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フラロビのSS置き場。
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でも、作中で一番「フランキー」って言ってる気がする、数えたことないけど。


エニエス・ロビーの一件の後、ロビンは仲間を役職名から名前で呼ぶようになるんだけれど、もっとも物語で描かれる部分しか読者は分からないわけだからコマの外ではもっと呼んでるのかもしれないが、スリラーバークで「ナミちゃん」な辺り、時間はかかっている。
ルフィ以外で、名前を一番最初に呼ばれたのがフランキー、それ以前は「あなた」だったし、純粋に役職名で呼んだことがなかったから呼びやすかっただけだと思う。
サンジが一番最後なのかな、パンクハザード冒頭、他は皆呼び捨てなのに「サンジくん」ってナミに倣ったんだな、って思ったもの。


++++++++++





46. きみ無き世界、ニシメ色


**********


二年前の今頃。
紫陽花が綺麗に色づき出した頃、新しい白詰草古書店はオープンした。
大きなレトロガラスの引き戸の入り口の前にはたくさんのお祝いの花が並ぶ。
その中でも、フランキーがリメイクした昔からの看板の脇、一番目立つ場所には『トムズワーカーズ一同』の文字が胸を張る祝い花。


入口入ってすぐは吹き抜けで、天井まで続く本棚は二階の本棚に繋がっている。
基本的に二階は一般客立ち入り禁止スペースだが、梯子でもって行き来は可能。
店の中ほどにある小さな階段を下りた先に、大きな一枚板のテーブルと数脚の椅子。
所狭しと並ぶ本棚の森を抜けると、ユーティリティと、ロビンの専用空間。
店は白と木の茶色が基調、それ以外の色は「植物にお願いするから」と持ちこまなかった。


以前濡れ縁があった場所は床を下げてもらい、そのまま庭に出られるようにしてもらった。
硝子戸を開け放すと、吹きこむ風が気持ちいい。
庭先には銀木犀の枝が広がり、適度な日陰を作ってくれる。
クローバーが遺した植物達をメインに、ロビンはガーデニングも楽しんでいる。
今の季節は緑の中に鮮やかな、紫陽花の花。


オープン初日は、ロビンがただでコーヒーを振舞ったこともあり、たくさんの人が訪れた。
しばらくはバタバタと人がごった返していた店内も半月後にはかなりの落ち着きを見せた。
椅子の数以上の客は空気を読もうぜ、的な暗黙のルールが男性客の間で生まれたためだ。
トムズの面々や、ナミやウソップなどの友人、商店街でお世話になる皆さん等々には、オープン前に内覧会と称した簡単なお披露目会を催した。
仲間内はその時に振舞いコーヒーも頂いたし、お祝いも言ったしで、慌しい最中はあえて足を運ばなかった。


フランキーも同様に、オープン後の古書店にはあまり立ち寄らなかった。
大学に入学したてで、それとなく自分自身の新生活が落ち着かなかったせいもある。
それに、見るからにロビンが忙しそうだったし、別に店が開いている時間帯を選ばなくても、フランキーはロビンの店に入れた。
むしろ、閉店後、客のいなくなった頃に顔を出した方が、コーラを御馳走になって、ロビンとゆっくりおしゃべりが出来た。
それから、掃除や後片付けを手伝ったりするとロビンが「とても助かるわ」と喜んでくれたので、特に予定がない日はそうしていた。







でも。


ロビンがトムズから去り、彼女との共同生活が終わって初めて、あの数ヶ月間は本当に薔薇色の日々だった、幸せだったのだと痛感した。
それはフランキーだけでなく、アイスバーグも同じ思いらしく、溜息がちの日々が続く。
ロビンがいなくなってから瞬く間に、家の中はまた散らかしたら散らかしっぱなし、床の上には足の踏み場もないくらいに物が散乱し、洗濯物は干しっぱなしか畳まれずに山積みのまま、そんな花のない男所帯に戻った。
夕食はまた、ココロが作ってくれるようになった。


「別にココロさんの料理が美味くねェワケじゃねェんだ…ありがてェとも思ってる…だが、何かが違うんだ、何かが…」
「ンマー…、それを言っても始まらねェのも分かっちゃいるが…同感だ…」
「食卓に潤いが…もっと彩りが…何かこう、食事を楽しいと思わせる何かが…、足りねェ…」
「ああ、ニシメ色だけじゃ、それは得られねェなァ…」
「そう、ココロさんのはニシメ色なんだ。9割方がニシメ色なんだよ…」
仕事をしながら、トムのいないところで交わされるニシメ会話。


引っ越しの日、トムズの玄関先で
「長いこと大変お世話になりました」
と、まるで嫁ぐ娘が両親にする挨拶の定番を口にして、ぺこり、と頭を下げるロビンに、フランキーはかける言葉がなかった。
既に涙腺が決壊し、ダダ漏れる涙で足元には池が出来ていた。


ロビンは、自分無き後のトムズを心配し、
「よろしければ、新居に移ってもトムズの皆さんの食事を作りましょうか?」
と申し出てくれた。
でも、それをトムがきっぱり断った。
若者たちからは一斉にブーイングの嵐が巻き起こったが、トムは「けじめだ」と言った。


