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フラロビのSS置き場。
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鉄線、フランキー的響きなネーミング。


年齢差だけでも悩みの種なのに、このCPには学歴差もついて回るから大変。
自分が相手より馬鹿だと実感したり、自分が小賢しいのではないかと心配したり、現実世界だとまあ、離婚率の高い組み合わせだと思う。
何にしても、男の度量次第だなあ。


++++++++++




18. 節操無しの言い訳


次の朝、フランキーとアイスバーグは涙を流して感激していた。
「生きててよかった…!」
「まったくだ…!」
ロビンが来てまだ一日も経っていないのに、ふたりは見解の一致を何度見たことだろう。
「おはよう、アイスバーグ。フランキー」
見慣れた狭いダイニングキッチンに、神々しい女神が降臨していた。


トムズの朝メシ、と言えば。
むさ苦しい男3人が交代で作る、栄養補給を目的とした味も素っ気もない食事のことである。
焦げたベーコンを添えた卵は目玉焼きオンリー、それ以外の朝食レパートリーを誰も持たない。
それにしょうゆでもソースでもケチャップでも手当たり次第にぶっかけて味を濃くして大量の白米をかっこむ。
それから日によって味の濃さが違う味噌汁と、漬物。
それが毎日、365日、変化しない固定メニュー。
晩ごはんのおかずが残っていれば、それも食卓に並ぶが、『食べ物を残す』ことがありえないトムズでは滅多にない。


それが今朝はどうだ?
食卓が輝いて見える。
とにかく、焼鮭、なんてものが載っている段階で男たちは感無量だ。
『おひたし』なる、緑の色彩が取り入れられているのも目に眩しい。
味噌汁も具が一品だけじゃない、ワカメに豆腐が組み合わされている。


「味噌汁を作ったのなんて何年ぶりかしら?皆の口に合うといいのだけれど…」
エプロン姿で手におたまのロビンが少し心配げに呟いた。
「食わなくても分かる、絶対に美味い!」
「見ただけで分かる!心配するこたァ何もない!」
男たちの感動が止まらない。
「大袈裟ねぇ」
ロビンがくすくすと笑った。


そう、いつもと何が違うって、生活空間に女性がいることなのだ。
「何かさァ……今朝は家の中の匂いが違うんだよなァ…清々しい、つーか」
「ンマー……それ何となくわかる。甘い感じがする。特に何をどうしたわけじゃねェんだが…」
また、ふたりの意見が一致する。
おそらく極普通の女性だってひとりでもいてくれたら、この男所帯は華やかになるだろう。
いわんや、ここにいるのはロビンなのだ。
沈魚落雁閉月羞花の佳人。
華やかも華やか、殺風景なダイニングが百花繚乱している。


「おれらン家にゃあ女っ気がまるでねェからよ」
「ああ、ロビンの存在はオアシスだな」
「何を言ってるの。ココロさんがいるじゃないの」
「ロビンこそ何言ってんだ!あれは怪獣だろうが」
「女にカウントできるわけない」
「あなたたち失礼よ?」


「おはよう。おお、美味そうだな」
トムがダイニングにやってきて、念願の朝食タイムとなった。
ロビンの手料理は当然の如く、美味しかった。
美味しいからあっという間に食べ終わるかと思いきや、男たちは一口一口をしみじみと、噛み締めて食べた。
がっついて食べることは冒涜のように思えた。


フランキーにとってはただ美味いメシというだけでなく、7年前のクローバー宅での食卓をも彷彿とさせ、故人への思いとか懐古の情とかが溢れかえって、涙がポロポロとこぼれた。
「感動し過ぎだ、バカ」
とアイスバーグには言われたけれど、感動してしまうものは仕方ない。
ロビンが
「泣かないの」
とタオルを手渡してくれた。







フランキーが本日、もう一つ感動したこと。
それはロビンがフランキーの弁当を作ってくれたこと。
「ロビンごっそうさまでした!」
帰宅したフランキーが真っ先したことは、ロビンに空の弁当箱を手渡すことだった。
「すげー美味かった!ありがとうロビン!」
「ふふふ。そんなに喜んでもらえて私も嬉しいわ」
ロビンが軽くなった弁当箱を振ると、カラカラと中身がない音がした。


