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フラロビのSS置き場。
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vsフクロウのフランキーBoxingとか好き。


確かにアニキの飛び道具は、敵が素早過ぎて命中率が悪い、その上に敵が硬過ぎてダメージを与えられない。
ザコ敵一掃、威嚇攻撃、カウンター攻撃としては効果も上がるけれど、致命傷に結びつかない上に、当て馬的扱いを受けるのが口惜しい。
でも、そうなのだとしても、将軍だとそういった諸々の出番がなくなって、しおれたリーゼントももう見られないわけで、やっぱ相当残念だ。


++++++++++





15. お帰り、ただいま(R)


ロビンはずっと逡巡していた。
トムズワーカーズが目と鼻の先のところまで来て、足が動かなくなってしまった。
もうこうして、懐かしい古書店の前で、もう20分も立ち尽くしている。
シャッターに貼られたお知らせの文言を、もう何百回読み返したことだろう。
「どうしよう…」
ロビンは大きな溜息をついた。







クローバーの突然の訃報に、ロビンはとるものもとりあえず、急いで手配した飛行機に飛び乗った。
クローバーとは節目節目に挨拶のやり取りをしていた。
今年も例年通り、息災を知らせる手書きの年賀状が届いたのに。
心を引き裂くような衝撃だった。


ロビンはフライト中ずっと、ここしばらくの我が身に起こった出来事を思い返していた。
怒涛のような不慮の事態の連鎖。
知らないうちに事件の渦中に巻き込まれ、主犯の一人とされていた自分。
身に覚えのないことで散々取り調べを受け、マスコミに追い回され、証拠不十分で不起訴処分となったものの、世間の目は厳しく。
今や仕事を続けて行くのも難しい状態に陥っていた。


そこに追い打ちをかけたクローバーの死。
ロビンの名前が報じられた事件が発覚した頃、クローバーが心筋梗塞で倒れたことから、おそらく彼の発作は自分が原因なのだろうとロビンは考えていた。
だとすれば、クローバーの死因の一端は自分のせいなのだ。


もう心が折れる寸前だった。
これまでも何回も心が折れそうになった。
でもそれをいつも押し止めてくれたのは、心に棲む水色の髪の少年だった。
彼の面影が脳裏を過る度、ロビンは歯を食い縛って踏み止まった。
「こんなところで倒れていたら彼に顔向けが出来ない、彼に会えない」
あの少年に胸を張って会える日のために、ロビンは苦境を乗り越えてきた。
今も、彼の少年を心の支えにし、もう少し頑張ろうと唇を噛んだ。


辛いことを極力考えないようにしようとすると、思うのは彼のことばかりで。
7年ぶりに彼と再会することは、不幸のスパイラルに陥って久しいロビンにとって、ようやく見つけた光明だった。
学生である彼が通夜に参列するだろうことは容易に推察できた。
だからロビンも通夜に向けて時間を調整した。
彼に会うことだけが、今のロビンの救い、ロビンの原動力だった。


なのに、天候不順で飛行機の到着が大幅に遅れ、タクシーを飛ばして葬儀場に向かうも、ロビンがようやく辿りついた時には通夜は終わっていた。
彼女の通り道に水色の面影はどこにもなく。
滑り込みで手を合わすことが出来たクローバーの遺影を前に、ロビンの涙は堰を切ったように流れ出した。
「ごめんなさい、はかせ…」
色々と、ごめんなさい。
それしか、言葉にならなかった。


心配ばかりかけてごめんなさい。
弱い孫娘でごめんなさい。
期待に応えられなくてごめんなさい。
はかせとお別れに来た筈なのに、彼と再会することを楽しみにしてて、ごめんなさい…
はかせとのお別れが悲しくて泣いている筈なのに、彼と会えなかったことを残念に思って泣いててごめんなさい…







「どうしよう…」
口から出る言葉はそればかり。
シャッターに貼られた縒れた紙に手を伸ばす。
指先に感じる埃っぽさ。
溜息をつく。
大きく息を吐き出しても、肺を満たすのは焦燥感。


彼に会うだけなら、葬儀を抱き合わせにする必要などどこにもない。
こうやってトムズワーカーズにやってくればいいだけの話なのだ。
なのに、葬儀場で会うことに拘った理由、それは再会を楽しみにしている半面、不安でもあったからだ。


彼が私のことを忘れていたらどうしよう。
私が思うほど、彼に再会の感動がなかったらどうしよう。
それに、彼があの事件を知っていたら、話にもならない。
出先でなら、ショックを受けても何とか取り繕うこともできる。
簡単にその場を離れることもできる。


