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フラロビのSS置き場。
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黒く塗り潰しとけばいいよ。


海列車に撥ねられた後、廃船の中で、原作もアニメ(こっちの方がよりマイルド)も普通に立っている描写があって、使い物にならなくなって取り替える程のダメージを負ったんだからアレはダメだと思うわけだ。
千切れてたり、もげてたり、あらぬ方を向いてたりしている筈、でもリアルに描写は無理というなら描き出さないでおいて欲しい、想像力で補うから。
あれだと手足、まだ使えたんじゃないか、って気になるんだよね。


++++++++++





30. 魅力と努力で名誉挽回(前編)


翌日、フランキーはいつもよりも遅く起床した。
のそのそと制服に着替えて洗面所にやって来ると、洗面台の鏡から見返してくる顔は、幾らか腫れぼったい目蓋をしていた。
「何とかこんなモンで済んだか…」
フランキーは鼻先で、へ、と笑った。


昨日、予備校で友人に励まされ、一通りの悩みを解決したフランキーはロビンと仲直りをすべく、勇んで帰宅の途に着いた。
しかし、ロビンに華麗に避けられて、謝るチャンスをもらえず、現在に至る。
昨夜は何だかもう、悩みはなくなったのにひたすら悲しくて、布団の中で涙を堪えるのに終始した。
前回、ロビンとの再会時に大泣きしてとんでもない泣き腫らし顔になって醜態を晒したことは記憶に新しい。
同じ過ちを繰り返すものかと、泣くものか、と七転八倒していたら寝そびれて、寝坊した次第。


「ロビン……そんなに怒ってンのかなァ…」
またロビンに無視されたり避けられたりを想像すると、早々に、謝りに行く気概が挫けてしまう。
気分は、母親に怒られて怖くて近づけないんだけれど、大好きな母親に甘えにいくためには近づかなければならないジレンマを抱えた、幼児に近い。
「うう…ロビンに嫌われるの嫌だ…このままは嫌だ…」
こんなになっても、フランキーの中には「何でロビンにそこまで干渉されなきゃならんのだ?」という考えは欠片もない。


「このままじゃダメだ…気持ちで負けてる…」
ネガティブマインドを無理矢理ポジティブ方面へ捻じ曲げた。
フランキーは冷たい水を跳ね飛ばし、顔をバシャバシャと洗う。
ザッとタオルで顔を拭き、頬をぱあん、と平手打つ。
「おっし!」
タオルをびしり、と肩にかける。
気合いを入れたフランキーは半濡れの前髪からポタポタ水玉を落としつつ、ロビンの待つダイニングへと向かった。


「よ、よおし」
フランキーがダイニングに着き、元気よく「おはよう」を言おうとした瞬間。
ちょっとした騒ぎが起きた。
配膳中のロビンがトムの巨体の脇をすり抜け切れず、盆に載せていた味噌汁の椀をひっくり返してしまったのだ。
4人分の椀の中身はロビンの身体に直撃し、思わずロビンが取り落としたお盆が床に落ち、お椀の中に残っていた味噌汁を一面にぶちまけ、ダイニングは混沌の場と化した。
ロビンは熱さを逃すためシャツを引っ張り、肌と布地の間に空気の層を作る。



「平気か?ロビン!」
フランキーは邪魔な椅子をガタガタと放り投げながらロビンに近づくと、自分の首にかけていたタオルをロビンのシャツの中に上から突っ込んだ。
襟元から中を覗き込んだり、服の裾を持ち上げたりして、ロビンの火傷の有無を確かめる。
ロビンのシャツの上や、鎖骨の下、胸の谷間辺りに張り付いた油揚げを幾つか見つけ、まとめて摘み上げると、フランキーはそれを自分の口の中に放り込んだ。
「ちと赤くなってる。このままじゃいけねェ。下も脱いだ方がいい」
油揚げをもぐもぐしながら言う。
フランキーはトムが投げて寄越したタオルを受け取り、ロビンの太腿の沁みに当てた。


「ロビン、風呂場に行けよ」
アイスバーグが声をかける。
「ようし、おれが」
と、フランキーがロビンの付き添いをしようとすると、
「大丈夫だから。皆で先に食べてて」
と言われた。
ロビンは胸元を押さえ、顔を真っ赤にしている。