「中学校までは給食があったから良かったんだけどさ、高校からは弁当じゃん?ウチの学校は学食もねェしよ。弁当作れるヤツなんざ、おれんちにゃあいねェし」
フランキーはダイニングの椅子にドサリと腰かけた。
「じゃあ、これまではどうしてたの?」
ロビンはフランキーの前にコーラ入りのグラスを置くと、その向かいに腰を下ろした。


「基本は、購買でパン買うとかおにぎり買うとか」
ロビンは聞いてて栄養の偏りが気にかかる。
「お金かかるし、単純に量が足りないでしょ?」
と言ってから、フランキーに訊ねようと思っていたことを思い出す。


「そういえば、今日のお弁当は足りた?高校生男子の食べる量がよく分からないから、適当になってしまったのだけど」
「正直、あの2.5倍、あってもいいかな」
「2.5?そんなに?」
「この身体見てよ。おまけにまだ育ち盛りだしな」
フランキーは自分の大きさをアピールすると、コーラをぐびりと飲んだ。


「そうなの…ごめんなさい。お腹空かせてしまったわね」
「いやいや、いいんだ」
ロビンがしゅんとしてしまったので、フランキーは手の平をナイナイと振った。
「毎日、誰かしら女子が弁当作ってきてくれんだ、おれの分。それで食いつないだから大丈夫」
「え?」
ロビンが手を頬に当て、目をパチクリさせた。
「誰かしら?フランキーの彼女が、ってことじゃないの?」
「彼女だったり、彼女じゃないコだったり、妹分だったり。まァ色々だ」
フランキーは明るくウハハハと笑う。


「要するに。フランキーはモテるのね」
ロビンはくすりと笑って頬杖をついた。
「おうよ。おれはスーパーだからな」
女が放っとかないのよ。
フランキーも頬杖をつき返す。
ここぞとばかりに、『もう子供じゃない自分』というものをロビンに強調する。


「でも複数の女の子からだと、本命の彼女が怒らない?自分以外の女の子のお弁当もらったら、気分よくないんじゃないの?」
「まァね。でも、それくれェで怒るような女ならすぐ別れちまうから、おれ」
フランキーは今度は頭の後ろで両手を組んで、背もたれに深く寄りかかる。
「そもそも彼女なんて1カ月もすれば変わっちまうしな」
「月替わりで彼女が違うってこと?」
「まー、そんなとこ」
あっきれた。
口元に軽く手を添えて、ロビンも背もたれに身体を預けた。


フランキーがモテる、ということは事実だった。
ロビンに対して見栄をはったわけでも何でもなく、切れ間がないくらいに常に彼女がいることは誇大表現でもない。
中学生になって身長が伸び始め、クラスの誰よりも背が高くなりだした頃からずっとのことだ。
立派な体格で水泳部でもエース級とくれば、学内でも目立つ存在だし、ガサツで口も悪いけれど、明るく世話焼きで性根がやさしい性格は誰もが認めるところだ。
時折、海パンで校内を歩き回ることさえしなければ、他派の女子からも支持をもらえると思われる。


「フランキーって節操無いのね」
「違うって。言ったじゃないの。おれはモテるの。スーパーだからな」
フランキーは椅子に座ったまま、馴染みのポーズをとってみせる。
「自慢じゃねェが、おれから女に言い寄ったこと、一度もねェのよ。みんな向こうから『付き合って』ってやってくる。順番待ちだ」
「呆れた…」
ロビンの口からは、ついつい何度も同じセリフが出てしまう。
呆れながらも、思わず笑みが浮かんでしまう。


「高校3年生。ヤリたい盛りなのね」
ロビンの口から出たちょっと露骨な言葉を聞いて、フランキーの顔がほんのちょっと赤くなった。
「フランキーがモテるのは、私も分かる気がするわ…明るくて、嫌味がなくて、頼もしくて。カッコいいしね」
ロビンがクスクス笑う。
ロビンに面と向かって矢継ぎ早に褒められて、フランキーの顔は更に赤くなった。
「きっとフランキーは面倒見がいいのね。やさしいんでしょ」
私にしてくれたように。
フランキーが昔と変わらずにいてくれることが、ロビンは嬉しかった。


「と言うことは、何も私がお弁当を作る必要はないのね」
じゃあ明日からはフランキーのお弁当はなしね、ロビンがぽんと手の平を打った。
「お仕事に行く、トムさんとアイスバーグのお弁当だけで」
「いや、違う、ちょっと待って」
フランキーが腰を浮かせたので椅子がガタガタっと鳴った。
片掌を突き出し、必死に制止する。


