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フラロビのSS置き場。
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コミックスの以前の紹介文、「変態船大工」という響きがそこはかとなくエロスで大好き。


新世界編のアニキは「前半分」どころか、背中まで改造が加えられていそうな気がする。
巨大化に伴って生身の背中もどうにかしないといけないわけで、34-36歳の間にはもう成長期は訪れないから(ry、ウソップに針で刺されて痛がっていたあの日が懐かしい。
ロビンは、「完全な肉体の他の誰かよりも、あなたの肉一片を愛する」を地で行きそうで怖い。


++++++++++





9. 行ってらっしゃい、行ってきます


留学先に発つ日が近づいて来て、ロビンがこの楽しい夏休みの終焉に物寂しさを覚え始めた頃。
ロビンがもうこの先数年間、外国に行ったっきり帰ってこない事実をフランキーが知り、大騒ぎになった。


フランキーだって理解していた。
夏休みが終わったら、ロビンは帰ってしまうことは。
でも、フランキーは、ロビンの帰る先はいつでも会おうと思えば会える場所、だと思っていた。
大枚はたいて時間をかけて飛行機に乗って行かないと会えないなんて、夢にも思っていなかった。
それを知った時には、一緒にいられる時間は僅かになっていて。


「そんなの、おれは知らねェ!聞いてねェ!」
と泣いて泣いてダダを捏ねた。
「ロビン、行くな!行かないでよ!」
とロビンを困らせた。


それから、ロビンが去る日まで、大変だった。
フランキーはロビンの行くところ、どこへでも離れずについて回った。
就寝時、フランキーが甘えてロビンと手を繋ぐのは常だったが、以降の彼はロビンの胸に顔を突っ込むようにして抱きついて寝た。
残暑の折りだったが、ロビンには振り解くことが出来ず、ふたりして汗だくで寝た。


お風呂も、これまでは別々に入っていたものが、狭いお風呂に並んでの入浴になった。
クローバーは羨ましがってみせた結果、年頃の少女に大いに怒られた。
相手は10歳とはいえ男の子、異性に裸を見せたことのなかったロビンは正直かなり恥ずかしかった。


一番大変だったのは、フランキーがカルガモのヒナのようにトイレにも入って来ようとすることだった。
「何でだよッ!」
と、フランキーは入れてくれないロビンに癇癪を起したが、
「当たり前でしょ!」
と断固阻止した。
フランキーがエロ目的でないことは重々分かってはいたが、断固阻止した。


そして、あのフランキーが外遊びをしたがらなくなり、最後の数日は、ふたりで店番をしながら本を読んだ。







ロビンの去る前夜。
部屋の片隅に、きちんとまとめられたロビンの手荷物が侘しさを醸し出していた。
部屋の大半がフランキーの私物で埋められてる中、そこだけが片付いていて不自然だった。
「ロビン」
ここのところ、ずっと傍にはいるものの、口数が少なくなってしまったフランキーがポツリと話出した。
「なあに、フランキー」
同じ布団の上に転がって、胸元にしがみついているフランキーに、そうっと返事をする。
夜風に乗って、虫の声が聞こえた。
夏の終わりが、近づいている。


「本当に、明日、行っちゃうの?」
「うん」
「行かないってのは出来ないの?」
「うん。勉強して、考古学者になるのが私の夢だから。ここにいても、それは叶わないの」
「おれ、ついてけない?」
「うん。私は一人でいかないと…それに、私と来たら、トムさんみたいな大工になるっていうフランキーの夢、叶わなくなるわよ?」
「……今度はいつ…帰ってくるの?」
「分からない。そう簡単には帰れないわ…」
「……」
「それに、一人前になるまでは帰らないって、私決めてるから」
「……」
「でも、いつか。絶対に帰ってくる。フランキーのいるこの町に」
「ホント…?」
「うん。フランキーが今の私くらい大きくなった頃、また会えたらいいね」
「……」
「ね。フランキー」


ずずっと鼻を啜る音がする。
ロビンは、道理で胸元が湿ってると思ったわ、とフランキーの髪を撫でた。
向こうに行っても、この柔らかな髪の感触を忘れないように、たくさん撫でた。


「ロビン」
「なあに、フランキー」
「いつかまた会ったその時も、おれと友達でいてくれるか?」
「もちろん」
「それと、おれの姉ちゃんでいてくれる?」
「もちろん。フランキーも私の弟でいてくれる?」
「うん。おれは本当のロビンの家族でいる。離れてても」
「ありがとう。フラン…」


ロビンの瞳からぽろぽろと透明な雫がこぼれた。
いくつもいくつも、ピローカバーに吸い込まれていく。
この目から涙が出るなんて、いつ以来だろう?
言葉が途切れたロビンに、フランキーが
「どうしたの?」
と怪訝そうな声を出す。
ロビンはフランキーの髪に頬を押し当てて、くちづける。
「何でもないわ」
と返事をした。


