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フラロビのSS置き場。
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No.1とお似合いに思えてきた。



私的には、クロコダイルはロビンを色んな意味で洗練させてくれた男だと最高なんだけれど、彼の過去如何では印象が大きく変わると予想…女は徹底的に嬲る爬虫類的サディストであって欲しいのに。
何にしてもロビンが男に対して身体を張って生きてきたことには変わりがないんだけど。
ガチなんだろうなぁ…ミンゴが、ふるとかふらないとか、変な言い回ししてるのも意味深だったもんなぁ。


++++++++++






29. 思考メイズ-月見テ跳ネル-(後編)


「私はあの事件に関して事実無根。私の名前は広告塔にされただけ。でもお金を騙し取られた人間からしてみたら、私が上手い抜け穴を使って生き伸びたように見えなくはないでしょう。横領が発覚して自殺をしたクロコダイルの秘書はスケープゴート、実は真犯人は別にいる、っていう説は根強いもの」


莫大な額の投資金を横領したとされる秘書は発覚後、追い詰められてクロコダイルの社屋爆破未遂事件を起こした。
彼は秘書室を占拠し、秘書複数人を人質に立て籠もった。
その際、クロコダイルは殺されかけた秘書達を救い、爆破を未然に防いだとして、詐欺事件の第一容疑者の立場から一転、被害者兼英雄として、その後はマスコミに持て囃される側となった。
クロコダイルは女性秘書を凶刃から守る時に、重傷を負ったことも、世論の同情を得た。


「退院後に行われたクロコダイルの記者会見……あの、顔面を一文字に横断する縫い痕は、かなりセンセーショナルだったもんな…」
ロビンは、クロコダイルが自分の端正な顔つきを嫌っていたことを思い出す。
あの傷痕で念願の『悪役面』になれてきっと喜んでいるに違いない。


「あれのおかげで、爆破未遂事件は自作自演、って論調が吹っ飛ンだからな。あれ程の傷、あんな目立って残る傷を負うような真似、芝居でするわけがねェと、誰もが思った。『秘書を信用していた。知らなかった』なんて嘘臭ェクロコダイルの会見を、世論は鵜呑みにしたからなァ」
「そう…そうやって彼は逃れた。とても派手にね」
ロビンは爆破未遂事件がクロコダイルの狂言だと分かっている。
人質の秘書達も、ご都合主義的に偶然居合わせた目撃者も、皆、クロコダイルが仕込んだ劇の登場人物。
確固たる証拠があるわけではないけれど、それくらいのリスクなど歯牙にもかけない男だった。


「その陰で、私は地味に『何も証拠が見つからない』ことで難を逃れた…黒幕っぽいでしょう?でも、本当に事件関与を匂わせるものが欠片も見つからないの。当事者なのに不自然なくらいにね。当然なのだけど。本当に関与してないのだから。証拠がないのでは、当局も私を解放せざるを得なかった」
ロビンは草臥れたように笑った。
「結局、私は無罪放免。クロコダイルは時の英雄。犯人は自殺、死人に口無し。巨額の横領金は見つからない…」


「ロビン。結局、真相ってのァ…」
「あなたの頭の中で想像しているだけにしときなさい」
ロビンは素早く遮った。
「多分、あなたの想像、当たっていると思うけれど」
アイスバーグは口を噤み、
「人間ってあんまりにもベタなことをされると、かえって『まさか』ってなるのよね。思い込みって怖いわ」
と、ロビンも長い溜息をついた。


「じゃ、最後に。深海に沈んだ文明大陸っての…あれは実在した?それとも、捏っち上げ?」
「分からないわ…ただ…」
「ただ?」
「プロジェクトが立ち上がる前、クロコダイルが私の元に運び込んだ遺物……あれを当時の私は『本物』と鑑定した。そして今でも、その時の私の鑑定眼は間違いではなかったと思っている」
秘密裏に行われた放射性炭素による年代測定でも、ロビンが腐心したそこに彫り込まれた古代文字の解読でも、充分に古代文明の存在を示唆するものだった。


「だから、これも推測にしか過ぎないけれど、クロコダイルは見つけているんだと思うわ。海に沈んでいる、忘れ去られた大陸を…」
ロビンは思いを巡らせる。
船で海を渡り、手付かずの文明に直に触れ、この手で解き明かすことが出来たら。
想像しただけで、ロビンの胸が興奮で震える。
けれどもう、その夢は手放してしまった夢だ。
ロビンはゆっくりと瞬きをして、気持ちを現実に切り替えた。
「クロコダイルはそれを、すぐに世に出さないと思うわ」
数回はトライして失敗するデモンストレーションを繰り返すだろうと、ロビンは読んでいる。


「そういった訳で、事件云々その他諸々に関しての真相は私自身、推測の域を出ないの。でも……私とクロコダイルの関係は、散々ゴシップ誌に書き立てられたし、かなり面白おかしく脚色されてはいたけれど、基本的に外れてはいなかった。これから先も何かの折には表に出てくるのでしょうね…」
ロビンは自ら嘲り、笑う。
「相当…えげつないこと書かれてたな…」
「それも事実だから仕方ないわ…現実は受け入れなくてはね。本当に、爛れた男女関係だったのよ、私とクロコダイル」
愛してたのか?、と言おうとしてアイスバーグは止めた。
そこまで踏み込む必要はどこにもない。


