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フラロビのSS置き場。
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エンドマークです。


最終的にはフランキーの見た目がロビンの年齢に追いついて逆転現象を起こして、むしろフランキーの方がちょっと気にしてるんじゃないかな>ルックスは34歳フランキーと2年後のロビンで。

最後に後書き有りマス。
いつもSSを書いてて思うのは、最終話の最後の数行の難しさ。


++++++++++





91. 三月の風、四月の雨、五月の花を咲かすため。(4) (最終話)


**********


「とうちゃ-ん、あ-そぼー」
チビが一匹リビングから駆け出して来て、父親の大きな背中に飛び付いた。
「おおぅ、っと」
手入れ中の鋸の刃に指を突っ込みそうになりつつも、背中にしがみつく小さな身体を揺すり上げて支える。
「危ねェなァ。いつも言ってンだろ?急に飛びつくンじゃねェよ」
「ごめんねえ」
ぺた、と柔らかい頬っぺたを首筋にくっつけてくる、小さな温もりは憎めない。


「何だ、お前ェ。向こうでテレビ見てたンじゃねェのか?」
「ばんぐみ、おわっちゃったの」
黒い髪と瞳、それと海パン。
母親からは髪と瞳の色だけを受け継いで、自分からは外見も中身も一切合財を受け継いだ。
髪と瞳の色が違うだけで、彼女が大好きなところまで自分にそっくりの、甘ったれの息子、今年で五つになる。


「フランキー」
リビングから甘やかでやさしい声がした。
フランキーが声の方に振り向くと、リビングの大開口窓からウッドデッキに女神降臨よろしく、愛して止まない美女が現れる。
「ロビン」
フランキーが口元を緩ませると、ロビンはにっこりと笑った。


「精が出るわね、一息入れたら?冷たいコーラ用意したわよ」
「おう。もらうわ」
「あなたたちもどう?」
とロビンが子どもたちに声をかけると息子の方は「わー」と声を上げて一目散に母親の膝元に抱き付いた。


娘は、と言うと先程までの父親との会話に納得いっていない点があるようで、口を尖らしてこう言った。
「ねえ、お母さん。お父さんが嘘を言うのよ?」
「嘘?」
ロビンが瞳を丸くする。


「あのね。お母さんの方が先にお父さんを好きになって、いつもお父さんに捨てられるんじゃないかって悩んでて、ぞっこんで惚れた弱みが何とかで」
「こら、てめェ、チクんなッ!」
フランキーは泡を食って娘の首根っこを押さえようとしたが、危険を察知した娘はとっくに母親の後ろに回り込んでいた。


「やだ、フランキー…子ども相手に何を話してるの」
咎めるようで、恥ずかしそうな、眉根を顰めたロビンの表情に、
「いや、何だ、その、ロビン。ちょいと昔話を…」
と、フランキーはしどろもどろになった。
ほうらね。父親と母親の力関係は、娘が傍で見ていても後者に軍配が上がる。


「だから私、言ったの。捨てられるのを心配してたのはお父さんなんじゃないの?って。だって『出来婚』なんでしょ?」
「出来婚出来婚て…意味分かってンのかよ」
「正しくは、子どもは結婚の後に授かるもの。順番が違う結婚のコトだって、サンジお兄ちゃんが言ってたわ」
「あのヤロウ」
人の娘にいつの間に余計なコトを吹き込んでやがるんだ、という意味の「あのヤロウ」。


「だから…お母さんは、お父さんと結婚の約束をするつもりがなかったかもしれないじゃない、って…本当は…恋人には見れるけど結婚相手としては見れない相手だったかもしれないじゃない…」
娘の語尾が弱くなっていく。
「だから…本当は、私…望まれて生まれて来たんじゃないのかな、って…」
ロビンの背中に漏れる娘の本音。
「莫迦ね…そんなわけないでしょう?」
両親が順番を違えていたことを知り、小さな胸を痛めていた娘をぎゅっと抱き締めた。


多感な時期だもの、ちょっとしたことで不安定になるものね…。
で、あのヒトは何で、一緒になって不安そうな瞳をしているのかしら?


