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フラロビのSS置き場。
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微笑み合ってるのがこれまたいいんだよなあ。


アニメ版エニエス・ロビー編終盤、メリー号に乗り込むシーンで、どうしてスタッフはココロさんにすっ飛ばされたロビンをフランキーに抱き留めさせるシーンを追加したのだろう。
確かに脱力状態のロビンは甲板に叩きつけられてしまうから誰かに受け止めてもらう必要はあったし、多分あの時のサンジを描きたかっただけなんじゃないか、とも思うんだけど、フランキーの腕に収まった後、無言で互いに視線を交わし合うあの感じが以心伝心つーか、夫婦の貫録つーか、まあ、フラロビの目覚めがそこにあったね。
受け止めるために画面の外を飛んでいるロビンを目で追いかけているアニキも、腰を屈めてロビンを足から甲板に下ろしてあげているやさしいアニキも、またいい。


++++++++++





26. 思考メイズ-男子お悩み座談会-(後編)


煙草の煙が白く細く棚引いて、空へと流れ、消えていく。
「人生は一本の長い煙草のようだ、って誰の歌だっけか…」
遠くを見つめ、ウソップが言う。
「言い得て妙だな…燃えて、燻って、いつかは消える…その匂いの余韻を誰かが嗅ぎ取ってくれれば、生きた証が残る、と…」
サンジは新たな煙を宙に吐き出した。
「いいから答えろ」
言わなきゃ良かった、と既に後悔を始めているフランキーがボキボキと指を鳴らした。


「まァ待て、答えないわけじゃねェ。ちょっとはおれにも考える時間をくれよ?」
「お前が深刻に悩んでるのは分かるけどさ、言われた方が現実逃避しそうな内容だってことは、自覚あンだろ?フランキー」
「それは…まァ…」
確かに、自分だって打ち明けられる側だったら、絶対に引く内容ではある。
サンジはたっぷり何回か白煙を吐いてから、返答を始めた。


「そうだな…少なくともおれはねェ。ま、世の中には色んな性癖のヤツがいるから、中には勃つヤツもいるだろうことは否定しねェが…」
「お前って無類の女好きじゃん。姉ちゃんも女だろ?同じカテゴリに入らねェの?」
「姉貴の裸は小さい頃から見てるし……風呂上がりも平気で素っ裸で歩き回って色気もねェし……セックスアピールなんてまるで感じねェ。ある意味、レディーと同じ形をした、別の生きもンだ」
サンジの返事は予想通りのものだった。
「そうだよな…弟は姉に勃たない…」
フランキーは掌底で額をゴツゴツと打った。


「フランキー、そう深刻になるなよ。『姉弟』っつっても、実際は違うんだから。フランキーとロビンに血の繋がりはない、要は精神性の問題だろ?」
ウソップがフランキーの手首を掴んで、額への攻撃を止めさせる。
「そう。だからいいんだよ、勃起しても。ロビンちゃんはいい女なんだろ?いい女に勃起できる、健康な証拠じゃん」
話しているうちにサンジはまたヒートアップしてきたようで、
「つーか、若い身空で勃たんでどうする?色気のある女性を前に勃起しねェ男なんて男じゃねェ!」
と持論を声高に叫ぶ。
「だからそういうことを大声で言うなって!」
もう面倒だなァ、とウソップは空いてるもう片方の手でサンジの肩を押さえた。


「要するにだ」
サンジが新しい煙草に火をつけながら言う。
「フランキーはロビンちゃんのことを、頭では『姉』だと認識してる、でも身体は『女』だと認識してる。蓋を開ければ簡単な話だ。認識にズレが来てんだ、板挟みになってる心が悲鳴を上げちゃってんだろうさ」
白い煙と一緒に「そりゃ辛いわな」と呟く。


「おれも勃っちまったこと自体は悪くねェと思う派だ」
ウソップも賛同した。
「お前がロビンのこと大好きで大事に思ってるの、昔っから見てきたからさ。ロビンをそういう風に見れないお前の気持ちは分かるし。逆に今のロビンを知ってる身としては……あンなのが一つ屋根の下を歩き回ってたらそりゃァ…」
ちょっと想像しただけで、長い鼻の先まで赤くなる。


「てめェ、ロビンで何考えてんだよ」
「なァ、ロビンちゃんってそんッッッなに、凄いの?」
片方からは凄まれて、片方からはハート目で質問される。
「凄ェよ。本人はまるで無自覚なんだけどさ、大人の魅力ってのがムンムンしてるもん。スリーサイズはナミの上だぜ?」
「マジでか?」
ウソップはハート目を優先し、余計な情報を流したために、フランキーに手酷く小突かれた。