「だから私は…フランキーにも誰にも、何も言えないの」
夜風が黒髪を弄ぶ。
ロビンは五月蠅そうに髪を掻き上げた。
「なのに……フランキーを責めるようなこと……莫迦だわ、私」
これまでずっとロビンは他人に無関心で生きてきた。
周りもロビンに無関心だったから、自然と当たり障りのないように笑って、本心を隠して、距離を測って生きるようになっていった。


でも、フランキーだけは、違う。
フランキーだけはロビンのパーソナルスペースに物怖じしないで入って来る。
偽物の笑顔を看破して、そんな風に笑うなと怒る。
ロビンも、フランキーだけは、踏み込まれても嫌じゃない。
フランキーだけはどれ程近づいて来ても、彼女を脅かすことがない。


「私、思うの。私……フランキーを誰にも盗られたくないんだと思う。仲良しの子が他の子と遊ぶと癇癪を起こす、幼い子供みたいに」
月に7年前の自分とフランキーが映る。
ふたりは楽しそうに、跳ねて遊んでいる。
なのに誰かの手が伸びて、フランキーを連れて行ってしまう。
そこに残るのは寂しさに途方に暮れる自分の姿。
ロビンの胸がきゅうっと痛くなる。
「私、子どもの頃にそういった経験がないから、今、たぶん、それで………ごめんなさい。上手く表現できないわ」


「ンマー、流行り病も大人になってから罹ると重症化しやすいからな」
アイスバーグが、見るからに痛々しいロビンにフォローを入れる。
「盗るとか盗られるとか……何言っているのかしら、私。フランキーの人格をまるで無視してる。彼は私のモノじゃないのに…」
ロビンは月を観る。
月にはもう何も映ってはいなかった。
細い月はナイフとなって、見上げるロビンの眉間に刃を突き立てる。
傷口からは真っ黒い膿がドロドロと流れ出し、ロビンの周りに闇を生んだ。


「ロビン」
名前を呼ばれてハッとする。
「ロビンはあまり、月を観ない方がいい。何だか、月に独りで跳ねて行っちまいそうだ」
「……」
「月を観ると狂気を誘うって俗信があるけれど、何だかロビンは、それに当てはまる気がする」
アイスバーグの冷静な声。


ロビンは幻覚を振り払うように首を振った。
「アイスバーグの言うこと、分かる気がするわ…」
陰の気に引き摺られる、その性分は自分でも気が付いている。
暗く湿った闇が心地よく思える時がある。
今日のように。


「だから、ロビンは月よりも、太陽を観るといい」
「太陽…」
私にはそぐわないわね、と考えていると
「だから、フランキーの傍にいればいいんだよ」
と追って言われて、苦笑した。
「プラスとマイナスが相殺されてちょうどよくなる。フランキーも人並みに落ち着くだろう」
「そうね」
ロビンは、大人の落ち着きを見せるフランキーを想像して、ちょっと可笑しくて、笑った。
ようやく見せたロビンの明るい笑顔に、アイスバーグはホッとする。


「明日の朝、フランキーと仲直りするわ」
いつも通りに微笑むロビンが、アイスバーグときちんと目を合わせて言った。
「やさしいおにいさんなのね。フランキーのためにわざわざ来てくれたんでしょ?」
「ンマー…そういう訳じゃ…」
アイスバーグが照れたように頭を掻く。
「アイスバーグ。ありがとう。私にとってはアイスバーグも可愛い弟なんだもの、弟を困らせ続けるわけにはいかないわ」
ロビンに『弟』と言われ、アイスバーグは少し赤くなって、それでも嬉しそうに頬を緩めた。


「それにトムさんにも…」
「トムさんに何か言われたの?」
「ええ…『何があったかは知らないけれど、どうせフランキーが何かいらんことをしたんだろう。わしの顔に免じて許してやってくれ』って。普通にしてたつもりだけど、トムさんにはお見通しだったのね」
「今朝、おれたちのケンカに仲裁に入って来て、珍しい、って思ってたんだ。いつもは笑って見守る人だから。トムさんは…ロビンに気を使ってたんだな…」
「トムさんは女の子を育てたことがないから、勝手が分からないのでしょうね」


せめて一つ屋根の下で暮らしている間だけでもと、トムが不器用ながらに自分の父親たろうと密かに頑張っていることに気が付いているロビンは、くすり、と微笑んだ。
「私は心を整理する時間が、後もうちょっと、欲しかっただけなの。アイスバーグと話してかなりすっきりしたし。心配しないで大丈夫よ」
明日にはちゃんと元通り。
アイスバーグは「よかった」と呟いた。


「さて、帰ろう。もう遅い時間だ。いい加減、寝ないと…」
立ち上がるアイスバーグに続いて、「そうね」とロビンも腰を上げた。
虫の合唱の合間をカラカラコロコロとサンダルを鳴らして歩く。
前を行くアイスバーグの背中に
「それで…あの…」
と躊躇いがちなロビンの声がかけられた。
アイスバーグは振り返らずに
「さっきの話は、フランキーにも誰にも、言わねェから安心して」
と言った。


「ありがとう、アイスバーグ…」
「今日はずい分、ロビンに感謝されちまったなァ」
アイスバーグが軽口を叩いてくれたので、ロビンもクスクス笑って話を閉めた。







でもいつかきっと。
ロビンの瞳がまた、ほんの少し闇を見る。
私の過去を、フランキーが知る日は、来る。
フランキーはその時、どんな顔をするだろう?
どんな態度を取るだろう?
彼の理想を裏切った汚れた私の実態に、一体何を思うだろう?


ロビンはその日の来るのが、恐ろしい。



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