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フラロビのSS置き場。
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ペガパンク>フランキー>シーザー?


基本的に贔屓キャラ♂傾向は、マッチョ、デカイ、荒事得意、ガサツ、涙もろい、脳筋バカなわけなんだけど、何かしら高いポテンシャル持ちにしたがるクセがある。
今回のSSだと、理系完璧、大工の腕も超一流。
実際のフランキーもそうなんだろうけれど、最近のアニキは『船大工』というよりも『科学者』にジョブチェンジしている気がするから…ホント、どこに行きたいんだ、アニキ。


+++++++++++




19. 文系壊滅受験生


フランキーが予備校から帰って来ると、ダイニングにはトム・アイスバーグ・ロビンの3人が額を突き合わせて何やら打ち合わせをしていた。
「皆して何してんの?」
怪訝そうなフランキーの声でようやく、3人は顔を上げる。


「あ、フランキー、お帰りなさい」
ロビンが席を立ち、にこやかにフランキーのところにやってきた。
「フランキー、ご飯食べる?」
「おう」
「今、支度するから。その間に制服を脱いで手を洗っていらっしゃい」
ロビンはキッチンへと向かう。
その間も、トムとアイスバーグはレポート用紙にガリガリと書き込みを続けていた。


「で、トムさんたち何してんの?」
海パンにアロハに裸足といういつもの格好がダイニングにやってくると、テーブルの上には食事がほこほこと湯気を上げていた。
トムとアイスバーグの手元にはホットコーヒーが配られている。
フランキーは「うまい」と合いの手を入れつつ、ロビンの料理を噛み締めつつ、先程と同じ問いをまた投げかけてみた。
「ロビンのリフォームに対する要望を細かく訊きながら、おおまかなイメージを起こしてた」
トムがコーヒーを啜りながらフランキーに説明した。
成程、トムの手元には見取り図やら外観のラフが描かれた紙が散らばっている。


「じゃあ、アイスバーグは?」
見るとアイスバーグの手元にも似たような紙が重なっていた。
「ロビンとこのリフォーム、アイスバーグも手伝いたいと言うんでな。新しい母屋の一階の設計を任せた」
「ちょっと待った!ロビンちのリフォームなら、おれもやりたい!手伝いたい!」
フランキーは飯粒を勢いよく飛ばしながら自己主張した。
「おまえは受験生だろう?設計やってる時間があンなら英単語でも覚えてろ」
顔に貼り付いた飯粒をイヤイヤ取り除きながら、アイスバーグが言った。
「なにをう?」
「それにおまえは資格もねェだろうが」


奨学金制度を有効活用しているアイスバーグは、大学に通いながらダブルスクールで建築の専門学校にも通い、昨年は二級建築士の資格試験にも合格していた。
二足の草鞋が履けるだけの頭脳明晰さと、ふたつの学校の授業をしっかりこなすだけの体力と精神力があってこそ。
しかも合間にトムの仕事を手伝っているのだから、アイスバーグのタフさは侮れない。
別に今更建築の勉強などする必要もないのだが、実務経験を積むか学校に通うかをしないと資格が取れない、資格がないと仕事ができないと世の中が言うのだから仕方がない。


フランキーにしても同じこと。
既に知識も腕もあるけれど、資格を取らないと何も始まらないのだ。
「確かに資格はねェけどよ、古書店規模の木造建築なら資格ナシでも設計できるじゃねェか」
「いいよ、てめェは受験勉強しろよ」
相手にしてもらえない。
アイスバーグめ、えっらそおにッ!
フランキーは目を三角にして箸をギリギリと噛む。
トムに「箸が折れるぞ」と注意された。


「でも本当に、私としてもリフォームのお手伝いよりも受験勉強してくれた方が嬉しいわ」
「ロビン…!」
ロビンまでが追い打ちをかける。
味方はしてくれないけれど、ロビンはフランキーにお茶を注いでくれた。
「だって目指している大学、もう少しどころかかなり頑張らないと入れないわよ?」
「ぐ…」
家庭教師がキッパリと言い切ったので、フランキーは二の句が継げない。
そう。現実は厳しいのだ。


