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フラロビのSS置き場。
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「しーん」ってなる側の人間。


フランキー将軍は男子の夢なのかもしれないけれど、チンピラアニキの肉弾戦が好きだった派としては巨大ロボのコックピットに乗り込んで戦う今のスタイルは残念だったりする。
技のバリエが豊富で、けっこうセコかったりするのもまた良くて、いちいち人工皮膚を脱着する描写もいい味だったのに、今後は将軍とビームがメインなんだろうな。
男子の夢なのかもしれないけれど、悲しいかな、私は女だからね…。


++++++++++





14. お帰り、ただいま(F)


「まいったなー…」
洗面所の鏡から見返してくる顔はいかにも泣き腫らした目。
顔を冷水でしつこいくらいに洗ったが、そう簡単には目の腫れは引いてくれないようだった。
こんなツラを仲間に見せる気にもならない。
フランキーの学校をサボる口実がまた増える。


何でこんなにもロビンに会いたいのか、自分でも良く分からないけれど。
連絡を取り合わない約束を交わしている以上、彼女がいつこの町に来てくれるのかも分からない。
今回のクローバーの葬儀はフランキーにとっての千載一遇、唯一のチャンスなのだ。
フランキーは昨日、タクシー乗り場で見かけた女のひとを思い出す。
あの時は絶対にロビンだと思った。
でも、一晩経ってみるとイメージがあやふやになってきて、自分の確信も揺らいでしまう。
他人の空似だったかもしれない、なんて考え出す始末。


元々、フランキーの持つロビンの記憶は7年前のもので、その時は10歳だった。
子ども目線での記憶、あまり、アテにはならない。
時が流れて変わっているだろうロビンを、己の願望に当てはめて美化しているから、好みのタイプを見かけてロビンだと思い込んだだけなのかもしれない。
アイスバーグの発言じゃないが、普通、通夜に出たら告別式には出ないものだ。
だから昨日の彼女がロビンだとすると、今日の告別式には現れないことになる。
それも困る。
フランキーが今日、ロビンを葬儀場で捕まえるためには、昨日見かけた人物は別人であってくれた方がいい。


「葬儀場云々じゃなくてさー…こっち来てんなら、トムズに顔出してくれてもいいのによー…」
歯ブラシを口に突っ込みながらボヤく。
ロビンが告別式に参列するのだとしたら、もしかしたら今日、トムズに来るかもしれない。
でも告別式に参列しても、トムズには来ないかもしれない。
絶対にトムズに来る確証がない以上、斎場で捕まえることはやはり最善の手段。


一人前になるまでは帰らない、そう言った手前、ロビンはまだ一人前ではないから会いに来ないのだろうか?
葬儀はイレギュラーな出来事なのだから、そんなに厳密に考えなくてもいいのに、と思う。
「大体が一人前になるまで…って、アバウトすぎんだよ…」
愚痴が止まらない。


ロビンは「フランキーが今の私くらいに大きくなった頃、また会えたらいいね」と言った。
『今の私くらいに大きくなった頃』が、何を指すのか。
フランキーの何がロビンくらいに大きくなればゴールなのか。
「身長ならとっくの昔に追い越してるぜ…いくらロビンが女では背の高い方だった、っても今のおれよりまだデカいってこたァねェだろ…」
フランキーはやたらデカくて物凄く嫌なロビンを想像して、即座に消去し、なかったことにした。
「それに年齢なら…」
フランキーは口を濯ぐ。


あの夏のロビンの年齢は通り過ぎた。
もうじきまるっと1年のオマケがつく。
「『高校生』って括りなら、まだ9カ月くれェ、あるけどよ」
だとしても、タイムリミットは後9カ月だからな!
と心の中でロビンに脅しをかけた。







「行ってきまーす」


アイスバーグにではなく、事務員のココロに声をかけて表に出る。
昨日までの長雨が嘘みたいに、今日の空は晴れ渡っていた。
真っ青な空に白い雲が二つ三つ、つうつうと滑っている。
「やっぱ天気がいいと、気分もいいなッ」
フランキーは大きく伸びをする。
コキコキと首を鳴らす。
地面の水溜りにも太陽が映り込んでピカピカ光っていた。


「晴れて良かった。チャリで行けるわ」
フランキーは工務店裏に回り、工場に停めてある自転車に跨った。
頭の中で葬儀場までの道順を確認する。
会えるといいな…
考えているうちに、ロビンが自分に会わないでいるのは交わした約束のためではなく、純粋に自分のことを忘れているからではないか、という可能性に行き着いた。
高校生だったロビンにしてみたら、子どもと交わした他愛のない口約束。
フランキーはブルブルと頭を振って、ネガティブな考えを払い出す。