「お父さんが言ったことは全部本当。嘘なんてひとつもないわ」
ロビンは娘を抱き締めながら頭を撫でた。
見上げる娘の賢そうな広い額にキスを一つあげる。
それを見ていた弟が自分にもとせがむので、ロビンは膝をついて息子にもキスをして、ふたりの身体を両手で抱いた。
「そうなの?」
娘はホッとしたような、それでいてやはり別の意味で納得のいっていない声を出す。


「こんなゴリラみたいな変態のオッサン、どこが良かったの?」
「おおい」
リビングに上がり様のフランキーのツッコミは娘に届かない。
ロビンは可笑しそうにクスクス笑う。
「お父さんはね、お母さんが好きになった頃はまだ幾らか細かったのよ?お母さんなんかよりずっと若くて、その若さが眩しかった…」
懐かしそうに当時を振り返る母親はとても綺麗で、同時に切なそうだと娘は思った。


「私は、自分が6つも年上で…先に年老いていくことが怖いの。今もずっとね」
「大丈夫だよ?お母さんの方がずっと若く見えるよ?知らない人が見たら、絶対にお父さんを年上だって思うよ」
「うふふ…ありがとう」


昔から変わらないロビンの悩み。
フランキーが幾ら気にするなと言っても消えないロビンの懸念。
そしてそれを慰める娘とのやり取りを聞きながら、さりげなく下げられている自分というものにフランキーは苦笑した。
父親なんてそんなモンなのかなァ、と思いつつソファに身を投げ、新聞を開く。


「それと変態は…まァ、変態じゃなくなったらフランキーじゃないもの」
「えー」
変態という点を全く問題視していない母親に向けられた抗議の声は
「さすが分かってるなァ」
とコーラを呷りながら豪快に笑う父親に掻き消された。





「ンマー、相変わらず賑やかだな」
そこに現れた来客。
「あー!アイスのおじちゃーん!」
「アイスおじさん!」
子ども二人がアイスバーグに飛びついて笑い声を上げた。


アイスバーグが経営手腕を本格的に振るい始めた辺りから、トムズワーカーズはメキメキと規模を拡大し、今や都心に大きな社屋を構える程に成長した。
社長に就任したアイスバーグはあちこちを飛び回る多忙な日々を過ごしているために、最近ではあまり商店街に姿を見せない。
けれど、商店街にある、この小さなトムズワーカーズの建物が『本社』であり、そこには『会長』のトムがいて、これまでと変わらずに現場仕事をしているので、出来るだけこまめに会いに来て、来ては一緒に汗を流している。
古書店に住まいを移して、ロビンと子どもふたりで暮らしているフランキーもまた『代表取締役専務』なんて大仰な肩書を持ってはいるが、今もトムの下で働いている。
フランキーは一生現場一筋、それでいいのだ。


そんなわけで、なかなか会えないアイスバーグだが、子どもたちはこの伯父が大好きだった。
勿論、お隣に住む、いつも笑っているやさしい『おじいちゃん』のことも大好きだ。
マセ娘は、いつ見てもピシッとパリッとしているアイスバーグが今も独身で、海パンの自分の父親が早くに結婚したのかが、どうしても理解できない。


「いらっしゃい、アイスバーグ」
「よう、どした?こんな朝ッぱらから」
フランキー夫妻が声をかけると、アイスバーグはニヤッと笑って指に挟んだ紙っぺらを子ども達に振ってみせた。
「何、遊園地のチケットをもらってな。どうだ、二人とも、おじちゃんと一緒に行かないか?」
とデートに誘う。
血の繋がりはないけれど、アイスバーグはフランキーの子らを実の甥姪のように、否、自身の子どもの愛してくれて、接してくれる。
フランキーはアイスバーグに感謝するとともに、『アイツは子どもを甘やかし過ぎる』のが難点だと思う。