勉学にだけに追われ、孤独のうちに時間が止まったような数年を過ごしたロビンと、小学生だった彼の数年は絶対に同じものではない。
多くの友達に恵まれ、日々新しい刺激が彼を待ち受けている。
毎日を目まぐるしく過ごしているうちに10歳の夏の出来事など、とっくに色褪せて忘却の彼方に追いやられていても何ら不思議ではない。
それに彼も、今はもう高校3年生だ。
私の愛した、あの無邪気な少年はどこにもいないだろう。
ロビンの黒い瞳はもうずっと、暗黒の淵を見つめていた。


「だから…会わない方が…このまま、帰った方が…」
きっと傷は浅い。
彼に素っ気なくされたら、既に数多の氷の棘で串刺しにされて血を流しているロビンの心は耐え切れないだろう。
心は根元からぽっきりと、折れてしまうだろう。


ロビンは手首に目を落とした。
もうすぐ11時。
彼は学校に行っているはず。
アイスバーグも大学かもしれない。
トムさんは働きに出ていて留守だと思う。
多分、トムズにいるのはココロさんだけ。


悩んだ顔をしながら、誰にも会わないで済む時間帯を選んで来ている自分は本当に意気地なしだと思う。
会えなかった言い訳を自分に用意している。
「ココロさんに託を頼んで…少し、皆の近況を聞けば…いいわよね…」
ココロさんしかいないと思う。
でも、もしも、彼がいたら…。
ロビンの眉間に深い皺が寄る。
楽観的になんか考えられない。
また、痛いくらいに肺が空っぽになった。


その時、ロビンの極間近で自転車のブレーキ音が響いた。
条件反射で音のした方に顔を向ける。
自転車に跨った水色の髪の青年が、狐につままれたような顔をしてロビンを見ていた。
その青年を言い表すなら、とにかく『大きい』、の一言で。
上背の高さと、見るからに筋肉質な身体つき、精悍な顔つき。
その中に昔の面影を見つけることは難しかったけれど。
星の輝く淡い空色の瞳をロビンが見間違える筈がない。


心臓が破裂したような音を立て、呼吸も止まる。
声をかけていいのか分からない。
声が出ない。


「ロビン…?」
名を呼ばれた。
声変わりをしてすっかり低くなった声。
記憶の中の彼とは、声も姿も全く変わってて。
本当に彼なのか、信じられないほどで。
さっきまで、会うのが怖かった。


でも、もう、
傷ついても、どうでもいい


心が思慕の奔流で埋め尽くされる。
「フランキー…?」
ロビンは万感の想いを込めて名前を呼んだ。
「お帰り」
互いが互いであることを確認しあっての、フランキーの第一声。


ああ。
ロビンの心が軽くなる。
フランキーが私のことを覚えていてくれた。
約束も、ちゃんと忘れずに。
泣きべそをかくフランキーを抱き締め続けた、あの夜が経ち返ってくる。
「ただいま」
ロビンは懸命に言葉を綴った。
でもうまく、声が出なくて、こんなにも小さな声で約束の言葉は彼に届いただろうか?


ロビンが返事をしたのと自転車が投げ捨てられるのは、ほぼ同時だった。
けたたましい音を立てて倒れる自転車を踏み越えて、喜色いっぱいのフランキーが駆け寄ってきた。
長い腕がロビンに差し伸べられ、熱烈に抱き竦められる。
「お帰り!お帰り!ロビン、お帰り!ねーちゃん、お帰り!お帰り!お帰り!」
「お帰り」を連呼され、足も着かないくらいに振り回された。
ロビンはフランキーにしがみ付くので精一杯だった。
首も太く逞しくなって、背中も広く大きくなって。


そのうちに、肩の上で鼻を啜る音が聞こえてきた。
「フランキー」
「バカ!泣いてねェ!」
あの頃が、鮮明に蘇ってくるやり取り。


こんなに、見違えるほどに立派な身体になったのに。
私なんかよりずっと背が高くなったのに。
びっくりするほど、大人びた顔付きになったのに。
まだこうやって、収拾がつかないくらいに大泣きしてしまうの?


7年も経って、こんなにも大きくなったのに。
あなたの中には、あの時の眩しい少年が生きている。
暖かなおひさまの匂いがする。
甘い、コーラの匂いがする。


会えて、良かった。


あなたは
私の英雄。
私の太陽。


「変わらないわね、フランキー…」
フランキーが涙を流すと、ロビンの心に溜まった真っ黒な何かも一緒に流れ出していくような気がした。
ロビンは大きな息をつく。
さっきと違って、胸は少しも痛くならなかった。
ロビンはフランキーの髪をやさしく撫でて、柔らかい身体でふんわりと、グズグスと泣き続ける彼の身体をずっと抱き止めていた。



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しばらくフラロビ妄想で生きていけそうです。
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