「作ってよ!ロビンがずっと作ってくれるなら、他の子には弁当作ってもらわねェようにする」
フランキーの訴えは、ロビンにしてみたらかなり予想外のものだった。
「冗談よ、フランキーのもちゃんと作るわ?それにどうして?女の子のはそれはそれで作ってもらえばいいじゃないの」
女の子は好きな人に手作りのものをあげるのが好きなのだから。
ロビンの意見に、フランキーは「いやいや」と首を振る。


「元々、おれの家に弁当を作ってくれるヤツがいねェから、みんな厚意で作ってきてくれてたんだ。ロビンが作ってくれるなら、もう必要ない。ロビンの弁当一個ありゃあいい」
それにロビンの弁当が今まで食った中で一番美味いしなッ!
「フランキー」
屈託なくそう言い切るフランキーに、ロビンの胸の中がじんとする。
「それこそ足りなきゃ購買でパン買うからいいよ」
「明日はお弁当たくさん入れるわね」
「おう」
フランキーも二カッと笑って、コーラを煽った。


「後」
少ーし、表情を真面目なものにしてロビンが言う。
「やっぱり、彼女が月替わり、ってのは節操がないと思うわ。程々にしなさい?」
「えー?」
「ひとりひとりを大事にしないと。知らないところで恨み買うわよ?」
「まァ…ごもっとも、なんだけど…」
フランキーは何やらを考えているようで、口ごもる。


「……」
「なあに?」
「おれのねえちゃん、ロビンじゃん?」
突然のセリフ、話の脈絡のなさにロビンは首を捻る。
「ええ、それがどうかしたの?」
「どうしたって、比べちまうンだよなァ…昔っから」
フランキーは深刻そうに目を瞑り、コメカミを指で掻いた。


「要は、おれの好みのタイプってレベルが高ェんだよ。とりあえず付き合ってみるんだけど、しばらくすると何か違うなーって……なっちまってさ。おれの中の女子高生のイメージって、高校時代のロビンなんだよな。それが理想。そうすっと、なッかなかロビンみてェな女っていねェんだよ」
フランキーにさりげなく、手放しで褒められて、今度はロビンが赤くなる。
「ロビン越え…せめてロビンと同じくれェのレベルの女が現れるまでは、おれの女遍歴は続くんだ」
こればっかはしゃーねェ、見逃してくれ!
お手上げ!とばかりにハンズアップするフランキーに、ロビンは苦笑する。


「褒めてくれたのは嬉しいけれど、節操無しの言い訳に使ってもらいたくはないわね」
「いやァ、おれの女を見る目を肥やしちまった責任は、ロビンにあるだろ」
フランキーは天板に肘をつき、ずいと身体を乗り出す。
「知らないわよ、そんなの。ただ、フランキーがシスコンなのは、理解したわ」
ロビンは席を立つと、シンクに向かった。


「ロービン」
フランキーはロビンを追いかけて、その後ろ姿に抱き付いた。
細い肩にぐるりと両腕を回し、黒髪に頬をくっつけすりすりする。
「フランキー、くすぐったいわ」
ロビンが言葉通り、くすぐったそうな声を出した。
ロビンの肌はいい匂いがする。
とても甘い、花の香りがする。


「ロビン、大好きだー」
「仕方ないコねェ」
ロビンは後ろに腕を伸ばし、柔らかな水色の髪を撫でてあげた。
「どうしたの?」
「何かおやつ」
「今、ホットケーキ焼いてあげるわ」
「わーい」






フランキー17歳。
ロビン23歳。


再会した当時のフランキーは、平気でロビンに抱きついていた。
別に下心があるわけでもなく、純粋に弟が姉に甘えている、そんなノリだった。
ロビンも特に意識するでもなく、それに何の違和感も覚えず、甘えてくるフランキーを受け止めていた。
ずっと会いたかった相手、ずっと甘えたかった対象、再会するまでは「自分は忘れられているかもしれない」と気を揉んでいたのに昔と変わらずに自分を受け入れてくれる存在。
ふたりは会えないでいた時間を取り戻すかのように、7年前同様に接していた。
本当に、互いに姉であり弟であり、それ以上でもそれ以下でもなかった。



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