「行くー!」
「いいでしょ?行っても」
子ども達は騒ぎ立てる。
「いいのかしら、アイスバーグ…せっかくのお休みなのに」
「構わねェよ。おれが好きでこいつらと遊びてェだけだから」
「じゃァ、頼む。連中もずっとおめェと遊びてェって、口癖になってたからよ」
「なら…よろしくお願いするわ、アイスバーグ」


「ふたりとも、行ってこい」
とフランキーが発破をかけると、子どもふたりはあっという間に身支度を整えた。
父親に似て海パンが普段着になってしまった息子も、んしょんしょと短パンを引き上げている。
「おじさんの言うこと、きちんと聞くのよ?」
「はあーい!行ってきまーす!」
「おじちゃん行こうー乗ろうーめるせですー」
旋毛風が消え去ると、夫婦だけの空間は静かになった。





ロビンは自分用のコーヒーを淹れてフランキーの隣に腰かけると
「苛められてたの?」
と訊ねた。
黒い瞳が悪戯っ子みたいな光を湛えていて、フランキーは口を尖らせた。
「苛められてねェよ」
「じゃあ、どうして泣きそうな顔をしていたの?」
「……」
折り畳まれる新聞紙がカサリカサリと音を立てる。


「本当のトコどうだった?」
フランキーは新聞から目を上げず、独り言のように言った。
「本当、って何が?」
ロビンはフランキーの横顔を静かに見つめる。
フランキーがこういう顔をする時は大抵、私のことを考えているのだと、ロビンは知っている。


「あン時、ロビンにとっておれは…あくまで恋愛対象であって結婚対象ではなかった、ってコトなかった?」
「やだ…あのコの言ったこと本気にしてるの?」
ロビンは手にしていたコーヒーをサイドテーブルに置いた。
「や…アイツに言われるまでもなく、ずっと心のどこかに引っかかてたコトなんだ。あン時、子ども作るような真似、おれがしなければ違う未来もあったろ?」
フランキーは丸めた新聞で己の膝を突く。


「でも、おれは後悔はしてねェ。ロビンに苦労させたことを自覚した上で、やっぱり後悔はしねェ。ロビンがこれで、完全におれのモンになったと、もう離れていくことはねェと、本気で喜んだ…」
フランキーは翳った瞳を伏せる。
「…莫迦ね」


ロビンが指先でフランキーの目元に触れると、涙で濡れた。
ぐす…、と鼻が鳴っている。
こんなに大きな身体をして年端もいかない自分の娘に泣かされているなんて。
本当に泣き虫で、とても愛おしい人。


「あなたも莫迦だけど、私も莫迦だわ」
ロビンは水色のリーゼントを『いいこいいこ』と撫でてあげる。
「私もあなたと同じことを考えていたの。ずっと……あの時、私を妊娠させてしまったから、あなたは責任を取らざるを得なくなった…って。付き合って間もなかったのに、あなたは私と、結婚をせざるを得なくなった…」
フランキーは少し驚いたような瞳を上げた。


「付き合いだしてからずっと、考えてたことではあったの。若いあなたの未来を全部奪っても既成事実、作ってしまおうか、って…。あの日、私は分かっていたの、危ない日だって。分かってて、最後の最後に私は何も言わなかった。妊娠が分かった時、嬉しかったわ。あなたを私の運命に、繋ぎとめることが出来たから」
ロビンは小さく息を吐いて、苦く笑う。
「不安だったの。今も、不安だけど。『女房と畳は新しい方がいい』って言うくらいだもの」


フランキーもロビンの髪に指を梳き入れて引き寄せた。
「おれァ…そんなコトワザ、聞いたコトもねェ…」
額と額を擦り合わせ、軽く唇を触れ合わせる。
「本当に莫迦ね、私達。こんなに近くにいて…結婚して12年にもなるのに。子ども達だってあんなに大きいのに。今更、悩む話でもないのに…ね」
「似た者同士、なんだろうよ」
お互いに腕を回す。相手が自分から離れていかないように。
そして今度は、深く、濃く、キスをする。





「三月の風と四月のにわか雨とが五月の花をもたらす。イギリスの古い諺よ。この国にも同じ言葉はあって、こっちでは更に『二月の雪』が加わるの」
「へえ」
ロビンの大きな瞳がフランキーを見つめる。
「花は、厳しい季節を乗り越えて咲く。人間も同じ。努力と苦労があって初めて美しい花を咲かせるの」


