フラロビのSS置き場。
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コウガンは握れても手を握れない、そんな乙女心。
ロビンちゃんは経験豊富でも恋愛は未経験だろうから、それこそ「目が合った」レベルから順を追っていってもらいたい。
顔色ひとつ変えない澄ました表情の裏で、いちいちパニくっているといい。
28歳にして乙女ちっくに一喜一憂して、真面目な顔でチョッパーに恋煩いを診察してもらえばいい。
++++++++++
10. 手を繋ぐ
フランキーは頬杖をついて、自分の手の平を眺めていた。
あの夏休み、ロビンとはいつも手を繋いでいた。
遊ぶ時、買い物に行く時、寝る時も。
小学校の5年生、ロビンはお姉さん属性とはいえ、女の子と手を繋いでいるフランキーを悪友たちがからかわない筈もなかった。
恥ずかしくなかったと言えば嘘になる。
けれど、「サウロはからかわれても動じなかった」と聞かされては、フランキーには退くことができない。
外野の声は徹底的に無視した。
そのうち、フランキーの遊び仲間もロビンに懐き出すと、彼女の手は時に取り合いになった。
どんな時も、片手は絶対に死守した。
ウソップやゾロが、自分と反対側のロビンの手を繋ぐと原因不明の不機嫌が襲って来たのをよく覚えている。
ナミやカヤが繋ぐ分にはちっとも気にならなかったのに。
フランキーは昔の自分を思い出して、口元に小さな苦笑を浮かべた。
皆にはただ見せびらかしたかっただけで。
本当は、ロビンを独り占めしたかったんだよな。
10歳のフランキーもロビンが大好きだった。
でも、10年後のフランキーの『好き』とは大幅に性格を異にしている。
あの頃の彼女に対する恋慕の情は、母や姉といった肉親に向けるものと性格をより近くし、その行動原理は絶対的友情をベースとしたものだった。
当時は気付かなかっただけで、多少は初恋に似た感情もあったかもしれない。
恋愛を夢見たことのないフランキー少年は、自分よりもずっと年上のロビンを、友達または姉、それ以外の対象としてみる可能性すら持っていなかった。
「小せーながらも生意気に、ヤキモチはしっかり焼いてたんだけどなァ。『おれはロビンの友達で、その上、弟!これでおれの方がサウロってヤツよりも上だ!』ってずっと思ってたもんなァ」
サウロよりも上だとは、今も思ってるけどな。
フランキーはひとりごちる。
「あの頃のおれのヤキモチ……盗られたくないのは、きれいな『おねーさん』、だったんだよな…」
いつの頃からか、『おねーさん』だった人は『惚れた女』に変わっていた。
変わったのは、ロビンではなくて、彼女を見る自分自身の目。
変わったのは何時頃だったんだろう。
3年前にロビンと再会した時はまだ、彼女は『おねーさん』だった。
「家庭教師やってくれてた間に……『女』として見るようになってた。……けど、まだ……うーん、いや、今思えばあの頃も好きは好きだったんだよな、てめェで気付いてねェだけで。確信したのは……年の時の学祭…?いや、もうちょい前?後…?」
いずれにしても。
それに気がついた時には、当たり前のように手を繋いでも不思議じゃない時代は過ぎていた。
あの頃みたいに呼吸をするように手を繋ぐためには、
「一歩も二歩も前進しねェとなァ」
「何の前進?」
「のわああああッ」
と大きく仰け反る。
知らないうちに、トレー片手のロビンがすぐ隣に立っていた。
「何、大声をだしているの。びっくりしたわ」
「くぁwせ…!」
フランキーの顔色は赤くなったり青くなったり。
嫌な汗が噴き出き、急激に喉がカラカラに渇き出す。
おれの独り言はどこから聞かれてた?
つーか、おれはどうして心の声を口に出してんだよ!