資格を取るために行く建築関係の学校なら別に専門学校でもいい。
だが、終生のライバルであるアイスバーグが4大に進んだ以上、負けず嫌いのフランキーとしては自分も4大に行かざるを得ない。
とはいえ、アイスバーグと同じ、首都の名を頂く国内一の国立大学に入学はできない、流石に。
だから正直、無意味な負けず嫌いとしか言いようは無いことは自分でも分かっている。
しかも、これまでまともに受験勉強はしてきておらず、ロビンの居候をもってようやく腰を上げたところなのだ。
目下、無い袖をどうやって振ろうかと試行錯誤中。


「理数系だけならアイスバーグにも引けを取らんくらいにできるのになあ」
トムが言う。
確かにフランキー自身、理数には絶対の自信がある。
特に勉強をするわけでもなく、学校の試験でも予備校の模試でも、コンスタントに9割以上を叩き出すことが出来る。
トムの言う通り、秀才アイスバーグとだっていい勝負ができると思う。
だが問題は。


「フランキーが理数強ェのはおれも認めるよ。だけど、文系がどれも壊滅的じゃねェか。辛うじて赤点になってねェってだけで」
ということなのだ。
元々、大量の活字を読むのは好きじゃないし、語彙力もない。
小難しい話は耳を右から左へ流れて行くし、設問で気持ちや考えを訊かれても「他人のことなんざ知るかァ!」と思う。
「適当なものを選べ」と言われて本気で適当な答えを選んで、後半の文章題を全滅させた過去もある。
現国がこの有様、となると今や使われない古文やら、行ったり来たりしないと読めない漢文やら、母国語でない英語やら、テキストを見るだけで拒否反応が起きてしまう。


「おまえの第一志望は基準点600点以上だろう?どうすンだ?後4カ月ねェぞ?」
故意に目を逸らしている現実をアイスバーグが突き付けてくる。
美味しい食事がだんだんと喉を通りづらくなる。
「だ、だから物理と化学、数学で満点取りゃァ400点だろ?国英地理で合計200点。マークシートだし、何とか…」
フランキーの話を聞いている三人の頭の中に『捕らぬ狸の皮算用』という諺が浮かび上がった。


「やっぱり勉強しなさい、フランキー」
「やーだー!設計やるー!ロビンのリフォーム手伝うー!」
フランキーがダダをこねた。
フランキーがテーブルを掴んでガタガタ言わしたので、食器がガシャガシャと音を立てた。
設計士たちのペン先は踊り、アイスバーグの渾身のデザイン画は台無しになった。
アイスバーグの額に青筋が立つ。


「てンめェ…」
アイスバーグがペンをテーブルにバシリと置き、ゆらりと立ち上がった。
「アウ、何だ?やンのか、アホバーグ!」
負けじと、フランキーも箸をテーブルに叩きつけ、ガタリと立ち上がる。
「もういい加減にしなさい、ふたりとも」
腕を組んだロビンの、低音の制止に男たちは大人しく従い、席に着いた。


「ならば、今度の中間テストの成績如何、ってことにしたらどうかしら」
ロビンが提案した。
「そうだな」
とトムもそれに乗る。
「来月の中間、おまえの言う通り、理数科目で9割5分以上、残り三科目は平均点以上。点数取って来い。その答案持ってきたら、設計をやらしてやろう。母屋の二階、やってみろ」
「ホント、トムさん!」
フランキーの顔がぱあっと明るくなる。


アイスバーグが見るからに「異論アリ!」という顔をした。
「なあに、隣のリフォームは、今引き受けてる仕事が終わってからだ。本格的な着工は年明けになるだろう。だから設計にしたってそんなに急いでるわけでもねェ。フランキーが図面引くにしても勉強の合間の気分転換くれェにノンビリやりゃあいい」
「トムさん、甘いよ…!こいつァ絶対に図面引く合間に勉強するぜ?」
フランキーの性格なんて全てお見通しのアイスバーグの言葉に、トムはたっはっはと笑う。