今や、ロビンは艶やかに咲く大輪の花のように綺麗で。


「私は…今、あなたとこうしている。とても幸せなの。過去に辛いことや悩んだこと、苦しいことがあったから、あなたの存在に気付けたの。だから今は…あの過去すらも、あって良かったと思ってるわ。だからあなたに出会えたんだもの」


そんな彼女の花を美しく咲かせたのが自分の手だと、理解するのに時間がかかった。





「な?」
フランキーが『いいこと思いついた』という目をしている。
こういう表情は昔から変わらない。
「何?」
とロビンがクスクス笑いで答えると
「三人目、どうだ?」
と提案が飛んできて、さすがにロビンも笑顔が強張った。


「無理よ、もうすぐ私、大台よ?」
と真顔で言うロビンの身体を、フランキーはひょいと抱き上げて、
「平気だって、もう一人くれェ」
と鼻歌混じりに寝室に向かう。
「え?やだ、今から?」
「お誂え向きにガキ共いねェし。時間はたっぷりあるし。心置きなくヤれるなァ」


あなたは普段から心置きなくしてるじゃないの!、
というロビンの言葉は寝室の扉の向こうに消えた。
間もなく夫婦の寝室から漏れ聞こえる、仲良さげな睦言。
三人目、も時間の問題かもしれない。







初夏の風が庭先の花々を揺する。
幾度となく巡る季節を、ずっとふたりで。








三月の風、



四月の雨、


五月の花を咲かすため。


End






++++++++++


postscript



この度は長いお話に最後までお付き合い頂きまして、誠にありがとうございました。
私自身、こんなに長い話を書いたのは初めてで、でも本当に楽しく書き切ることが出来ました。
どこかにも書きましたが、私はフラロビのSSをこの『345』以外に書くつもりはなく、これでフラロビSSは書き納めの予定でした。

だからフラロビに関して書きたいことを全部突っ込もうとした結果、こんなに長くなったのでしょう。
現パロ設定でも、ロビンの過去や登場人物の立ち位置などは原作の流れをトレースすること。
その上で原作ベースでは無理であろう「ロビン大好き!」をフランキーに言わせたい。
ロビンを理解して丸支え出来るのはフランキーしかいないんだよ、という自己満足をこれでもかと注ぎ込みたい。
その過程でふたりには悩んで苦しんで泣かせたい、簡単にはくっつけさせない。等々。

本当はまだ続く予定でした。
記事で「折り返し地点」云々を言っていた時はまだ続ける気でした。
「付き合いだしたら付き合いだしたで面倒なふたり」状態に持って行こうかと考えてました。
鰐からロビンに連絡が入るとか。
でも、『三角関係』とか『焼けぼっくい』とか、そういうのはもう『345』のフラロビに突っ込んだら、何だかこの私でも流石にもう可哀想に思えて。

散々我慢させられてきたんだから、もう幸せになってもいいよね、と。

だから、結局書かないで終わってしまったエピもありますが、それはそれで。
ロビンとサウロが再会してフランキーがヤキモチを焼いたりとか、フランキーがクザンに「ロビンの周りをウロチョロすんな」とナシつけに行って逆にボコられる(クザンはサウロと海軍同期で若き有望株だった裏設定)とか、そういうこともあったみたいです。

インターミッションで挿し込もうかと考えていましたが、ただでさえ冗長な話が間延びしそうだったので、カットしました。
そんなことも裏であったのね、と思って頂ければ。

これにて若ンキー×年上ロビンのお話は終幕です。
ありがとうございました。
少しでも皆様に楽しんで頂けましたら幸いにございます。


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最終話更新ありがとうございます♪お疲れさまでした。フランキーとロビンちゃんに幸あれ!♪ヽ(´▽`)/
Posted by 中村マコ 2013.10.16 Wed 16:26 編集
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しばらくフラロビ妄想で生きていけそうです。
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