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フラロビのSS置き場。
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届いたコーラはめちゃくちゃ温まったコーラだけどね。


TVオリジナル編での、ロビンが上階から囚われた仲間たちを見まわしてフランキーの萎れたリーゼントに気付いて、コーラを届けて脱出を助けるシーン。
あれもまたちょっとしたツボで、他の連中にはロビンに助けてコールをするんだけど、アニキだけは無言でただじっとロビンを見上げるだけ。
なんだろうなぁ…この信頼感、アニメスタッフの中では夫婦確定なんだろう。


++++++++++





27. 思考メイズ-月見テ跳ネル-(前編)


ロビンは濡れ縁でひとり、月を眺めていた。
雲の多い夜空を渡る月は細く、白い光も弱弱しい。
あまり観るには相応しくない月だが、ロビンはむしろその方が好きだった。
皓皓と、辺りを昼のように照らす明るい月は好きじゃない。
夜は闇に溶けていたい。
私みたいな女は特に。
今日のように、惨めな気分の夜は特に。
もう、日付も変わる頃だろうか?
「本当に……間抜けよね……私……」
ロビンの声は虫の声に紛れて消えた。


キイ、とフェンスが開く音がした。
続いてコツコツと飛び石を踏む音。
人の気配に、水色の髪の青年を思い描いたが、足音から別人だと判断する。
自分の心臓のリズムに困惑する。
今の鼓動の乱れは、何故起きたのだろう…


「アイスバーグね?」
庭に出る前に名前を呼ばれた本人は、
「よくおれだって分かったな」
とびっくり顔で現れた。
「足音。私、結構耳が敏いのよ?」
ロビンは組んだ膝の上で頬杖をつき、クスクスと笑う。


アイスバーグはつかつかとロビンの元に寄ると、手にしていたブランケットを手渡した。
「夜はもう、冷えるぞ?」
「ありがとう」
ロビンはそれを受け取って、肩に羽織る。
「よく、私がここにいるって分かったわね?」
「…晩メシを片付けた後、ロビンを見かけなくなったってンで、フランキーのヤツ、ずっとダイニングで勉強してるフリしてキョロキョロしてたんだ。で、ここいらにはいねェんだな、と」
「……」
唐突に出された名前に、ロビンはそっと、視線を庭へ移した。


「ロビンの部屋の前でも、フランキーは時たまウロウロしてた。アイツは気が挫けてドアをノック出来なかったみてェだが」
アイスバーグはロビンと少し距離を置いて、濡れ縁に腰かけた。
「おれはノックしてみた。で、留守だったから、ここだろうと」
「ふふ。私の行くところなんて、そんなにないもの」
寂しそうな、諦めているような、そんな声でロビンは言う。


「それで……フランキーはどうしてるの?」
「鼻鳴らしながら不貞寝してるよ」
「そう…何だか想像がつくわね…それで、私に何の御用かしら?」
アイスバーグの答えは訊かなくても分かっているけれど。
「ロビン…フランキーのこと、避けてた?」
予想通りの問いがやってきた。
「アイツ、ロビンに謝るタイミング計ってたの、気付いてただろ?」
「……ええ、気付いていたわ」
ロビンは小さく息をついて、細い月を見上げた。


傍らでアイスバーグは、ロビンの白い横顔をじっと見ていたが、彼女が何を考えているのかが分からなくて、同じように吐息をした。
「ンマー、アイツが何言い訳したって、あの無節操は褒められたモンじゃねェ。それはおれも否定しない」
そうして、彼もまた暗い庭に目を遣り、ここに来た目的を果たそうと、語り始めた。
「でも…アイツの言い分も分からないではないんだ」
「無節操の言い分?フランキー、私が『理想像』だからそれを越える女を見つけるまでは女遍歴が続く、って言ってたわよ?それのこと?」
「ンマー…それも言い分のひとつだが。遠回りになるけれど、ちょっとおれの話を聞いてくれ」
まずはフランキーの両親の話だ、とアイスバーグに言われ、ロビンは黒い瞳を語り部に向けた。


「アイツの両親ってのは本当にロクデナシだったようだ。父親は大酒飲みで暴力をふるい、母親は男にだらしのない女で男を作っちゃあ亭主とケンカして…の毎日。フランキーは親らしいことをしてもらった記憶がねェって言ってたな」
「そう…なの…」
フランキーの親がロクデナシである、というのはロビンの養父家庭との引き合いに出して、本人がたまに語っていたことだ。


けれど、具体的にどうロクデナシなのか、は訊いたことがなかった。
ロビンには、それが訊いていい話題なのかも分からなかったし、おそらく、フランキーにしてみても訊かれて話したところで楽しい話ではないだろうと推測されたからだった。
フランキーの生い立ちについて正直、興味はあったのだけれど訊けなかったことが聞ける機会を与えられ、ロビンは不謹慎だと思いながらも関心を持って聞いていた。


「で、ある日とうとう、フランキーの母親は男と逃げた。まだ小学校に入って間もねェフランキーを捨ててな」
「……」
「しばらくは親父とふたりで暮らしてたみてェだが…その間、ずい分と殴られた、って言ってたよ。だからフランキーは自分の両親が大嫌いなんだと。親から愛を貰った記憶もない、憎みこそすれ、感謝や愛情なんて一欠片も感じねェ、血の繋がりなんてクソ喰らえって…。おれは…両親が自殺するまでは普通だったからそういうの、経験なくて分かんねェんだけどさ」
ロビンの瞳が無言で丸くなる。


