢を追いかける、その選択は間違ってねェ… …ただ、自分の中で折り合いが付け切れねェ部分が、まだあってね」
「折り合い?」
「この先おれが生きている内に、折り合いが付くことなんざ永遠に無ェんだって分かってんだがな… 仕事終わりの静かな夜にゃァ、ついつい考えが… あ」
ロビンを見返したフランキーが、申し訳なさそうにロビンの頬を撫でた。


「すまねェな。赤くなってる」
フランキーの胸に凭れていたロビンの頬が色を違えていた。
「枕にするには向かねェんだよ、どこもかしこも鉄だからよ」
フランキーが「すまん」を繰り返すので、くすくす笑いながら、今度はロビンが「気にしないで」と言った。
借りた胸板を指で突くと、硬い感触と、硬い音が返ってくる。


「昔はあなたも……生身、だったのよね」
「ああ…あの日がなけりゃ、今でも生身、だったろう」
「…生身だったら…って考えること、あるの?」
「いや。…自分を改造したことは後悔もねェんだ。後悔があるとしたら…」
深い海底から湧き上がる泡のように、思い出しても詮無い、思い出したくもない記憶が浮かび上がるのを、強制的に押し戻す。
恩人に対する贖罪は、過去を思い出して心を痛めるのではなく、違う方法で行うと決めたのだ。
言葉を呑みこむフランキーを、ロビンも黙って見守る。
「おれは、生身に未練はねェ。…取り返しのつかねェ馬鹿をやった自分に、これでもかって死ぬ程の苦しみを合わせてやりたかったからな」


だから、あの日、フランキーは躊躇いもなく、己の腕を掻っ裂いた。
26年の年月、共に在ったとは思えぬ程、易々と切り落とされた腕は血溜りに転がり、動かぬただの肉塊と化した。
腐肉に成り下がった腕に、海鳥が群がり、啄む様を、フランキーは冷めた瞳で見つめていた。
かつて自分の一部だったそれは海鳥の餌となり果てた。
そして、フランキーは己の肉で誘き寄せた海鳥を捕らえて喰らったのだ。
食料の備蓄のない廃船上で、そして身動きままならない身体での、唯一の狩りの方法がそれだった。


腕を掻っ裂き、脚を掻っ裂き、躯体から切り離され、肉塊に成り果てたそれらは食料を呼び寄せる餌となった。
四肢を使い果たすと、次に白羽の矢が立ったのは傷んだ内臓で、新しい機械の腕は傷口から己の腸を引っ張り出すのに役立った。
腸がごっそり無くなってしまい、ガランドウになった腹部にはコーラを利用した燃料機関を据え置いた。
手の届く範囲の改造には改良を繰り返し、少しずつ、身体は鉄屑に置き換えられていった。



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しばらくフラロビ妄想で生きていけそうです。
人型の何かです。

     
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