「せっかく今日はこんなにいい天気だってのに。縁起でもねェ」
さあてと、行くか。
フランキーは思いっきりペダルを踏み込む。
古書店の脇を加速度をつけて走り抜け、表通りに出た。


その時、フランキーの視界に入った人影。
古書店前の閉まったままのシャッターの前に、見慣れぬ誰かが立っている。
シックなワンピースに身を包んだその人は、汚れたシャッターに細い手を伸ばし、貼られたままのお知らせの紙を指で辿っていた。
キキキ、と派手なブレーキ音を響かせて、フランキーは自転車を急停止させた。


長い睫毛に縁取られた、大きな黒目がちの瞳がフランキーの目と合った。
フランキーの動きが固まる。
心臓が一気に駆け足を始める。
大きく膨らんだ胸、括れたウェスト、高い腰、きゅっと締まった足首。
肩先で切り揃えられた、ストレートの黒い髪。
それは昨日、タクシー乗り場で見かけた白い横顔のひとだった。


スッと通った鼻筋、気品のある口元。
若干の印象の誤差は、きっとポニーテールじゃないのと、どことなくやつれて見えるせいだ。
記憶の中よりも大人の女性度が格段に上がってはいたけれど。
確かにロビン。
フランキーが再会を願っていた、ロビンそのひとがそこにいた。


最初は見間違いだと思った。
あんまりにも会いたい会いたいと考えてばかりいたから、幻覚を見たんだと思った。
でも、それは夢幻ではなくて、本物で…。


フランキーの喉がごくりと鳴った。
「ろ…ロビン…?」
ようやく出た声は我ながら変な声だった。
かすれたような、しゃがれたような。
唾を飲み込んでも少しも喉の渇きは満たされず、喉に貼り付いた文字を無理矢理剥がして出したような、変な声だった。


すぐに返事はなかった。
彼女は緊張した面持ちを崩さず、その場に佇み、窺うように見つめ返してくる。
本当に他人の空似なんだろうか、とフランキーが惑乱し始めた頃、
「フランキー…?」
目の前の綺麗な人も、名前を呼んでくれた。


「お帰り」
ずっと言いたかった一言。
鬩ぎ合っていた不安と期待、拮抗していたそれはロビンの声を聞いた瞬間に不安が雲散霧消して。
自然と顔が綻んでいく。
決壊したダムのように、様々な想いや感情が一気に溢れ出す。
ロビンはただ社交辞令として挨拶に来ただけなのかもしれない。
自分が想っているほど、彼女は自分のことを懐かしくは思ってくれてないかもしれない。
もう、それでも良かった。


自分のこの嬉しさをロビンに何とかして伝えなきゃ。
心を席巻する想いにフランキーのボキャブラリーが応えきれない。
口よりも身体が先に動いた。
自転車を放り出す。
その際に、ハンドルが力一杯腿の付け根に突き刺さったけれど、痛みなんか全く感じなかった。


一足飛びに駆け寄って、がばり、と両手で細い身体を抱き竦める。
懐かしいその人の身体は、想像以上に小さくて華奢だった。
感情に任せて抱き締めたら、折れてしまいそうだった。
けれど、色々なことをいっぺんにコントロールすることは、フランキーにはもう不可能だった。


落ち着こうと思いっきり深呼吸をしたら、鼻の奥まで甘い花の香りが広がった。
そうだ、何て懐かしいロビンの匂い。
記憶の中のロビンもこんないい匂いがしたのを覚えてる。
一気に7年分の時間が左回りに流れていく。







「お帰り」
とロビンに言った後のことは、実は、フランキーはあまりよく覚えていない。
ロビンの唇が「ただいま」と動いたのだけは記憶にある。
後は舞い上がって舞い上がって。


次に気がついた時はロビンをきつく抱き締めて、鼻を垂らして泣いていた。
スマートでクールな再会シチュを何パターンも、幾度となくイメトレしていたというのに。
大人びた対応ができる成長した自分を見せて、ロビンをびっくりさせてやりたかったのに。
小坊の頃と何にも変わってねェじゃん、おれ…
結局これかよと、自分に落胆もしないわけではなかったが、ロビンの手がずっと頭を撫でていてくれて、懐かしくて懐かしくて、涙がまたあふれた。


「変わらないわね、フランキー」
そう言うロビンの声も、昔と変わらなかった。
ロビンの肩口に顔をうずめて、フランキーは泣きながら大きく笑った。



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