忍者ブログ
フラロビのSS置き場。
×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。


フランキーの頭を膝に載せて普通に会話してる姿にロビンのルーチンが垣間見える気がする。


エニエス・ロビーまでは「近寄りがたいおねえさん」な高根の花雰囲気をぷんぷん醸し出していたロビンちゃんも今や、「一味のおかあさん」というか、三十路の落ち着きというか。
ルフィに「食べる?」ってあーんしてあげたり、チョパとアニキに膝枕してあげたり、モモとお風呂入ってあげたり、おかあさん仕事をしているように見える。
そして、フランキーへの膝枕は「しょうがないわねえ」といった、仕事で草臥れて寝てしまったダンナへの嫁の愛、にしか見えない。


++++++++++





54. Intermission 2 二度と森へは誘わないで


女とこんな風に連れ立って歩くのなんか、これまで散々やってきたことなのに。
ロビンとくっつくのだってこれが初めてでもねェのに。
何で意識すると、ロビン相手だとこうなっちまうのか。
まともにエスコートも出来ねェ体たらく。
ロビンは「フランキーはやっぱり子どもね」と苦笑しているに違ェねェ…
会話だって途切れ途切れで、うまく話を振ることも出来ねェ…


前からくる男共の団体がすれ違い様、誰も彼もがロビンの身体を舐めるようにして見て行った。
フランキーが後ろに目を遣ると、幾人かが振り返ってまでもロビンの後ろ姿を眺めていて、むかっ腹が立った。
フランキーの三角目と目が合うと連中はそそくさと前を向いた。
「どうしたの?」
自分が視姦されていたことに気付きもしない、自分の美しさに無頓着な女が訊いてくる。
「んー…」


会話の最中にも、ロビンに向けられる視線の多さにフランキーは改めて気付く。
男はさることながら、女もロビンに賞賛とも嫉妬とも取れる視線を投げて寄越す。
「ロビンのこと、ジロジロ見やがる野郎が多いな、と思ってよ」
それも致し方無し、こんなに綺麗なんだもんな、とフランキーは思う。
「そうなのよね…何で今日はこんなに、見られるのかしら…」


本人は至って、自分が人の目を引く容姿をしている自覚がない。
普段、他人の視線の行方に頓着のない彼女は、今日は服装の件で自意識過剰気味なのでようやくその存在に気付いた模様。
「気付いてねェの?ロビンが野郎に見られるのなんて今日に限ったことじゃねェって」
「そ、そうなの?知らなかったわ」
「いつものことだよ。商店街で買い物してる時だって…」
「何でかしら?何で私は見られるの?」


「綺麗だからだろ」
他に理由なんざねェだろ、とフランキーは言い切った。
いきなり褒められて、気恥ずかしくなったロビンは顔を下に向けた。
フランキーには特に褒めた自覚はない。
ロビンが綺麗なことは、フランキーにとって当然のことだから。
ようやく、ロビンを腕にくっつけていることに慣れてきたフランキーに、絶世の美女を侍らせてキャンパスを練り歩いていることの優越感が生まれてきた。


相変わらずロビンが野郎共の視姦の対象になっている事実は気に入らないが、同時に自分へと集まって来る羨望の眼差しは大変に気分がいい。
知り合いがフランキーに挨拶をしようとしてロビンの存在に気付き、言葉が置き去りにされてポカンと口を開きっぱなしにする様は何度見ても面白い。
フランキーが徐々に、非常に分かりやすい形で上機嫌になったので、ロビンもやっとホッとすることができた。


ロビンが最初に、真っ直ぐに連れて来られたのは、フランキーの所属する水泳部が出している屋台。
そこでは部員たちが汗だくになって、お好み焼きを焼いていた。
出されてくるのは特に変哲もないお好み焼きだが、焼いている人間が、海パンに水泳キャップにゴーグル姿だということが、世間一般のお好み焼き屋台と異なる点だろうか。
見事な逆三角形と、股間周辺の際どい造形。
毎年恒例のこれは、カラダ目当ての女性陣と一部男性の間でけっこう好評なのだと、フランキーは説明した。


フランキーがロビンとともに現れると、水泳部の皆さんも他の例に漏れず、口を開けたまま、一瞬言葉を失った。
まさに才色兼備という言葉が相応しい上品な美女と、変態の極みを誇りに思っているチンピラ学生との組み合わせは絶句するに値する。
水を打ったように鎮まった場に、お好み焼きが焼ける音だけが響く。


「フランキー…、この方がお前ンちのお隣の…」
誰かが口を開き、沈黙を破った。
「初めまして…ニコ・ロビンです。いつもフランキーがお世話になっております」
どうして皆、いちいち絶句するのかが理解できないロビンは、戸惑いつつも挨拶をしながら丁寧なお辞儀をした。