「何すンだよ!お前の気持ちが分かるって話をしてただけだろ?」
「サンジに余計なコト言うな!面倒臭ェ!」
「やっぱ紹介しろよ、フランキー」
「駄目だっつの!てめェら、おれの悩みを真面目に考えてくれる気、あンのか?」
「考えてるじゃん」
ウソップは「文句はサンジに言えよ!」と訴えた。


「だからさ、認識のアンバランスさが解消されれば心も楽になる、ってことだ。今しばらくはちと苦しいかも知れんが、時間が解決してくれる問題だよ」
サンジはふーっと煙を吐いた。
「まァ…歪みを修正してバランスを取るのが、現実か、それともお前の認識の方かで、おまえとロビンちゃんの関係も違ったものになりそうだがな」
「関係…?」
「おれが思うに、お前よか、ウソップの方がよっぽど悩むべきだと思うぜ?」


サンジはウソップの首根っこに腕を回して引き寄せた。
「こいつなんてカヤちゃんとまだヤってねェっつーんだから」
「何でおれの話になんだよ?い、いーんだよ、おれんところのことは!」
「ウソップ、お前…まだ童貞だろ」
ウソップの顔が、ぼん、と赤くなる。


「何でヤんねェんだよ?」
「いいんだよ!おれたちはまだプラトニックで!」
「カヤちゃんだぜ?何でヤりたくなンねェの?起つだろ?」
「あーあーあー!聞こえないー!」
「な?こっちの方がずうっと不健全だ。お前の反応が正常だよ、フランキー」
サンジがニッと笑う。
フランキーは幾らか心が軽くなって、サンジに小さく笑い返す余力が生まれた。







「どうだ?少しは気が楽になったか?」
「ああ。さんきゅーな」
フランキーがタバコの煙を追って空を見上げ、
「ダチっていいよなァ」
なんて言う。
サンジもウソップも、どこか照れたような笑みを浮かべて、フランキーと同じように空を見上げた。


「で、そこで本題なんだが」
「「まだあンのかよッ!」」
ふたりの声は見事にシンクロした。
ツッコミのポーズすらぴったりアンシンメトリーで、ロールシャッハテストのようだった。
「も、いいよ…最後まで付き合うから…」
「何だよ、言ってみろよ?」
どうせまた突拍子もない話なんだろうに、相変わらず、真剣に悩んでいる様子にサンジ達の力は抜ける。


「ロビンに欲情するのは事だと思って、昨日の夜は知り合いのとこに泊まりに行ったんだ。欲求不満解消に」
「おう、それは常套手段だな」
「え?そうなの?」
ウブなウソップがふたりの会話に出遅れた。
「それがどうした」
「女抱いたら、まァ…すっきりした。さっきおめェらに話した部分の悩みは蟠ってたけど、溜まってたモンを吐き出せた。そこまでは良かったんだが」
フランキーは今朝のロビンの調子を思い出して身震いをする。


「今朝、女に送ってもらったとこをロビンに見られた。多分、キスしてるとこも」
あの、ロビンの冷たい視線。
思い出しただけで身も凍る。
「前に『節操無しは程々に』って窘められたことがあって。しかも、アイスバーグがロビンに『アイツにとってセックスはスポーツだ』みてェなフォローにもならねェこと言いやがって」
女の匂い消しにシャワーを浴びた後、フランキーはアイスバーグと一喧嘩した。
「てめェのフォローが明後日の方向を向いてたせいで状況が悪化した」
「大体が何でてめェのフォローをおれがせにゃァならんのだ」
と怒鳴り合って、殴り合いに突入する寸前にトムに止められた。


だが、フランキーの義兄への怒りは理解を得ず、友人達は概ね、
「おめェのセックスがスポーツって、事実じゃん。いっつも、格闘技みてェなもんだ、って言ってるじゃねェか」
「その通りだろ?アイスバーグ間違ってねェぞ?」
とアイスバーグに優勢の旗を揚げた。


「で、でも、何もそれをロビンに言うこたァねェと思わね?」
「お前的には間違ったことをしてるつもりはねェんだろ?だったらいいじゃねェか。どんと胸を張ってろよ」
「そのセリフ、今は使い所じゃな…」
「おまえさァ…ロビンに好かれてたいんだろ?可愛い弟って思っててもらいたいんだろ?節操無しを程々にしておく、って助言が聞けないんなら、せめて見つかるなよ」
「そうだ。レディーに見っとも無ェ場を押さえられるなんて、初歩の初歩が出来てねェんだ」
フランキーは仲間内に畳みかけられた。
サンジは「だらしねェなァ」と、煙草をイラと噛む。


