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フラロビのSS置き場。
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きっと見ている子どもが混乱するんだな…クォリティにも難アリか…


パンクハザード編でフランキー達4人がシャンブルズされたシーンを読んでから、TV版を物凄く楽しみにしていた。
矢尾さん演じるナミとか、大谷さん演じるフランキーとか、「声優さんの本気が見られる!」って超楽しみにしてた、あのナミが「バカみたいなサンジくん」を演るのかと思うとワクワクした。
まさか人格と一緒に声までシャンブルズされるとは思ってもみなかった、あの日のガッカリ具合を忘れない。


++++++++++




50. selfish (3)


ぽてぽてと家路に着く時刻は21時。
反抗当初よりもかなり早い帰宅時間。
とはいえ、商店街でシャッターを開けているのは飲食店くらいなもので、道行く人は昼間に比べたら格段に少ない。
勿論、古書店はとっくに閉まっているけれど、自宅に回れば、まだロビンは起きているだろう。
「また料理の差し入れ、なんて持って来てくれたら…今夜は、会おうかな…」
終に、フランキーは日和見始めていた。


トムズの前までやって来て
「あれ……?」
フランキーは古書店にまだ灯りがついてることに気がついた。
いつもだったらシャッターが閉まっているのに、弱いオレンジ色の光が歩道へと伸びている。
引き戸にはベージュのカーテンが引かれていたが、間近だと中を窺っていることがロビンにバレる可能性があるため、遠巻きにぐるっと古書店の横に回り、垣根越しに店内の様子を探った。


「珍しいな…こんな時間に…」
店中のテーブルで、ロビンが本を読んでいるのが見えた。
けれど、ロビンは気も漫ろなようで、文字に落としても目をすぐに上げ、戸口の方を何度も見ている。
らしくなく、ロビンの指が頁を全く捲らない。
「…誰かと待ち合わせ、ってとこか…?」


人待ち顔、ってこたァ、相手は男?
と考えて、フランキーは一気に面白くなくなった。
こんな風にして覗いている自分が馬鹿みたいに思えた。
そうっと垣根を離れる。
トム達に見つからないように裏口から帰宅し、そのまま不貞寝することに決めた。







その翌日も、遅い時間に古書店の灯りは点いていた。
そして、そのまた翌日、
「今日、も…?」
古書店の灯りは点いていた。
フランキーはまたもこそっと、店の横から中を覗く。
ロビンは今日も、テーブルで本を読んでいた。


前回同様、ロビンは読書に集中できないようだった。
むしろ、彼女の目はより一層戸口に注がれていて、一昨日よりも酷い人待ち顔をしていた。
「ロビンの待ち人は…来てねェのか…」
フランキーに見られているとも知らず、ロビンは大きな溜息をついた。
指を噛み、爪を噛み、唇を噛み、また溜息をつく。


フランキーは長いこと、そんなロビンを見て立ち尽くしていた。
ロビンの不安が感染って、フランキーの眉間にも皺が寄る。
もう、ロビンの待ち人が男でも誰でもいいから、彼女の元に訪れて欲しかった。
そうすれば、ロビンは笑顔になる。
あんなに苦しそうな顔を、フランキーも見ないで済む。


30分近く、じりじりとした気持ちを抱えて、フランキーもロビンの来ない待ち人を待った。
暗がりにじっと突っ立ち家を覗く男は充分に不審者で、通りすがりがジロジロと視線を投げて寄越すが、フランキーが三白眼を向けると誰も彼もそそくさと逃げ去った。
今のフランキーは色んな意味で気が立っている。
「クソったれ…どこのどいつなんだよ、早く来やがれ…バカ野郎が…」
バカ野郎と悪態をついて、ふと思った。


おれが一番のバカ野郎じゃねェか。
もしかして。
ロビンが待ってるの、おれ?
だったり…する…か?


