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フラロビのSS置き場。
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サンジは48全部知ってても、女性が無理するような体位は冗談でもやらなさそう。



若ンキー時代はそれなりに女遊びをしておいて欲しいけど、何だか彼女作るよりも戦艦造ってた方が楽しい、乗るのも女よりも戦艦、って時期もありそう。
でも、普通にエロいことは大好きそうだし、アイスバーグと一緒にバカはやってそう。
変態だけど、性的にはノーマル、でも四十八手は網羅していると思う。


++++++++++





12. 訃報


**********


フランキー17歳、高校3年生。
季節は梅雨に入り、あちらこちらの垣根で紫陽花の花々が色とりどりに色づき始めた頃。


白詰草古書店のクローバーが他界した。
数ヶ月前、将棋仲間の町医者・クロッカスがクローバーの元を訪れた時、彼は奥の居間で胸を押さえ倒れていたところを発見された。
足元にはその日の朝刊が転がっていた。
心臓に異常あり、と直ぐに診てとったクロッカスは迅速に処置をし、救急車を手配した。
しかし、発見に時間がかかったため、辛うじて命は取り留めたがクローバーの容体は重かった。
長い集中治療室での入院の後、クローバーは息子夫婦の元に引き取られて行った。
結局、彼はこの町に戻ってくることなく、鬼籍の人となった。







グレーのシャッターに貼られた、「都合によりしばらくお休みいたします」の文字。
彼これ4,5カ月、貼られっぱなしで草臥れ切ってヨレヨレのそれも、ようやくお役御免だ。
クローバーが救急車に乗せられた日以来、シャッターが閉まったままの古書店の前を通る度、自分の思い出まで閉じ込められてしまったような気がして、フランキーはどこか物悲しかった。


そこに重ねて、クローバーの訃報。
もうこの店が開くことはない。
あの場所で、懐かしい少女の面影と、少年時代の自分の幻影を、もう見ることは出来ない。
湿っぽい気持ちになるのは、シトシトと止む気配のない、ここ数日続く雨のせいばかりじゃないはずだ、とフランキーは半透明のビニル傘を傾け、曇天を見上げた。


「ンマー、フランキー!置いてくぞー!」
タクシーの前でアイスバーグが呼ぶ。
トムは既にタクシーに乗り込んでいるようで、運転席側の片輪が沈んでいた。
「ああ」
と短く返事をして、フランキーもトムの隣に滑り込む。
アイスバーグが運転手に行き先の葬儀場の名前を告げた。


今日はクローバーの通夜。
喪服姿のトム・アイスバーグと共に、フランキーも学校の夏服の白いワイシャツで参列する。
「ほら」
助手席のアイスバーグから数珠を手渡された。
フランキーは、反射的に数珠の数を数え出したが、途中で面倒になってやめた。
葬儀場に向かうタクシーの中でアイスバーグが、クローバーという人物は本来こんな小さな葬式で済む人間じゃないくらい凄い人なんだ、という理由を吶々と語っていたが、フランキーの頭には殆ど入ってこなかった。


クローバーの死が、自分の少年時代と青年時代の節目になるのだろうという予感がフランキーの頭の中を占拠していた。
切り分けられる向こう側に、彼女がいる。
タクシーの窓を打つ雨粒をぼんやりと眺めながら、フランキーは考えた。
もしかしたら、今日、会えるかもしれない、
7年ぶりの彼女のことを。


おれに会ったら…おれがおれだって、気付いてくれるかな?
デカくなったからな、おれ…。


小学生である間は一向に伸びる気配のなかったフランキーの背も、中学入学を境に一気に伸び始めた。
急成長を遂げたフランキーは仲間連中をどんどん追い越し、今やあのアイスバーグの身長すら抜きそうな勢いだ。
いわんをや、当時見上げていた彼女の身長は絶対に、とっくの昔に追い抜かしているはず。
きっと自分を見違えるに違いない。
心が波打ち始める。
向かう先は葬儀場、不謹慎なのは分かっているけれど期待に胸が膨らむのは止められない。


23歳の彼女はどんなになっているだろう?
高校生の彼女ですら綺麗だったのだから、大人の彼女はさぞかし綺麗だろう?
向こうの脂っこい食事で太ってなければいいと、心の底から祈る。
でも。
遠い昔にほんの少し過ごしただけのガキんちょのことなんか、覚えてないかもしれない。
覚えていても、ただ「久し振りね」と一言のおざなりのものだったら、それはそれで傷つきそうだ。
「会いたい」と思う気持ちも、自分のものと相手のものとでは大きさが全然違うに違いない。
彼女に会いたいと願う気持ちの大きさは、自分でもバカみたいだ、とフランキーは思う。


期待と不安が綯い交ぜとなって、フランキーはいつになく無口だった。
「涙雨だなァ…」
トムがポツリと言った。
ああ、きっと。
彼女は恩人の死に悲嘆している。
フランキーは思った。
彼女は辛い時にも泣かないで、笑顔を作ろうとするひとだったから。
彼女の心痛を考えると、自分の胸もまた痛んだ。







「腰履き直してシャツ中に入れたか?」
「見りゃァ分かンだろ」
「ンマー、第一ボタンまで留めてるか、てめェ」
「留めたよ」
「靴の踵踏んでねェだろうな?」
「踏んでねェよ!」