「で?肝心のロビンちゃんはどうした」
「その後からロビンが物凄く不機嫌になった。超怖ェ。口もろくすっぽ利いてくんなかった」
貴女のお気に召さない匂いはなくなりましたよ?、とシャワー済みの濡れた身体をアピールしつつ、ロビンの周りをウロウロしたフランキーだったけれど。
取りつく島もない、とはああいうロビンのことを言うのだろう。
全身から黒い何かがどよどよと流れ出て、彼女の周りに結界のようなものが張っていた。
それに踏み込んで近寄ることは自殺行為だ、と動物的勘が訴えた。


朝食の間、ロビンはアイスバーグとトムとはいつも通りにこやかに会話をした。
フランキーはさりげなく、一見その輪の中にに混じっているようなのに、ロビンからはとても自然に、悉くスルーされた。
今日の晩ごはんはフランキーのためにロビンが腕をふるってくれる筈だったのに、当然、リクエストメニューをロビンに伝えることは出来ず。
いつもだったら必ずある、ロビンの「行ってらっしゃい」もなく。
そんなこんなで、フランキーはすごすごと予備校へとやってきたのだ。
「今週のおれ、まるでダメだ……」
フランキーのテンションはダダ下がる。


「今の話、無節操を怒られた、ってんなら分かるが…何でロビンちゃんの機嫌が悪くなるんだ?」
サンジが「解せぬ」と首を捻った。
「ほら…溺愛している兄弟姉妹に恋人ができると、その相手に難癖つけたくなるじゃん?例えばさ、おまえの姉ちゃん達、おまえが彼女を連れてきたらどうするよ?」
サンジは顎に手を当てて、ううーん、と考えた。
「そうだな……とりあえず、付き合う前に自分達に会わせろ言ってるな……会わせたことねェけど」
あの強い姉たちに愛するレディーが攻め立てられている絵を想像して、サンジは鳥肌が立つ思いがした。


「お前が特定の彼女を作らねェで、摘み食い性活してんの、姉ちゃん達の影響か?」
何やらに慄くサンジの様子を見ていたフランキーが訊ねた。
「摘み食い言うな。おれは全てのレディー達のナイトだから、特別を作らないだけだ」
と言いつつも、
「……ま……仮に彼女が出来たとして、あの姉達の矢面に立たせるのはちょっとな、とは思ってるけど…」
と歯切れが悪い。
「だろ?だからおれが思うに、ロビンもサンジの姉ちゃん達と同じなんじゃないのか?昔も今も、ロビンはお前を本当に可愛がってるもんなァ」
ウソップが自分の意見に頷きながら言った。


「結局、ロビンもお前と似たようなもンなんじゃねェの?フランキー」
「同じ?」
「お前がオカズにするのを躊躇うくらいロビンちゃんを『姉』と見ているように、ロビンちゃんはロビンちゃんで、お前に女の影がチラつくとムカつくくらいに『弟』として見ている」
「そう考えたら理屈も合うだろ?」
サンジが勢いよく、煙を吹き出した。


「とりあえず、謝っとけ。レディーを怒らせちゃいかん」
「そうだな。どうせお前の無節操ぶりがなけりゃ始まらなかった話だったんだし?」
「常々思ってたんだ。フランキー、てめェのレディー達への不義理っぷりは問題だ。彼女がいながら二股三股と」
サンジは煙草をフランキーに突き出すと、眉間に皺を寄せて睨みつけた。
「別に誰とも後腐れねェ関係だし」
「後腐れがねェからって複数のレディーを同時に相手にしていいって道理じゃねェだろ」
「偉そうに説教すんな。女食いまくってるお前には言われたくねェ、眉毛」
金髪と水色の頭がゆらりと立ち上がる。


「やんのか、てめェ…相手になるぞ、コラ…」
「ああ?上等じゃねェか、何枚にオロされてェんだ、クソ野郎。言っとくがおれは食ってんじゃねェ、食われてやってんだ」
「ああ、もう、いいよ。フランキー、分かっただろ?本題に関してはお前が謝れば済む話だ」
ウソップがふたりの間に入る。
長身の筋肉ダルマと、足癖の悪い暴力コックの喧嘩の仲裁はヘタレには命懸けだ。
「そうそう。もう節操無し止めます、って言やァ終わりだ」
その時、授業開始の鐘が鳴った。


「さあて。教室にもどるかァ」
ウソップがぐぐっと伸びをしながら先頭を歩き出す。
「あーあ…。何だかもう、勉強する気分じゃねェけどなァ…誰かさんのせいで」
サンジが靴の裏で煙草の火を消した。
「わ…悪かったよ…てめェら、話聞いてくれてさんきゅな」
自分ひとりでは抜けられそうになかった迷路も、仲間と一緒だから抜けられた。
罰が悪そうに感謝の言葉を述べる、デカくて悩める友人に、ふたりは
「「気にすんな」」
と笑った。



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