「何を言っているのか分からないわ」
フランキーが何の脈略もなくひとりで慌てふためいていているようにしか見えないロビンは小首を傾げつつ、フランキーの前にコースターを置く。
「さっきは注文がなかったけれど、飲むんでしょ?コー…ラ」
空中で奪い去られたコーラは一口でフランキーに吸い込まれた。
カラン、と溶ける間のない氷が鳴った。
「ふーぅい」
「落ち着きなさいよ」
「もう1杯クダサイ」
タンブラーはコースターに置かれることなく、トレーに舞い戻った。
「フランキー。女の子の攻略法の勉強なら、自分の家に帰ってしなさい。その分野、分からないところを訊くなら私よりも、サンジくんの方が適任でしょう」
やたらトゲトゲしたセリフを残し、それでもロビンは2杯目のコーラを用意しに行く。
ロビンに話の内容をすっかり聞かれていたようだが、その攻略の対象が誰なのかまでは気付かれなかったようだ。
「あーぶねェ、危ねェ」
フランキーは冷や汗を拭った。
前進どころか。
一歩も二歩も、それ以上も後退したようだった。
「あーあ」
フランキーは肩を落とす。
ロビンはロビンで、フランキーの独り言の内容が気になっていた。
フランキーのモノローグは低くて不明瞭で、ハッキリとは分からなかった。
ただ、誰かを好きになった時期を推理しているのは理解できた。
後、手を繋ぎたいのに繋げないでいるもどかしさも伝わって来た。
私はさっき繋いだから。
フランキーが好きなのは、
私じゃない誰か。
「もう。何を考えているのかしら、私」
開閉する冷蔵庫の扉が、ロビンの苛立ちを代弁する。
フランキーが、私をそういう対象に考えることはあり得ないのに。
「年が幾つ、離れてると思ってるの…」
2本目のコーラがタンブラーの底に溜まっていく。
何かドロドロしたものが、ロビンの心に溜まっていく。
「本当に。勉強するんじゃなかったの、フランキー?」
さっきはセリフの中に不覚にも噴き出してしまった嫉妬の色を隠し込む。
2杯目のコーラは、きちんとコースターの上に届けられた。
フランキーの手によってテーブルに広げられた勉強道具は、先程から位置を変えておらず、ロビンにそう指摘されても言い訳のしようがない。
「するってば」
今やろうと思ってたのにー、ロビンがそんなこと言うからヤル気なくなったー
などと小学生みたいなことを言うフランキーに、「全く仕様がないわね」、と溜息をつく。
ロビンはトレーをテーブルの端に置くと、フランキーの隣の椅子を引き、ちょこんと腰をかけた。
「何をぼうっとしていたの?」
身体を斜めにフランキーに向け、傍らの大きな青年に声をかけた。
「悩み事?最近そんな風に、何も手につかない、って時多いみたい」
「……」
「私でよければ相談にのるわよ?」
相談に託けて、フランキーのプライベート事情を訊き出せたら、なんて思う。
ロビンが目を合わせた薄い空色の瞳は、ぐるうりと天井を泳いだ後、テーブルの上に置かれたままのテキストに落ちた。
次いで渋々と手が伸び、ノートを開く。
「まァ…色々と、ね」
誰のせいで悩んでると思ってンだよ、と今度はちゃんと心の中で呟く。
「フランキー。好きなひとのこと、考えてたんでしょ」
フランキーの眉間に皺が寄り、ただでさえ良くない目付きが更に悪くなった。
何てことを訊いてくンだ、このひとは。
自他ともに認める「駆け引き上手」のフランキーも、ロビンの前でだけ腹芸が出来ない。
分かりやすく、手が止まる。
「……」
「アタリ?」
ロビンに見られている顔半分が熱く感じる。
「彼女のこと?」
ずいぶん気楽に訊いてくれるじゃねェの?
人の気も知らず、質問してくるロビンに文句の一つも言ってやりたいけれど、余計なことを口にすると藪蛇になりそうなので、グッと我慢する。
「そんなもンがいたら、今ここで教科書開いてねェよ。とっくにシケこんでら」
「そ…うなの?まだ彼女いないの?てっきりいるものだと…」
ロビンは白い手を頬に当て、予想外の返事にただでさえ大きな瞳を更に大きく見開いた。
「こう見えて彼女いない歴、1年半だ。驚いたか」
冗談めかしてウハハと笑ってみせる。
威張れることではないのだが。
「とまァそんなわけで、好きな女のこたァ年中考えてる。別に珍しいことでも何でもねェ。考えてねェ時の方がマレなくらいでよ」
「そう…あんなにモテてたあなたが…そんなにフリーでいるなんて…」
フランキーの彼女は話が出る度に違っていて、その節操の無さと精力旺盛さにはずい分と悩まされたものだったのに。
普段、安定して穏やかな表情を見せているロビンが、珍しく複雑そうな顔になった。
フランキーとしては、あまりロビンとしたい話題でもないので話を逸らす。
「それから…ちょっと、昔のことを考えてた…」
「昔のこと?」
「ロビンに初めて会った頃のこと」
「何でまた」
ロビンも先程、昔話を思い出していたこともあり、その話に釣られてみる。
「なー…、ロビン」
「何?」
「サウロ、ってヤツの話、おれにしてくれたの覚えてる?」
「ええ、覚えてるわ」
ロビンは天板に肘をついて、フランキーの口から出た懐かしい名前に頬を緩めた。
「…フランキー、そんなことを思い出してたの?」
「まァ、色々と」
口調がつっけんどんになる。
サウロ→ロビン笑顔のコンボ、が10年経っても気に入らないフランキーだった。
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女性
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しばらくフラロビ妄想で生きていけそうです。
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