ロビンの挨拶を受けて一斉に
「いいええ」
と鼻の下の伸びた合唱が返って来る。
ロビンが
「よろしくお願いしますね」
と、にっこり微笑むと、またしても場は静まった。
調子に乗ったフランキーに「実はおれの新しい彼女」とか何とか紹介されて、ロビンは非常に恥ずかしい想いをした。


フランキーが無理矢理確保してきた席に着き、ふたりでお好み焼きを美味しく頂く。
『フランキーが連れてきた掃き溜めに鶴な美女』の評判はあっという間に広まり、お好み焼き屋台周辺は野次馬の渋滞が発生した。
人混みの原因を知る由もないロビンは「ずいぶん盛況なのね」とニコニコしながらお好み焼きを口に運び、自分の大学時代には在り得なかったお祭りを楽しく観察し、フランキーに質問する。


「女子部員は水着じゃないの?」
見れば水着姿は男ばかりで、女子は学校名の入ったお揃いのジャージに身を包んでいる。
トムズの物干しで時折見かけるジャージだ。
「女子は売り子だったり、裏でキャベツ刻んだり」
「不公平じゃないの?」
「まァ…脱ぎたがらねェな。色々と差支えがあンだろ。女でも見事な逆三角形だからなァ」
口いっぱいにお好み焼きを頬張ったフランキーがコーラを啜りながら言う。


「ロビンみてェに人に見せても恥ずかしいプロポーションの持ち主はそうそういねェよ」
今日はいっそ、許されるなら水着で歩いた方が気が楽かも、なんてロビンは思った。
「フランキーも店員やるの?」
「交代で。今日の午前中、おれが店員やってたんだぜ?今日の午後は自由時間」
「のびのび店員出来たでしょう?」
「うん」


ロビンには、フランキーが生き生きしてお好み焼きを焼いていたであろう姿が簡単に想像できた。
観察していると、お客の若い女の子たちはカラダ目当てと言っても一様に、何らかの羞恥心を顕わにしている。
初めて出会った時もフランキーは海パンだったし、家の中でも海パン姿がデフォのため、ここの店員達の姿にはロビン的にあまり感慨はない。
そういった環境よりも、年齢的なものと経験値の差、なのだろうとロビンは薄く笑った。







「他にも案内するとこあるから」と言うフランキーに連れられてロビンは水泳部屋台を後にする。
「ごちそうさまでした」
とロビンが頭を下げると、キャップ&ゴーグル頭も一斉にペコペコお辞儀をした。
フランキーがまた腕を差し出してきたので、先程と同じように手をかけて寄り添う。
見るからに『美女と野獣』な後ろ姿に、部活連中はお喋りを吹き返した。


「見たか?フランキー、超浮かれてる…」
「仕方ねェって…あれ…」
「すっげェ…美人。見たことねェ。眼福眼福」
「あの人がロビンかあ…フランキーの話に年中出てくる」
「ああ。アイツ気がつくと話してるよな」


「フランキーさ、彼女と一緒にいる時もロビンさんの話ばっかして、フラれたらしい」
「彼女の前で他の女の話はしちゃいかんだろ」
「話したくなる気持ちは分かるけどな。あんッな美人が可愛がってくれるんだぜ?」
「おれだって懐く」
「おれだって」


「私、やめとく、フランキー…内心ちょっといいな、って思ってたんだけど」
「あの人と比較されちゃ…嫌になるよねー」
「フランキーの話だと、ロビンて人、おねえさんポジなんでしょ?シスコン?」
「シスコン、って言うか、あの感じ…フランキーって…おねえさんって言ってるけど」
「あの人のこと、かなり好きなんじゃないの?」


「実はおれの新しい彼女」
フランキーの言葉を信じている者は誰一人おらず、賭けにすらならなかった。
誰から見ても、フランキーは『やさしくて綺麗なおねえさんに懐いている弟』であり、『自分を憎からず思ってくれているロビンに好意を寄せているフランキー』に見えた。







この頃は、17時を過ぎると一気に暗くなる。
「ずい分、日が短くなったわね…」
学内をあちこち見て回って、フランキーの自由時間が終わる頃、ふたりはまた駅へと続く道を歩いていた。
今日はずっと腕を組んでいたふたりだった。
後数分で、この腕を解くのかと思うと、ロビンもフランキーも名残惜しくて、つい、歩みが遅くなる。


「ごめんな。おれ、今日の片付けしてかにゃァなんねェからさ」
ロビンを先に帰らせることになるフランキーが、申し訳なさそうに言った。
「デートだって誘ったのに、こんなところで放り出して」
ロビンはふるふると首を横に振った。
石畳を踏む三角形に尖った爪先と歩調を合わせてくれる、大きなスニーカー。


