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フラロビのSS置き場。
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ウソップはロビンにカットしてもらわなくても、自分で切るくらい器用に思う。



サニー号ではウソップとロビンが皆の髪を切っているとかで、ウソップンは予想できてた、手先器用なアーティストなので卒なくこなすだろうと。
もう一人いるとしたらサンジだと思ってた、主に女性陣メインだろうけど…コック以外の職業に就くとしたらカリスマ美容師か売れっ子ヘアメイクアーティスト、何にしても女性の美に関わる仕事をしてそうだから。
ロビンは予想外だった、意外と手先が器用なんだね。


++++++++++





51. selfish (4)


久し振りに見るロビンはガッカリしてない、というか、むしろ喜んでるように見えた。
ニコニコと笑っていた。
何だ、悩むこたァ、なかった。
ロビンの待ち人はおれだったんだ。
ようやく安堵して気がつくと、フランキーの心臓はとんでもない勢いで跳ね回っていた。


それにしても戸口にまで駆けつけて、出迎えてくれるとは思わなかった。
そんなにも、ロビンはおれのことを待ってくれてたのか。
甘酸っぱい何かで胸がいっぱいになってしまって、フランキーは何度か唾を呑み込んで、ようやく少し上ずった声で
「よお」
と手を挙げて挨拶をした。


「か、帰って来たら、灯りがついてるの見えたから。まだロビン、いるのかなーって思ってさ」
ロビンにこんな形で出迎えられて、フランキーは顔が自然とにやけてくるのを堪え切れなくなった。
彼女に背を向けるとやたら丁寧に戸を閉めて、店の中に入った。
ロビンはフランキーが覗き見していたさっきまでと打って変わり、俄然機嫌良さそうにパタパタと動き回る。
「コーラでいいわよね」
と、あっという間に炭酸が弾けるタンブラーをフランキーの前に置いた。


「何だか、久し振りね。そんなに…忙しかったの?」
「え?ああ、まあ…」
フランキーは何とも罰が悪く、椅子に腰かけコーラを啜って誤魔化す。
「具合でも悪くしているのかと思って、アイスバーグに訊いたら元気で学校行ってるって言うし。忙しくしているなら、私が押し掛けても迷惑かしら、って思って…ここで時間外に電気付けていたら、帰り道にフランキーが覗いてくれるかも、って…」


ロビンはフランキーの隣の椅子に着き、にこやかに話しかけてくる。
いつになく多弁なロビン。
「今日も、会うのは無理かも、って思ってたところだったの」
店の控え目な照明のせいか、目はやたらキラキラして見えるし、頬もほんのり染まって見える。
どこか幼げで、まるで誰かに恋をしている少女みたいで。
「な、何かおれに用だった…?」
どうしてか、今夜のロビンは見ていると鼓動が速くなってしまう。


「これ」
ロビンがジーンズの尻ポケットから何かを取り出し、それをテーブルの上に置いた。
銀色の、鍵。
フランキーのゴツイ指がそれを拾い上げると、ロビンの体温を感じた。
意識的にその温もりを掌に仕舞いこむ。
「私の家の鍵。一応、お隣さんにひとつ、預かってもらった方がいいかも、って考えていたの。私、独り暮らしだし…」
ロビンは、はにかんだように笑った。


「それをフランキーに渡したくて。トムさんに渡しても良かったんだけど…やっぱり、フランキーに持っててもらいたくて」
何でおれに渡すことに拘ったんだ?
と訊きたかったけれど、訊けなかった。
訊く迄もない。


おれが『弟』だからに決まっている。
『弟』だと信頼して、人畜無害だって思っているから
「勝手に鍵開けて、いつでも来てくれていいのよ?今回みたいに忙しくて日中来れない時もあるし、これなら夜遅くなっても気にせず会えるでしょう?」
なんてことを平気で言うんだ。


男に自宅の鍵を渡すことの意味。
夜遅くに男を自宅に上げることで生じる世間体。
そんなものを頭ッから除外できるくらいに、ロビンにとっておれは『男』じゃねェってこった。


分かり切っていることなのに。
フランキーは、ロビンに鍵を手渡されるくらいに信用されている事実に、どうして自分がこんなにも残念に思っているのか、理解出来なかった。
「英語とか、授業で分からないところ訊きに来てくれても」
ロビンはそんなフランキーの心中も知らず、涼しげに笑っている。


「そっか」
フランキーも笑った。
「鍵、大事に持っとくよ」
フランキーは自分のキーホルダーを取り出すと、早速ロビンの鍵をくっつけた。
「これでいいだろ?」
目の前でチャリチャリと振られる鍵に、ロビンは満足そうだったから、これでいいんだ、とフランキーは思うことにした。


「本当に、良かった…」
ロビンが大きく息を吐き出した。
「良かった?」
って何が?と訊いてくるフランキーにロビンは、ううん、と首を振る。
「深い意味は…元気で良かった、って思って。久し振りに会ったから」
「ああ、元気だった」


