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フラロビのSS置き場。
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昔のことを思い出しているヒマがないくらいに楽しくしてて欲しい。


だから、今のロビンは家事一般を人並み以上に出来るんだけど、やらない人になっている。
家事スキルを習得した経緯がロビンにしてみれば辛い思い出で、思い出したくない過去がワンセットなので、やらなくていいならやらない。
でも、麦わらの一味の中で、そういった悲しい記憶が、新しい楽しい記憶で上書きされていくといいと思う。


++++++++++





53. Intermission 2 遅咲きスキャンダル


「おうい、ロビーン」
待ち合わせに2分ばかり遅刻して、フランキーがやってきた。
首を長くして待っていたフランキーなのに、いざとなると、ロビンは何とも落ち着かない心持ちになった。
「すまん、待った?」
「ううん、大丈夫」
毎日、顔を合している相手、でも商店街以外の場所でこんな風に待ち合わせなんてしたこともなく。
お互いに照れた。


普段のまんまのフランキーにでさえ、場所が変わっただけでロビンは新鮮に感じている。
ましてや、今日のデートのために色々勉強してそこにいるロビンに、フランキーは言葉も出ない。
「普段着でいい」
そうフランキーの言った通り、普段着なんだろうけれど、何かが違う。
自分と会うためにおしゃれしてきた感が漂っている。


肩口の大きく開いたニットは期待を裏切らず谷間を覗かせていて、リブ編みの広がり具合が彼女の胸の大きさを更に強調している。
細身とはいえ、ウェストマークなしでここまで括れを主張出来るロビンのスタイルはもはや脅威。
そこから続くヒップの丸みと、見えるか見えないかの丈の際どさ。
ブーティは脚線美を、高いヒールは腰の高さを更に際立たせている。


『モデル体型の女子』と『職業モデル』は似て非なるものである。
ロビンは『職業モデル』ではないけれど、頭身は『職業モデル』だ。
しかも、『職業モデル』にはない巨乳の持ち主であり、『職業モデル』よりずっと素晴らしい、とフランキーは常々考えている。
どうでもいいことだが。


メイクですら、いつも通りナチュラルにはナチュラルだけれど、明るめピンクのルージュだったり、普段とちょっと違うニュアンスのアイシャドーだったりチークだったり。
今日のロビンのそういった諸々が、自分とのデートのために用意されたのだと思うと、フランキーは感無量で言葉も出ない。
何だかいつもよりもずっと年齢が低く見える。
全然、女子大生でイケる。


「あの…やっぱり変?この格好…」
自分を見つめたまま止まってしまって動かないフランキーに、ロビンは恐々と訊ねた。
発言内容はともかく、ロビンの唇が動く度にキラキラ光るのが気になり、
「ロビンがグロス塗ってるの、初めて見たかもしんない」
なんて考えて凝視していたフランキーは
「え?何で?」
と数テンポ遅れて返事をした。


「フランキー。固まっているから…」
フランキーだったら、ロビンの頑張った点を指摘しつつ、「似合う似合う!」と明るく笑ってホッとさせてくれると思ったのに。
なのに、フランキーは耳の先を赤くして、どことなく動揺した様子で
「いやいや。平気。どこも変じゃない」
と言うと、「さあ、行くか」と前を歩き出した。


駅前でロビンの前を通り過ぎた、他の若い男のひとたちと似た反応。
やっぱり、フランキーの好みでもないのね…
根本的に、TPOに合っていないのかもしれない…
「コーディネートの勉強、してみよう…」
とロビンは呟いて、フランキーの後ろをトボトボとついていった。







ロビンが辿りついた、フランキーとの初デートの場所。
そこはフランキーの通っている大学だった。
華々しく飾り付けられた正門、活気のあるザワツキ、行き来する大勢の若者。
「が、学祭…?」
ロビンは絶句した。
「あれ、言ってなかったっけ?」
フランキーが、けろり、と言う。


ああ、そう言えば、文化の日辺りで学祭がどうのとフランキーが言っていたような。
水泳部でも屋台を出すとか何とか。
でも、彼女を連れて行くの行かないのと言っていたので、その続きは耳が自動的にシャットアウトして、私には関係ないことと、記憶から抹消していた。
大体が、待ち合わせの駅名でピンと来るべきだった。
そこがフランキーの大学の最寄駅であることを失念してしまうくらい、自分の服装のことで頭の中がいっぱいだった…


「ほら、うちの大学、工学系だろ?女子が少ねェんだ、圧倒的に。だから、必ず女子を連れて来るのがうちの部のノルマでさ。でも、おれ別れちまったし、どうしようかなって…」
「フランキーなら幾らでも声かけられたでしょう?モテるんだから」
自信の欠けたコーディネートで、不特定多数の目に晒されるのかと思うとぞっとする。
こんな思いをするのならいっそ、自分以外の誰かに声をかけてくれていた方が良かったと、皮肉でも何でもなく、縋るような気持ちで言う。