「このまま作り続けたら、いつか終わらせたくなった時に落とし所が見つからなくなる。これからは別所帯なんだ、いつまでもロビンに甘えようとするな。ロビンだって、いつかは結婚するんだ。その時までメシ作ってもらう気か?」
トムの言うことはもっともで。
それよりも何よりも、フランキーにとってはロビンが結婚する可能性を話の引き合いに出されたことが嫌だった。


ただでさえ、ロビンがいなくなってフランキーの生活から明かりが消えたような感じなのに。
その夜、フランキーはロビンが使っていた4畳半を私室としてゲットした。
ロビンの部屋をアイスバーグには使わせねェ、狭くったっておれはここでいい、絶対にそれだけは譲れねェ、と籠城覚悟で主張したが、トムからもアイスバーグからも特に反対は出なかった。
とりあえず運び込んだ布団だけで、4畳半はいっぱいになった。


ロビンの置き土産の彼女の残り香。
翌日には自分の汗臭い匂いに掻き消されてしまうだろう、ロビンの香りを大事に吸い込む。
「♪十五で姐やは 嫁にいき…」
ロビンは24だけど。
新しいフランキーの寝室からは、辛気臭い「赤とんぼ」がエンドレスで流れた。







そんなこんなで半月後、そろそろ客足も落ち着いた頃だろうと、久し振りにロビンのところに皆で顔を出すことになった。
フランキーは大学の帰り、最寄り駅前でウソップとばったり鉢合わせ、合流した。
ウソップは今回声を掛け合った仲だから、いい。
問題は。
「ウソップ!何でコイツをまた連れてくンだよ!」
ウソップと連れだって歩いていた、女好きで女たらしで女に目がない男、サンジ。


この春、ウソップもサンジも無事に進学することが出来た。
サンジは可愛い女の子の多い、ミッション系四大の仏文科へ。
ウソップは予備校に通ったのにも関わらず、直前になってアート系専門学校へ進むことを選択した。
進路はバラバラだが、こうやってつるむ仲なのは変わらない。
だが、フランキーは今日サンジを誘ったつもりは毛頭なかった。


「そう邪険にすんなって。同じ商店街に住む仲間なんだから」
咥え煙草でニンマリと笑うサンジの言葉に、フランキーは
「はァ?!」
としか返せない。
「サンジのヤツ、この町に引っ越して来たんだとよ」
とのウソップの説明に
「ま、マジでか」
と絶句する。


内覧会の情報をサンジにうっかり口を滑らしてしまったウソップが、
「ロビンちゃんを紹介しろ!」
という気迫に押し切られ、仕方なく連れてきたあの日、
「おれ、ここに、住むー!」
というサンジの絶叫が一繋商店街に響き渡ったことを、フランキーは思い出す。


有言実行してしまったサンジの女にかける執念、その馬鹿さ加減はやはり侮れない。
帰り道、サンジは(有)ヴァース不動産に駆け込み、町内の物件を見て回ったらしい。
今や、『バラティエ一繋町店』を出店する目標が生まれたサンジは、既に空き店舗が出たら連絡をくれるよう、不動産屋従業員のラキにチャラい名刺を置いてったとか置いてかなかったとか。
この異常なくらいの行動力には頭が下がる。


「この商店街のレディー達のレベルは高過ぎる!パラダイスだ!」
往来で、ハート目のサンジが叫ぶ。
フランキーとウソップは、サンジと仲間だと思われたくなくて、少し離れて歩く。
「ナミさん、カヤちゃん、ノジコお姉様、マキノちゃん、たしぎちゃん、くいなちゃん…」
内覧会で知り合ったレディーの名前を、まるで吟遊詩人が抒情詩を謳うかの如く、挙げていく。
不意に、道場双子姉妹とセットでマリモ頭が連想され、ソイツと初対面でいきなり大喧嘩をしたことを思い出し、ギリ、と煙草の吸い口を噛み潰した。


「あのクソ野郎は一目見た時から気に入らなかったんだよ…ってイヤイヤ、今はパラダイスを考えるタイムだ……ラキちゃんも、そうそう、ナミさんの大学で友達になったっていうビビちゃんも…」
枚挙に遑がない。
「そろそろ店に入ってもいいか?」
いつの間にか古書店に到着、ウソップに声をかけられ、サンジは我に帰った。


「おっと、おれとしたことがー!忘れちゃならねェ、ロビンちゃんの存在を!」
くわっと目を剥き、全身から炎を噴き出すサンジに、
「忘れてろよ、一生」
とフランキーは言った。


ロビン初見時のサンジが、フランキーやウソップの語るロビン像が誇大表現でもなんでもないことを知り、素直にそれを認めた、ところまでは良かった。
ロビンにお祝いの大きな花束を差し出した、ところもまあ、良しとしよう。
その後サンジは延々と、フランキーには決して口に出来ないような美辞麗句を流れるように並べ立て、案の定美人店主を口説き、止め(対フランキー)にロビンの手の上にキスをしたことを、
フランキーは一生忘れない。



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