大きな黒い瞳が、じっ、と見上げて来て、気恥ずかしくなったフランキーはコーラを煽るフリをして視線を逸らす。
「つか、それくれェしか取り柄ねェし。ま、久し振りって言ってもほんの半月くれェの話だろ?」
一日千秋だった本音は隠して、「ほんの」を付け加えた。
ロビンは僅かに瞳を細めると、やっぱり涼しげに「そうよね」と答えた。
「幾らか痩せた?」
と訊ねると
「ほんの少しね」
と返事が来た。


「もしかしてロビン、この半月おれに会えなくて、寂しかったりした?」
いつでも「冗談」と返せるように、ワザと茶化した口調で言ってみる。
でも、言ってすぐに後悔した。
「寂しくなかった」って言われたらどうするんだ、冗談に冗談を返されて「寂しかったわよ?」、なんて言われても嫌だし、とフランキーは迂闊な自分の腿に指を食い込ませる。


案の定、ロビンからは
「大丈夫。ここの商店街の皆は優しいから。何とかなったわ」
と返事が来て、何食わぬ顔で「へ、へえ」と声を押し出すので精一杯だった。
ロビンが恙無くいられたッってんだ、喜べよ、おれ!、笑えよ、おれ!と自分を励ます。
すると、ロビンが苦く小さく笑った。


「私は『おねえさん』なんだから忙しい『弟』に心配かけないように、それだけを……言うべきなんでしょうけれど……」
ロビンが胸に抱えたトレーに爪が当たり、カチカチと鳴った。
「本当のことを言えば私、寂しかった。フランキーにしばらく来られない、って言われたその日から、ずっと…寂しかったわ」


「ロビ、ン…」
寂しさを思い出して悲しそうに俯くロビンに対し、フランキーの心が罪悪感でキリキリと引き攣れる。
「寂しいけど、ずっと我慢してた。『おねえさん』なんだから、って」
ロビンの首が大きく前に折れて、白い顔が髪に隠れて見えなくなった。


「ここの人達がやさしいのは嘘じゃない。皆、温かい。でも…やっぱり…」
フランキーがいなくちゃ
ロビンが吐き出すように言った言葉に、フランキーの胸が詰まった。
ロビンが、自分を必要としてくれていたことが痛いくらいに分かった。
なのに何であんな風に、寂しいだなんて、感じたのか。


寂しかったのはロビンの方だった。
幼稚な我儘で、思い込んだ自分勝手で、張り通してしまった意地のせいで、フランキーはロビンに寂しい想いをさせてしまった。
覚えなくてもいい寂しさに、心を痛ませてしまった。
本当におれはバカ野郎だ!と己を罵倒する。


「ああ、ごめん」
と謝ったものの、
「フランキーが謝ることじゃないでしょう?実際に忙しかったのだから」
ロビンにやさしく微笑まれて、全部嘘でした、八つ当たりしてました、とも言えず、しかたなく呑み込んだ自業自得の虚偽に、胃が痛くなった。
「それでも、ごめん」
と謝るしかなかった。


「こんなことじゃいけない、強くならなきゃって、思うのだけど。そのうちフランキーは、結婚して新しい家庭が出来たら、ここを離れて行くのに」
「あ?」
いきなり自分の結婚を話題されて、フランキーは間の抜けた声を出した。
「いつまでも、フランキーに頼ってばかりじゃ駄目だって分かっているのに」
「ま、まだ先のことじゃねェか。おれ、まだ18だぜ?気にすンなよ、大丈夫、幾らでも頼ってくれても」
ロビンになら、フランキーがいないと生きていけないと泣き付かれるくらい頼られてもいい、と思った。


「ありがとう」
とロビンが嬉しそうに笑う。
「まだしばらく忙しいの?」
と訊ねられ、
「いやもう明日から普通になった」
と都合よく答えた。


フランキーはいつもみたいに、ロビンに抱き付いて甘えようかと思った。
でも、
何故か、手が出なかった。
触れることが怖いと、初めて思った。
「あ、あれ…?」
「フランキー?」
何かに躊躇う様子を見せているフランキーに、ロビンが怪訝そうに小首を傾げる。


「いや、何」
フランキーは殊更明るい声を出してその場を取り繕った。
「ロビンにとって、おれって必要?、かな、って、思って、さ」
ロビンは目を丸くした後、「莫迦ね」、と可笑しそうにクスクス笑った。
「当たり前でしょう?」
フランキーの目頭が、急に熱くなった。
ロビンのやさしい手に柔らかく髪を撫でられて、フランキーは満ち足りたのと、泣きそうなのをやり過ごしたいのとで、目を閉じた。


ああ、もう、おれは。
ロビンのために最高の『弟』でいよう。
それで、ロビンが幸せだと言ってくれるなら。







翌日、フランキーが古書店に立ち寄ると、想像以上に店のテーブルは野郎で鈴生りになっていた。
どいつもこいつも、ヤニ下がった顔でロビンを舐めるように眺めつくして気に入らないったらない。
確かにそれなりの秩序は生まれているのかもしれない。
だが、フランキーの求める秩序は、ロビン目当ての野郎共の完全排除にある。


フランキーが古書店内の害虫駆除を己の使命と心に決めたその日から、町一帯での彼の評判はダダ下がった。



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