パタパタと風呂場へと急ぐロビンの後ろ姿を見送りながら、先程、不慮の事態とは言え大胆にも、ロビンの胸に手を突っ込んだり、上から下から服の中を覗いたりしたことに思い当たった。
咀嚼しきった油揚げをごくりと飲み込む。
今度はフランキーが耳まで赤くなった。
「やあ。おれはなんてことを」
突っ込んだ手指をわきわきと動かして、若干残る柔らかな感触を反芻した。


「本当は悩んでねェんだろ」
アイスバーグの冷ややかな言葉が突き刺さる。
「ほら、お前も拭け」
トムに雑巾を手渡され、男三人は黙々と拭き掃除に勤しんだ。
そしてロビンの言葉に従い、味噌汁を注ぎ直し、黙々と食事をした。







結局、食事中にロビンは戻って来なかった。
作りたての味噌汁はかなり熱かっただろう。
かぶったのは広範囲だし、水で冷やすのも時間がかかるのだろう。
「痕、残るようなことにならなきゃいいけど…」
心配だけれど、風呂場に押し掛けるような真似も出来ない。


「また、謝れなかったなァ…」
フランキーはダイニングでひとり、はあ、と溜息をついた。
トムもアイスバーグも、もう工場に行って仕事をしている。
フランキーは腕の時計に目を落とすと、足元のスポーツバッグを渋々取り上げた。
ロビンが戻ってくるのをギリギリまで待ったけれど、タイムリミットだ。
力無く玄関に向かう。


「また今日も…重たい気持ちで出かけるのかァ…」
フランキーが上がりかまちに腰かけて、グダグダとスニーカーの紐を結んでいると
「フランキー」
と名前を呼ばれた。
ぱ、と声の方に顔を向けると、ロビンがスリッパを鳴らしながらやってくる。
髪にも味噌汁が飛んでいたのか、洗い髪を濡らしたままのロビンが息を切らせてフランキーの傍らに膝をついた。


「良かった。まだ出かけてなくて。色々と時間がかかってしまって…」
ようやくロビンと目と目が合った。
久し振り、と言ってもまるっと一日の話だけれど、本当に久し振りの心地が否めない。
ロビンが話しかけてくれて目を合わせてくれた、ただそれだけのことで、フランキーは鼻の奥が熱くなってきた。
おれって本ッ当ーにロビンが好きなんだなァ、
改めて実感して、やっとのことで訪れた仲直りの予感に、我が事ながら泣けてくる。


「今日こそ作るわ。ご褒美メニュー。何がいい?」
「……スペアリブ、コーラで煮たヤツ。あれ山盛り食いたい」
「分かったわ」
「ろ、ロビン…大丈夫?火傷、しなかった」
「うん、大丈夫。ちょっと赤くなったけど」
「医者、行った方が…」
「平気。フランキーがタオル、すぐに入れてくれたから」
「それも、ごめん。手ェ突っ込んだりして」
「いいの…気にしてないわ」
「トムさんデカいから。当たると、結構衝撃が凄いんだ」
「これからは気をつけるわ」


ロビンがにこっと笑う。
その笑顔が嬉しくて、何だか胸がきゅうっと一杯になって、何だか目元が熱くなってきて、ロビンを見つめているのに一生懸命になってしまって、『ああ、そうだ。謝るんだった』と思い出す。
「あのさ、ロビン」
「フランキー、昨日はごめんなさい。言い過ぎたわ」
びっくりした。
いきなりロビンが謝ってきたから。
謝るのは自分の役目なのに。


「いや、悪かったのは、おれの方だから。ロビンに節操無しも程々に、って言われてたのに…受験生なのに…ロビンに怒られるのも当然で…」
「違うの」
ロビンがフランキーの言葉を遮って、言う。
「誰とどう付き合おうと、フランキーの自由。私が口を挿むことじゃなかったの。私が悪いの、ごめんなさい」
「自由…」
とキッパリ言い切られて、フランキーは何故か、妬かれている方がマシに思えるくらいの寂しい気持ちになった。


「…あの…私、ちょっと苛々してて……あなたに当たってしまったの。あなたは何も悪くない」
ロビンの膝に揃えて置かれた拳がきゅっと握られた。
「私……フランキーに甘え過ぎよね……」
「ロビン…?」
「きっと、あなたしか、こんな風に接してくれる人がいないから…だから…」


ごめんなさい。
ロビンがまた謝った。
ロビンは笑顔を浮かべていたけれど、どこか辛そうで、笑っているのに泣いているみたいで。
刹那、フランキーの目から鱗が落ちた。



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