アイスバーグのチェックに辟易しながら、受付を済まし、最後列に腰かける。
斎場は商店街の見知った顔ばかりだった。
普段は陽気な商店街の面々が、慣れぬネクタイを締め神妙な顔付きで挨拶をしている姿を見ると、
「ああ、はかせは本当に死んじまったんだなァ」
としんみりした感情が改めて押し寄せてくる。
祭壇に掲げられた遺影は記憶の中と変わらず、ニコニコとしているのに。


「はかせが倒れる三日前にさァ…」
フランキーは隣のアイスバーグに話すでもなく、ボソボソと声を出す。
「もう全然…あの店に顔を出すこともなくなってたんだけど…何となくさ、店に入ったんだ」
背筋をピンと伸ばして腰かけるアイスバーグは、だらしなく椅子に沈むフランキーに目だけを向けた。
「すげー珍しいことにはかせが店番しててさ…いつもいた試しがねェのに…そんでちょっと話して…そしたら『おまえ、小さい頃から好きだったろ、やるよ』って…」


フランキーが古書店に立ち寄る度に引っ張り出しては眺めていた本を数冊、クローバーが寄越して来た。
その本の裏には、実は物凄く立派な額のプライスがついていて、それを理解できた辺りから迂闊に触れられなくなったのもいい思い出で。
小躍りするくらい嬉しい半面、「何でまた?」と強く思った。


「『今まで売れずにここにあるのも縁。この本もおまえに貰われるのは本望じゃろう』…って…」
その本たちは、今ではフランキーの部屋の本棚の、一番上に鎮座している。
彼の宝物だ。
「はかせと会ったのはそれが最後。直ぐ後に、救急車で運ばれて…。あの日、本をくれるなんてさ……はかせ、分かってたのかな…」
自分の寿命を。自分の運命を。
それを思うと、フランキーは切ない。
しんみりしている義弟に小さく息をつくと、アイスバーグは視線を遺影に戻した。


「ンマー…おまえも何らかの虫の知らせがあったから、博士に会いに行ったんだろうな…」
「虫の、知らせ…」
「最後に挨拶出来てよかったじゃねェか」
「そうなのかな…」
フランキーも遺影を見上げる。
やっぱりクローバーは笑っていた。


クローバーとの会話にはまだ続きがあった。
フランキーは彼にひとつ、お願い事をされていた。
クローバーが亡くなった今では、遺言になってしまったその真剣な言葉。
そのことは、フランキーは黙っていた。


読経が終わり、一般焼香が始まり。
通夜の席は粛々と厳かに進んでいく。
フランキーは首を伸ばし、焼香を終えて戻るひとりひとりを懸命に確認したけれど、その中に会いたい顔を見つけることは出来なかった。
終にフランキー自身がその列に並び、見様見真似で焼香を済ませ終わっても、とうとう彼女は現れなかった。







「さァ、帰るかァ…」
後は帰宅だけだからもういいだろう、と窮屈だったワイシャツのボタンを三つばかり外し、シャツをズボンから引っ張り出す。
シャツの腰の辺りがシワシワで超カッコ悪ィと舌打ちをしたが、中に入れっぱなしの方が嫌なのでしょうがないと諦めた。
トムはこれから商店主仲間と弔い酒だと言って、「おまえらふたりで先に帰ってろ」と街に繰り出して行った。
アイスバーグとふたりの帰路とは、何ともつまらない。
式も終わり、人気も疎らになったクローバーの斎場に、後ろ髪を引かれる思いがする。


引出物の紙袋をぶら提げたフランキーが力無く歩きながら、
「おれ…明日の告別式にも来ようかな…」
ぼそり、と呟いたセリフをアイスバーグが聞き咎めた。
「ンマー、何言ってんだ。通夜に出たんだから充分だろ」
至く当然なことを言われる。
問題なのは一般常識ではなく、探し人をする機会、なのだが。
「それにてめェ、明日は平日だ。学校あるだろう」
それを解決するのは何も難しくはない、学校なんてサボるだけだ。


するとそこに、アイスバーグの中学校卒業以来のクラスメイトたちが通りかかった。
クローバーの通夜に来ていたのだろう、「おお久しぶり!」と盛り上がる。
「おまえ、ちょっと待ってろ」
と言い残し、アイスバーグはその場で旧交を温め始めた。
見るからに、しばらく帰る気配がない。
放ったらかしにされたフランキーは、先にひとりで帰りたい気持ちでいっぱいだったが、タクシー代をアイスバーグに握られているため、仕方なく時間を潰すことにする。


フラフラと歩き回り、人気のない階段の踊り場で立ち止まった。
窓の外を覗くと、まだ雨が降っているようで、薄暗い景色を余計にくすませている。
見下ろすと、他の斎場でも山場を過ぎたのだろう、タクシー待ちの傘の列が幾らか伸びていた。
「ま、タクシー乗るのにも、ちっと待ちそうだしなァ」
外で待つよりもここで待った方がクーラーも効いてるし、いいや、と壁に寄りかかる。


はあ。


フランキーの肩が大きく上下する。
特大の溜息が漏れた。



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