すると、フランキーは意外な事を口にした。
「んー、最近はモテねェの。実は」
「どうして?大学の女の子と合わないの?」
ロビンは心底驚いた。
少し前までは無節操でロビンを悩ませて、話を聞く度、どこかで会う度、違う女の子だったフランキーがモテないだなんて。


「大学の、ってわけでも…高校の時の子も……昔ほどは寄って来ねェなァ…」
キャンパスの中を歩を進めながらフランキーは言った。
「でも、今も昔も、フランキーは変わってないと、思うけれど。私はね…」
身長はまだ若干伸びているようで、それに筋肉が張り、高校生の頃よりもがっしりとした身体つきになったように思う。
多少、顔付きも大人びて。


小学生のフランキーも、高校生のフランキーもロビンは好きだけれど、今のフランキーもとても男らしくなって好きだ。
そのフランキーが人気をなくしているなんて、ロビンには腑に落ちない。
尤も、フランキー不人気の実情は、ロビンにとっては大変嬉しい話。
「どうしてなのかしら」
「何か、女の子が言うにはさ、おれからの話題に問題があるンだって」
「話題?」
「おれがいつもロビ……まァ、いいじゃん、そんな話」


フランキーは慌てて、非常に不自然な形で話を中断させた。
「それよりも」
フランキーはロビンの前に腕を差し出した。
「何?」
「何、って…今日はほら、デートだし?一日限定でもその…おれの彼女代わりなんだから」
要は、腕を組めと。
ロビンはフランキーの意図を汲み取って、頬が熱くなった。
フランキーの耳も、どことなく赤い。


「人出もあるし、迷子になるかもしれないし」
「ゾロじゃないのだから」
ロビンはクスクス笑って、じゃあ、とフランキーの腕に手をかけた。
硬い筋肉の感触、この身をすっかり預けてしまいたくなるくらいの逞しさ。
肌から伝わってくる温もりは、ロビンには『温度』というよりはやはり、『熱』で。
グラグラと目眩がするくらいの心地に、もういっそ、と思い切り腕に身体を摺り寄せる。


どうせ、こんなことできるのは、今日だけだもの。
『彼女の代わり』という大義名分がある、今日しかできないもの。
『姉』は『弟』の恋人にはなれないのだから、それが許された今日くらい、バチは当たらないわよね。
どうしてフランキーがモテなくなったのかの理由が話途中なのも、自分の服装がイマイチかもしれないことも、吹き飛んでしまうくらい、ロビンは幸せだった。


「腕を組んで歩いている私たちは、人から見たら、恋人同士に見えるのかしら」
「みッ、見えンじゃねェの?ちゃんと…」
ロビンには、フランキーの声が奇妙に上擦っているように聞こえた。
「ふ…フランキー…私にくっつかれるのが本当は恥ずかしいんじゃない?」
「え?」
ロビンはハッと顔を上げた。


こんな年上然とした女、しかも着たものに難がある(かもしれない)女、他人の目が気になるのは自分ではなくて、むしろフランキーの方なのかもしれない。
「離れましょうか?わ、私、迷子になったりしないから…」
ふ、とロビンの手が腕が緩み、引き抜こうとする。
「ちょ、待って」
フランキーは急いで脇を締め、ロビンの手が擦りぬけていかないようにロックした。


「何でそう思うの?」
「だ、だって、声が…」
「い、嫌じゃねェ!恥ずかしくねェ!このままこのまま、離れない、放さないでいてくれよ」
「そ、そう…?」
ロビンが不安そうな声を出すので、フランキーは「大丈夫大丈夫」と殊更、明るく笑ってみせた。
ロビンに怪訝に思われたかもしれない、とフランキーは冷や汗を掻く。
彼は今、異常に緊張していた。


フランキーの腕にロビンの胸が当たる。
フランキーの肘が、ロビンの胸に潜り込む。
その柔らかい物体がふゆふゆと形を変えるのが、触れるフランキーに伝わってくる。
もたれ掛かる、ロビンの髪が、歩く度にサラサラと腕を滑る。
腕がロビンに抱かれる。
腕が、自分の腕が、天国にいる。


密着度が半端ない。
すっごい、いい匂いがする。
ロビンの手はひんやりしていて、相対的にやたら熱く思えるだろう自分の体温を、彼女がどう思っているのか気になった。
欅並木を渡る11月の風も、フランキーのクールダウンに全く役に立たなかった。



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