フランキーは暖かなおひさまの匂いがする。
それから、甘い、コーラの匂い。


「おれさ…ロビンに手紙、書かないから。電話もしない」
ロビンのパジャマを掴むフランキーの手がぎゅっと握られる。
「ロビンはただどこかの学校に行くだけなんだ。帰ってくるのに時間がかかるだけで。アイスバーグが学校に行くのと同じ。あいつが学校に行くからって、特別に手紙書いたりしないだろ。懐かしがって電話もしないだろ」
フランキーはぎゅっと目を瞑った。
堪えているのに、強がっているのに、また目が熱くなってくる。


「それと同じなんだ。だからおれはしない。ロビンもするな」
「……分かったわ」
「はかせにも訊くなよ?おれのこと。おれも訊かない」
「うん」
「ロビンの学校は、ちょっと遠いだけなんだ」
ロビンの手がフランキーの頭を何度も何度も撫でる。


「ロビンは『行ってきます』だけ言えばいい。おれは『行ってらっしゃい』を言うから」
「うん」
その後のフランキーの声はグズグズで。
おそらく
「次に会う時は、ロビンは『ただいま』って言って、おれは『おかえり』って言う、約束だ」
ということが言いたかったのではないか、とロビンは推理した。


ロビンがクローバー宅に滞在すると聞いたときには長い間だと思った。
でも、夏休みなんてあっという間だった。
一緒にいられた時間は何て、短かったんだろう。
フランキーは、明日からの過ごし方が分からない。







「ロビン…行っでらっじゃい」
「行ってきます…フランキー」







次の朝、ロビンが目覚めるとフランキーはいなかった。
ロビンの胸元と、フランキーの枕やシーツが涙で湿っていて冷たかった。
見送りに、いつも一緒に遊んでいたナミやウソップたちは来てくれたのに、フランキーだけがいなかった。
見送りに来なかったフランキーのことを皆は
「困ったヤツだな」
と口々に言ったけれど
「フランキーとは昨日の夜、きちんと挨拶しましたから」
とロビンは笑った。


**********










カップの泡をきれいに濯ぎ、水切りカゴに置く。
洗いものを終えたロビンは、「そうそう」と呟きながら、小引き出しからハンドクリームを取り出して念入りに手に擦り込んだ。
ラベンダーの香りが立ちのぼり、しっとり潤った手指に、ロビンは満足気に頷いた。
続いて冷えたタンブラーに氷を入れて、冷蔵庫から茶色の液体の詰まった瓶を引っ張り出す。


この店のメニューにはコーヒーと紅茶の銘柄しか書かれていない。
コーラはフランキーの大好物。
だからメニューにはないけれど、いつも切らさずにコーラは冷やしてある。
コーラは他の誰にも絶対に出さない、それはロビンのルール。


「当時の私に……あんなダダッ子に運命的な何かを感じろ、って方が無謀だわ」
ロビンはクスクス笑いながらコーラの栓を抜く。
「でも、本当に」
フランキーに出会えてよかった。
あの少年は私のヒーロー。
その思いは今も、あの頃も変わらない。
ロビンは果てしなく、フランキーに感謝していた。


「行ってらっしゃい」
「行ってきます」
約束通り、それ以上の言葉を交わすことなく、ロビンとフランキーは別れた。
そして7年後に再会した時。
あの夜の言葉を律義に守り、ロビンに一度も連絡を寄こすことのなかったフランキーの第一声は
「お帰り」
だった。
「ただいま」
ロビンはたったその一言を絞り出すのに、どれだけ大変だったか忘れることが出来ない。
その言葉は小さ過ぎて、彼の耳に届いたのかも分からない。


他愛ない約束を覚えていてくれたことが身を震わす程に嬉しかった。
正直、フランキーは忘れていると思っていた。
約束どころか、自分という存在自体を忘れられていると思っていた。
だから、会うのが怖かった。
会わないで済ませてしまおうかと思っていた。
だけど、それは杞憂で。


それがロビンと分かった瞬間の、フランキーのあの表情。
喜色満面とはきっとあの顔を言うのだろう。
見違える程に成長したフランキーに、あっという間に抱き竦められた。
声を殺して、泣いているのを隠そうとする努力をして、
「バカ!泣いてねェ!」
と言っていたけれど、しっかり泣いていたから
「変わらないわね、フランキー」
と、ロビンは頭を撫でてあげた。


タンブラーにコーラを注ぎ入れる。
シュワシュワと炭酸がはじけ、辺りに爽やかで甘い香りが漂う。
フランキーによく似合う香り。


どれだけ私が嬉しかったか、彼は知らないだろう。
私は何度もフランキーに救われている。
私は、フランキーのためになら、どんなものにもなれるから。
彼が『姉』を望むなら、どんなに苦しくても、『姉』でいてあげようと思う。


フランキーはまだ、何やら思案しているようだった。
ロビンはコーラの注がれたタンブラーをトレーに載せると、この世で一番愛おしい存在である『弟』の元へ足を向けた。



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