「だがな、フランキー。設計を引き受けて、おまえが第一希望の大学を落ちた日にゃあ、ロビンがどんだけ申し訳ない気持ちになるか、よーく考えろよ?」
「う……」
いつも笑顔で自分を認めてくれるトムの言葉が一番重たい。
フランキーがロビンを見ると、彼女は「仕方ないわね」と言いたげな、困ったような笑みを浮かべていた。







2時間後、家の中はすっかり静まり返っていた。
家中の灯りは落ちて、遠くからトムの地響きのような鼾が聞こえてくる。
フランキーはダイニングのテーブルでひとり、勉強に励んでいた。
辞典と首っ引きで、英語の参考書に戦いを挑んでいた。


「metamorphosis......abnormality......perversion......どれも意味の字面は一緒じゃねェか」
ただでさえ、母国語のボキャブラリーが貧困なのだ。
辞書で英語の意味を引っ張ったところで脳内ライブラリーに該当する母国語がなかったりして、先が思いやられる。
顎が天板に着地する。
はああ、と大きな溜息をついた。


「精が出るわね、フランキー」
そこに天女の声がした。
「ロビン、寝てなかったのか?」
ロビンはそれには答えず、フランキーの隣に腰を下ろす。
「付き合いましょうか?」
「今日は家庭教師の日じゃねェだろ?」
「いいわよ、そんなの」
ロビンは参考書に手を取ると、パラパラとめくり、パタリと閉じた。


「考えたのだけれど」
ロビンは閉じた参考書をテーブルの向こうに押しやりながら、
「英語はもう一度、中1の基礎からやり直しましょう。この参考書はしばらく使わないで…明日、ちょうどいいドリル、探してくるから」
と言う。
「ちゅういちィ?」
いくらなんでもそれは…とフランキーのプライドが文句をつけた。
が、ロビンは「文句は言わない」と受け付けない。


「ねぇ、フランキー。しっかりとしてない基礎の上に、大きな家って建つかしら?」
ロビンの言いたいことはすぐに分かった。
端的な例えに
「いや…それは…立たねェ…」
とフランキーは首を縦に振り、認める。
「それと一緒よ。フランキーは基礎のないところ、もっと言えば、砂の上に家を建てようとしているの。そういう家は建ったところで使い物にならないでしょう?」
「うん…」
フランキーは己の前途多難さに、はあ、と溜息をついた。


「でもね」
ロビンのやさしい手がフランキーの肩に置かれた。
「さっき、フランキーが自分で言ったように、理数で400点満点とは行かなくても、それに近い数字を叩き出すことは可能だと、私も思う。理数分野は多分…私に教えられることは殆どないわ」
「何言ってんだよ。ロビンにゃァ敵わねェよ」
生涯のテスト、ほぼ満点だったくせに!
ロビンはふるふると首を振る。


「私は問題を解くツールを記憶して、問題に合わせてそれを的確に使用しているだけ。でもフランキーやアイスバーグを見ていると、ツールを記憶しているようには見えないのよね…」
ロビンの指が天板に何やら数式を書いた。
「理屈じゃなくて、直感や智恵でパズルを解いている感じ。数的センスが生まれつきあるのよ」
「そんなもんかねェ」
フランキーはバリバリと頭を掻いた。
「だからもう少しだけ、問題や解法の傾向を整理すれば更に完璧を望めるわ」
ロビンが自分を『いいこいいこ』しながらにっこりと微笑んだので、フランキーも「そんなもんかな」と思って、納得することにした。


「それで…問題の文系なのだけれど…」
ロビンの声に真剣味が混じった。
「文系の勉強、というか受験勉強は英語一本に絞りましょう。英語は個別試験でも必要になってくるし…他は現状維持」
「やっぱ鬼門は英語かァ…」
「大丈夫。フランキーは今まで勉強して来なかっただけで、ポテンシャルは高いんだから」


私も最後まで付き合うから!
とロビンは応援してくれた。
フランキーは「先が長ェ」とうんざりしながらも、「ロビンがそれに付き合ってくれるのなら、それはそれでいいかな」、なんて思ったりして
「今度スーツにメガネで家庭教師やってくんねェ?」
と言ってロビンに
「真面目にやりなさい」
と怒られた。



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