思いついて、物凄く胸が高揚した。
今すぐ、ロビンの前に飛んで行きたい衝動に駆られる。
しかし、それはあくまで思い込みで、自惚れにしか過ぎなかった事実を突き付けられたら、さて、どうする?、という消極性にとって代わられた。
自分の顔を見て、「何だ、フランキーか」とロビンにガッカリされたら、多分もう、立ち直れない。
でも、ロビンの待ち人が自分である可能性は捨て切れないわけで。
フランキーは考えて考えて、古書店正面へと足を向けた。


そもそも、ロビンに必要とされてねェって思って臍を曲げたのが始まりだったんだ。
ロビンの待っているのがおれじゃなくっても、それはそれ、やっぱり始まりが正しかった、って証明になるだけじゃねェのよ。
何を怖がることがある。
腹ァ括れよ、おれ!







「待てど 暮らせど 来ぬ人を
宵待ち草の やるせなさ
今宵は月も…出ぬそうな …」


ロビンは幾度、このフレーズを口にしているだろう。
戸口に人影が揺れるのをずっと待っている。
心がずっと痛くて、吐き出す息には棘が含まれているみたいで。
時計の針は、じり、とも動かない。
彼のいない世界は時間が止まっている。
彼と一緒にいる時は、恨めしい程に、経つのが早い時間なのに。


「ちょっとしばらく、ロビンとこ寄れないかも」
そう告げたあの日のフランキーはどこか様子が変だった。
あんな風に無愛想な態度のフランキーは、見たことがなかった。
何でもない態を装っていたけれど、何かに憤っていることがロビンには分かった。
何に怒っているの?私に怒っているの?
前の日、店で、私は知らないうちに、何かフランキーを怒らせるようなこと、していたの?


忙しい、のは口実で。
こうして会わないでいるのは、私のことを怒っているから?
フランキーに、嫌われてしまったの?
そう思うと、ロビンの足元には真っ黒な奈落が口を開けた。
何をしたんだろう?何がいけなかったんだろう?そればっかりを考えた。
ただでさえ、住む家が別になって、胸にぽっかりと空いた穴に困っていたのに。


フランキーにとって私は『姉』だから、会えなくなると私がどんなに苦しいのか、彼には分からない。
私にとってのフランキーは、『最愛のひと』だから、『弟』じゃないから、その想いの差が、私をどんどん莫迦にする。
『最愛のひと』が求める私の姿は『姉』だから、私は苦しい恋の下、浅く息をすることしか出来ない。
ただただ貴方が恋しいと、待つことしか出来ない愚かな女に成り下がる。


いつの間にか世界が、こんなにも狭くなっていた
何を考えても、何を思っても、
世界の全てが彼へと向かっていく
どうして


考古学にかけた熱意も夢も、それらをまだ完全に失ったわけではないと、密かにかけている一縷の望みも霞んでしまうくらいに、ロビンの心はフランキーで溢れてしまった。
フランキーがいるから、この町で生きて行くことに決めた。
そのフランキーに見放されたら、私は、生き方がもう分からない。
呼吸の仕方が、分からない。


「フランキー…」
名前を呼んだだけで心が騒ぐ。
会いたい 会いに来て 顔を見たいの 声が聞きたいの
こんなにも自分が、誰かに恋焦がれることが出来るとは。
ずっと年下の青年に、それも小学生時代から見てきた青年に、分別のある大人のクセに、散々、人には言えぬ身体を売るような真似だってしてきた女が、
滑稽なくらい乙女のように、恋煩いに苦しんでいるだなんて。


己の過去を回顧し、ロビンはぞくりと鳥肌を立てた。
ああ、もしかしたら。
やはり、私の過去をどこかで聞いてしまったのかもしれない。
だから、フランキーは来なくなったのかもしれない。
汚らわしいと、嫌われても、おかしくない過去だもの。
ロビンは自分の腕で自分の身体を抱き締めた。


時計に冥い目を遣る。
22時にはここを閉めよう。
溜息をついて、力無く、視線を戸口へと彷徨わせ、
ロビンは大きく目を見開いた。







逸る気持ち、怖い心地、結果を知りたくない本音。
様々な感情を綯い交ぜにして、心臓をドキドキ言わせながら、取っ手に手を掛ける。
音をさせないように戸をゆっくりと横に引くと、鍵の掛かっていないそれはあっさりと滑った。
一歩踏み出し、暖簾を潜るようにしてカーテンを捲る。
すると、驚いたことにいつの間にか目の前にロビンが立っていた。
「フランキー…」
瞳を濡れたようにユラユラ光らせたロビンが、ホッとしたような笑顔で悩める青年の名前を呼んだ。



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