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フラロビのSS置き場。
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ナミとの関係は、職人肌の親父と生意気な年頃の娘、って感じ。


フランキーも、再会するまで仲間をあだ名で呼ぶことが多かった。
麦わら・グルグル・小娘、ロビンのことも「ニコ・ロビン」ってフルネーム呼びで、名前なんだけど一種のあだ名みたいだったし、バルジモアでいきなり巻き舌で「ルフィ」とか言い出した時には違和感あった(それまでルフィって言ったことないわけじゃないけど)。
ナミを「小娘」って呼ぶのは結構好きだったなぁ、フランキーにとって一回りも下のナミはガキなんだ、って感じが凄くして。


++++++++++





48. selfish (1)


一晩寝れば、クサクサした気分もどうにかなると思ったのに。
フランキーは寝て起きてもどうにもならなかった胸の痞えに顔を顰めた。
ダイニングテーブルの上に朝寝坊用に残された、朝食に適当に掛けられたラップを剥がす。
火の通り過ぎた目玉焼きを温めたら更に黄身が硬くなるだろう、と思ったがそのままレンジの中に放り込んだ。
マイクロ波が飛び交う電子レンジの中をぼんやり眺めながら、昨日感じた、ロビンとの距離、について考えた。







ロビンがトムズから引っ越していって、日は浅い。
彼女がトムズにいた頃に比べたら、一緒に過ごす時間は格段に減ったけれど、それでも毎日ちょっとでも頑張って時間を作って、ロビンとは会っていた。
それまでと何ら変わらずに、仲良く、話をして、笑って。
昨日の朝までは自分とロビンの関係は何にも変わってなかった。
少なくとも、フランキーは何にも変わっていない。
ロビンのことは大好きだと、胸を張って言える。


なのに、フランキーの心には寂しい風が吹き込んだ。
ロビンが、自分の知らないところで問題なく人間関係を築いていたことに、フランキーはショックを受けた。
トムズで暮らしていた時は、何でも情報を共有できた。
トムズに住んでいたならば、誰かがロビンに頼み事をしたり、逆にロビンが誰かに頼み事をしたり、誰かと会ったり、そういったことは全部、フランキーは把握できた。


だけど昨日、ほんの少しの時間で、フランキーが新たに見聞したことが多くて。
住んでいるのは隣でも、住む屋根が変わったら、こんなにも彼女の世界は広がるものなのか。
自分の知らない、彼女の生活。
何よりも、新しい世界で、やさしい仲間と楽しそうにしているロビンを「良かった」と素直に喜べない自分に、フランキーは幻滅した。


とにかく、何を置いても、彼女が幸せで、心安く生きていけること。
フランキーと離れたところではこれまで得ることの叶わなかった、暖かな人間関係を誰とでも築いていけること。
ロビンは誰よりも綺麗で、誰よりも賢くて、誰よりも優しいのだから、誰よりも幸せになっていい。
これまでがとんでもなく薄幸だったロビンを思えば、それを手放しで喜ばなくてはならないことは、フランキーだって分かっている。


けれど、ロビンに必要とされない自分、
自分を必要としなくても大丈夫なロビン、
それらがどうしても許せなかった。
我儘を叫ぶフランキーと、そんな自分を叱咤するフランキー、ふたりのフランキーが鬩ぎ合い、心と頭がギリギリと引っ張られて不安定になっていく。


子どもっぽい我儘。
最低な自分勝手。


己の心の安定のために、またロビンの不幸せを願っている。
それで自己嫌悪に陥っても、ロビンの不幸を願わずにはいられない。
ロビンが一番に幸せな時に、一番近くにいるのは自分であって欲しい。
なのに、自分がいなくてもロビンが幸せになってしまうかもしれない。
己の存在意義がグラグラと傾いでいく。
自分がこんなに愚かしくなってしまうのは、全部ロビンのせいだ、とフランキーは考えた。


ロビンは。
おれがいなくても、笑えるンじゃないの。
おれがいなくても、楽しそうにしてて。
おれがいなくても、ロビンの生活は回ってる。
おれがいなくても、やってけンじゃん。


何だよ。
おれ、馬鹿みてェ。







あたため終了の電子音が鳴る。
無造作に手を突っ込んで、考えなしに皿を掴んで、あまりの熱さに声をあげた。
誰もいない静かな空間に響いた自分の間抜け声に、イライラと舌打ちする。
今度はちゃんと、布巾で摘んでテーブルへと運ぶ。
途中、テーブルの脚に嫌という程、足の小指をぶつけた。
「痛ッてェ!」
膝を折り、思わず皿をテーブルの上に放り出す。