「ンマー…言ってなかったっけな。おれが施設に入った理由」
アイスバーグは薄く笑って、頬に手を置いた。
「おれの両親は会社を経営してたんだが…不景気の煽りを受けて倒産して…どん底に堕ちた。借金を返すために両親は必死に働いたんだけど……ダメで。最後に生活苦から一家心中の道を選んだ」
アイスバーグの眉間に深い皺が刻まれる。
苦しくて悲しい、死の淵に沈みかけた記憶は今でも生々しく思い出される。


「だけどおれは一人、生き残った。それがトムさんに引き取られる、一年前の話」
辛い話を笑顔で締めくくったアイスバーグに、ロビンの翠眉が顰められた。
「皆も……けっこう大変だったのね。ここまで来るのに」
「おれもフランキーも、トムさんに感謝している」


ロビンもフランキーもアイスバーグも、それぞれ厳しい幼少期を過ごして来た。
そんな中、今のフランキーとアイスバーグが真っ直ぐに前向きな人間なのは、偏にトムという人物の存在が計り知れなく大きいのだろう、とロビンは思う。
ならば、自分は?と考える。
自分にも、クローバーという恩人がいた筈なのに、どうしてこうも違うのか。
直向きな彼らを妬む心が生まれてしまいそうで、ロビンは自分が嫌になる。


「ンマー…話を戻そう。」
おれの話はどうでもいいんだと、アイスバーグはまたフランキーを語り始めた。
「フランキーの親父がいよいよ酒でヤバくなって、息子を育てられなくなった。フラッと出てったっきり、家に戻って来なかったらしい。それでフランキーは施設に入ることになった。でも、フランキーは施設が嫌で嫌で、出たくて堪らなかったそうなんだ。別に親父のいる家に帰りたかったわけじゃねェ。施設の『空気』が嫌だったんだと」
分かる気はするけどな、語り部は独りごちる。


「手がつけられない乱暴者で、いつも問題ばっかり起こしてる。そんなガキ、里子としてもらってくれるアテもねェよ。そんな中、たまたま見学に来たトムさんに自分を売り込んで…ンマー、トムさんあんなだからな、『仕方ねェな、ウチに来い』って…」
フランキーにしてみれば、自分を連れ出してくれるなら誰でも良かった。
先にトムに引き取られていたアイスバーグとも、仲良くする気はサラサラなかった。
アイスバーグが持つ、フランキーの第一印象は『冷めたガキ』だった。
今のフランキーの姿からは遠く及ばない。


「ンマー…最初は色々あったけど…そのうちフランキーもトムさんの仕事に惹かれていった。元々、好きだったんだと思う。物を作ることがさ。そのうちにトムさんの中に、実の親からは得られなかった『理想の父親像』を見るようになってった。トムさんのおかげで、アイツの中での『父親像』ってのは塗り替えられて、満たされた」
「そうなの…良かった…」
フランキーが救われた結末に、ロビンは自分のことのようにホッとした顔を見せた。


「だけど依然、満たされてねェのは、『母親像』……ウチにゃァ、身近に女っ気がねェからさ」
「ココロさんがいるでしょう?」
ロビンはいたって大真面目だ。
「ンマー…いつもこの話になるとアレなんだが……ココロさんはナシの方向で」
「どうして?」
「おれもフランキーも、ココロさんに甘えている絵を想像出来ないからだ」
夢見る青年はまだ何か言いたげなロビンに、もうこの話は止め!、と強制終了させた。


「そうそう、『母親像』な」
アイスバーグは咳払いをして仕切り直す。
「男にだらしねェ『母親像』が、そのまんまヤツの『女性像』になっちまった、と思ってくれ。女と付き合う年になって、フランキーも初めのうちはさ、彼女達に自分の母親を打ち消してもらえる、って期待を抱いてたんだと思う。だけど、自分に対し簡単に身体を開く女達に少しずつ、幻滅していったんだ」


下手にモテるのも悪かった。
フランキーは良くも悪くも派手で解放的なので、フランキーに好意を寄せる女もまた、どことなく派手で解放的なタイプが多かった。
真面目で硬いタイプの女子からは、最初から敬遠された。
「おまけに変態だしな」
フランキーの周りには、いよいよもってフランキーの類友が集まる環境が出来上がった。


「告白されるとフランキーは『アンタのことまだ好きでも何でもない。今付き合ってもカラダだけの関係になるかもよ?それでいいのか?』って訊くんだと。すると相手は『それでもいい』って答える。そんなんで付き合ったところで、先は見えてるわな」
フランキーは自嘲する。
結局、どいつもこいつも、おれのカラダ目当てなんだ。
おれと別れても、すぐに違う男と付き合い出す。
女なんて皆、お袋と同じ。


「そして自分も、そんな母親の血を受け継いでいるから無節操なんだ、とさ」
血の繋がりの濃さを真っ向から否定しているフランキーが、諦念の末に辿りついた境地が遺伝。
「母親を嫌って、母親とは違う何かを探して色んな女と付き合って、出した結論がソレ。可哀想だろ?」
結論を出した後も、どこかにきっと違う何かがあると一縷の望みをかけてもがいている。
未だ、フランキー自身も、誰かを本気で愛したことがない。
望みが見つかるまで、フランキーは誰も愛せない。


「そうだったの…」
ロビンは苦しい溜息をついた。
フランキーの葛藤が手に取れるようで。
フランキーの満たされない寂しさが、辺りに漂っている気がした。
もっとも、だからと言って無節操が肯定できるわけではないけれど。
「そんな中、フランキーの中で異色を放ってたのが、ロビンなんだ」
アイスバーグが驚くようなことを言う。


「たった1ヵ月、一緒に夏休みを過ごした高校生の少女が、次第にフランキーの中で理想となった」
ロビンは静かに大きく息を呑む。
月下、騒がしかった虫の歌が止んだ。



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