「フランキー、今日はありがとう」
ロビンは心からの感謝を述べた。
ようやく腕を組んで歩くのにもすっかり慣れたのに。
とうとう、駅に着いてしまった。


ロビンが腕を解き、フランキーの前に立った。
同じ方向を向いていた身体が向かい合わせになり、『恋人』は『姉弟』に戻った。
『彼女』である間に、『彼女』じゃないと出来ないことをしておけば良かった、とフランキーは今更ながらに思ったけれど、今日の自分にはそんな余裕がどこにもなかったことも知っている。


腕を組むので精一杯だった。
肩を抱くことも、腰を抱くことも、出来なかった。
手を握ることも、ハードルが上がっていた。
ロビンに、腕を組んで『もらう』ことしか、出来なかった。
ずっと心臓がドキドキしてた。


「とても楽しかった」
「そう?なら、良かった。おれも、楽しかった…」
にこり、と笑うロビンに、フランキーも笑い返す。
「来年も、」
良かったら一緒に学祭に行こう、と言いかけたフランキーよりも速く。


「楽しかったけれど……学祭にはもう二度と、誘わないで」
ロビンはキッパリと言い切った。
「は?」
ここまでの流れは一体何だったのかと、思ってしまうロビンの台詞にフランキーは耳を疑う。
フランキーの気持ちが良く分かるので、ロビンは重ねて
「本当に楽しかったし、フランキーにはとても感謝しているの。誘ってもらえて嬉しかった…」
と言った。


「私、本当に楽しかったのよ?自分が大学生の頃、こんな風に楽しんだこと、なかったから。すごく面白かった。でも…でも、私、行ってみて分かったの。私、場違いだったと思うの。凄く」
「はあ?」
「年齢的にも…雰囲気的にも…そ、そうね、服装、的にも…色々と…フランキーの評判、きっと下げてしまったと思うの。私なんか、連れて来て」
何を言ってンだろ、このひと。
としかフランキーは思いつかない。


ロビンの表情は苦渋に満ちていて、本気で思って本気で言っているのが伝わってくる。
だがそれは、思いっきり間違った認識であって、明後日の方向を向きまくった主張である。
フランキーは、年齢のことを言うなら、浪人留年を二年している四年生とロビンは同い年で、そんな連中はごまんといるのだから気にすることは何一つないと訴え、雰囲気や服装を言うなら、場違いでどうしようもない人間が『飛び入りでミスコンに参加しませんか?』なんて勧誘されるわけがないと断言した。


でもロビンは聞く耳を持ってくれない。
いつもみたいに完璧な理論武装をして流暢に捲し立てるのではなく、稚拙で意固地に持論にしがみ付き、ウソップのようなネガティブ星人になってしまっている。
「フランキーに申し訳ない気持ちでいっぱいなの…。フランキーの彼女の代わり、でなければ純粋に楽しめたとは思うのだけど…」


「お、おれの『彼女』だと、ダメなのかよ」
物凄く、フランキーは傷ついた。
傷ついた理由は自分でもよく分からない。
「来年は、ちゃんとした彼女を連れて行きなさい」


誰もが羨む美貌と頭脳の持ち主は、何故か劣等感の塊と化して、改札の向こうに消えていった。
「何で…おれの『彼女』じゃ楽しめねェんだよ…」
おれの『姉』としてだったら楽しめたのか?
それとも、他の男の彼女だったら、楽しめたのか?
「ちぇ…何なんだよ…」
フランキーはふてふてと、大学に戻って行った。







言葉通り、ロビンは翌年の学祭に来てくれなかった。
何度誘っても、頑なに断られた。
その頃のフランキーは『彼女いない歴』の記録を更新していて、女の子を連れてくるノルマも果たせず、それどころか昨年ロビンを皆にいたずらに印象付けてしまった結果、『おねえさんにも見放された非モテ男』という不名誉なレッテルまで張られたのだった。



next
この記事にコメントする
Name
Title
Color
E-Mail
URL
Comment
Password   Vodafone絵文字 i-mode絵文字 Ezweb絵文字
カレンダー
04 2024/05 06
S M T W T F S
1 2 3 4
5 6 7 8 9 10 11
12 13 14 15 16 17 18
19 20 21 22 23 24 25
26 27 28 29 30 31
ブログ内検索
プロフィール
HN:
Kuu
性別:
女性
自己紹介:
しばらくフラロビ妄想で生きていけそうです。
人型の何かです。

     
PR
Template "simple02" by Emile*Emilie
忍者ブログ [PR]