頭の上で派手な音がした。
痛みを訴える個所を涙目でさすりさすり、テーブルを見ると、後片付けが物凄く面倒くさそうな光景が広がっていた。
しばし無言で立ち尽くす。
「何か……今週のおれ、ダメだ、きっと」
はまってしまった悪循環は、この胸の痞えのせいだ、とフランキーは思った。







一方的に、不条理な散々な思いをして、フランキーはようやく大学に向かう。
表通りに出ると、開店前の古書店の前で掃き掃除をしているロビンがいた。
ロビンは鼻歌交じりで、気分が良さそうで、こんなにも鬱屈している自分とは思いっきり真逆に見えて、フランキーのイライラが更に募った。
視線を感じて、ロビンが振り返る。


「おはよう。フランキー」
にこり、とロビンはいつもと変わらぬ笑顔で挨拶をした。
変哲もない天気、変わり映えのしない景色、いつもと変わらない朝、いつもと変わらない挨拶。
なのに、フランキーの胸は塞いでいて、
「ああ、おはよ」
と自分でもびっくりするくらいにぶっきら棒な挨拶が口をついた。


「どうしたの?どこか具合悪いの?」
ロビンが一気に心配顔になった。
そりゃそうだ、自分でもびっくりしたくらいの無愛想さだ、ロビンはもっとびっくりするに違いない。
こりゃァいけねェと、苦労して笑顔を作って
「別に、平気」
と答えた。


「それならいいんだけど…」
いいと言いながら、ロビンの笑顔は曇っている。
昨日、他の誰に対してもロビンの笑顔は晴々していたのに、どうして自分に向ける笑顔だけが曇っているのか、フランキーには呑み込めない魚の小骨みたいに引っ掛かる。
曇らせているのは自分自身だと理解してても、腹が立つ。
今日に限って、皆にと同じ笑顔をくれないロビンに腹が立つ。


「そうだわ。ねぇ、フランキー。今日、帰りに…」
フランキーの想いを知る由もないロビンが、何かを思い出したように言うのに対し、
「あの、さ。ちょっとしばらく、ロビンとこ寄れないかも」
フランキーからは発作的に、そんな言葉が出た。
「え?」
ロビンは突然のことに、二の句が継げない。


「部活の方がさ……忙しくなりそうで、帰りが凄く遅くなるんだ」
「ああ…水泳部の話?」
「そう。この先大会があったり、おれ、新入部員だったりで」
大会があるのも、自分が新入部員なのも、嘘じゃない。
だけど、ロビンのところに顔を出せなくなる程、帰りが遅くなることはない。
「そう。仕方ないわね」
初めてついた嘘に、フランキーの胸が痛んだ。
ロビンの残念そうな微笑みを見たくなくて、フランキーは目を逸らした。


「朝も…朝錬あるからさ。明日からは凄ェ早いんだ」
それも嘘だ。
今日くらいに出れば、ギリギリ間に合うのだから。
嘘をついたからには辻褄を合せないといけない。
明日からどうやって朝と夜の時間を潰すか、考えなければならなくなった。


「そう。フランキー、大変なのね…」
「うん。だから、まァ…顔出せる時、頑張って出すから」
ちらり、とフランキーが視線を上げた先で、ロビンがにっこりと笑った。
「いいわよ。無理しないで」
いいわよ、とロビンに言われて、フランキーの中で何かが切れた。
その後どうやって、ロビンと別れて駅に向かったのか、よく覚えていない。
気がつくと、目を尖らせて、ムカムカと足を前に出していた。


しばらく朝も晩も会えねェって言ってるのに、頑張って顔出さなくてもいい?
何だよ?
ロビンはおれに会えなくても構わねェってのかよ!
ああ、そうかい。
ホント、おれがいなくったってロビンは平気、大丈夫ってか。
何で、おれがいなくても平気なんだよ?
おれがいねェとダメじゃなかったンじゃねェの?
むしろ、こんな手の焼けるヤツは周りにいねェ方がいいって?


いいよ、もう。
ロビンはおれなんか必要じゃァねェんだ。


独り善がりに結論付けて。
赤ん坊返りしたガキみてェだと分かっていながらも、フランキーは地団駄を踏まずにはいられなかった。



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