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フラロビのSS置き場。
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青い星、という名前の花。たぶん、スーパー。



アニキがチンピラだった頃のアニメを見る度に、今のアニキの「人として見れない感」が凄い。
リーゼントの頃のアニキのメカ度だって、フラロビ的にはギリギリだった。
ロボ>>>変態な現状には納得がいかない。


++++++++++





2. 年下の男の子


「フランキー?」
多感な年下青年の心中など簡単に見通してしまう、透き通った大きな瞳が覗き込んでくる。
ロビンが腰を屈めると、フランキーの間近で豊満なバストが揺れた。
呆気なく視線誘導される。
おれ、あの客共を責められねェ、とあっさりと結論づくフランキー。
奇妙な親近感すら少し湧いてくる。
とはいえ、そんな結論、面白くとも何ともない。
そんな親近感も湧いたところで欲しくもない。
「……」
「何にもいらないの?」
「……」
…できたらそのおっぱいを少し…


ロビンが腰を伸ばすと、フランキーの鼻先からドラスティックな谷間が消えた。
フランキーは天板に押し付けた片頬を不格好に歪めたまま、視線も誘導されたそのままに不機嫌そうに口を噤み、ロビンの問いかけに答えない。
おっぱじまった脳内妄想を理性で強制終了させつつ、しかつめ顔の裏でその余韻にしばし浸る。
ロビンは呆れたように息をつくとトレーに空いたカップを載せ、また店の奥に戻っていった。
フランキーの目はロビンを追い掛ける。
ロビンが視界から外れる。


下げたカップをシンクに置く音、シンクを流れる水の音、細い指が洗った食器を水切りカゴに並べる音。
見えなくとも、彼女の奏でる音だけで、フランキーにはその姿がありありと想像できる。
再びロビンがフランキーの視野に戻り、ただの景色を情景に変える。
仕事が一段落したロビンは、水仕事で赤くなった指先を気にしながら、片上げ窓の傍に置いた自分専用の小さなソファに腰を下ろし、読みかけの本を取り上げる。
フランキーの視線の先で、愛おしい指先が頁の間から栞を抜いた。


綺麗な女が読書に没頭している。
黒檀の木枠で縁取られた窓からの明かりが、ロビンの身体の上に光の濃淡を落とす。
傍らのオケージョナルテーブルの上に生けられた紫陽花や、彼女の身体を包む上品でシンプルなアンティークソファも、読書をするロビンの美しさを引き立て、その様は一枚の絵画のようで。
軽く伏せられた目にも、きゅっと結ばれた口元にも、頁を捲る仕草にも、しなやかに組まれた長い脚にも知性と官能が同居していて、はっきり言えば


えろい


とフランキーは心底思う。
そういった目でロビンを見ているのは決して自分だけではない、とフランキーは知っている。
今も、本を読む気もコーヒーを飲む気もないにやけた客が二人ばかり、彼の眼前に鎮座して至上の眼福の邪魔をしていた。
店主が無自覚な色気を振り撒いている状態自体はフランキーにとってもウェルカムなので、さておき。
ロビンがここを開店して以来、彼女を視姦する客共をこの店から追い出すことを己の任務だと心に決めている、多感でガラの悪いフランキー青年は、今日もそれを速やかに実行する。


「あァー…」
怒気を含んだ地の底から響くような声を、自慢の肺活量をフルで使って長く押し出した。
生きた心地がしない、とは相席の男達の今の心境そのものだろう。
長い長い威嚇の声が途切れた頃、客二人が恐々と振り返ると、頬をテーブルに押し当てたままのフランキーが三白眼で自分達を見上げていた。
バキンボキンと奇妙な音が断続的に聞こえてくる。
その音源がテーブルの下にある、フランキーの指の関節だと気付いてから、彼らが揃って会計に向かうまで、物の数秒もかからなかった。







「フランキー」
客達を見送った後、表情から営業用スマイルをすっかり消し去ったロビンが、だらしなく突っ伏したままのフランキーの後ろに立った。
「いつも言っていることだけれど。営業妨害を止めてくれないかしら?」
ロビンはフランキーの前髪を摘み、ツンツンと引っ張った。
彼女の口調から察するに、その眉根は顰められているに違いない。
「営業妨害なんてしてるつもりなんかねェよ」
フランキーはのっそりと身体を起こし、ふんぞり返る。
「ただテーブルに寝そべってただけじゃんか。あいつらが勝手に、スーパーなおれを怖がって帰っただけだろ」


そもそも悪い虫を追い払ってやったことでロビンの貞操を守ってあげた頭のあるフランキーは、彼女から怒られるのは心外だ。
彼の中では褒められた上に感謝されて当然のことなのに。
「全く」
ロビンが指を放す際、前髪を一際強くきゅっと引っ張ったので、
「いってェなァ」
と、フランキーは大袈裟に両手で頭を撫でさすってみせた。


「今日は帰りがずいぶんと早いのね」
ロビンが帰った客の席を片付けながら、今だ不貞腐れ続けるフランキーに声をかけた。
白い壁に掛けられた、年号を軽くふたつは乗り越えてきていそうな振り子時計の針は二時にはまだ幾らかある時刻を指している。
「大学、午後休講」
「部活は?」
フランキーは大学で水泳部に所属している。
自画自賛する逆三角形は小中高と続けてきた鍛錬の産物だ。
「プール、今日はメンテだとかで使えねェって。泳げねーんじゃつまんねーからサボってきた」
「で、真っ直ぐ帰ってきたの?」
「遊ぶ予定もなかったし」
「珍しいわね」


声色に、くすり、と笑ったような色が混じった気がしたので見上げると、怒っているとばかり思っていたロビンがにっこりと微笑んでいた。
ロビンに良く似合っている膝丈タイトな黒のワンピースは裾・袖・襟元がクラシカルなレースで縁取られてて、要するにいい感じに透けてて、一見エレガントそこはかとなくエロで、フランキー心をくすぐる逸品。
折角のボディラインを無粋なグレーのエプロンが覆ってはいるけれど、その微妙な見え隠れに趣があると言えばある。
テーブルの上を台布巾で丁寧に拭いている、何気ない仕草にすら何やら妄想を掻き立てられ。
フランキーは何だか見ていられなくなり、いきなり足元のスポーツバッグを掴み上げ、中身をゴソゴソと漁り出した。


「何もなければないで昼間から仲間内で飲んでいるような人が」
「おれだって真面目に勉強しようと思い立つ時だってあんのよ」
「勉強するのなら自分の部屋に戻ってしたら?」
「ここに来ちゃ駄目なのかよ」
フランキーはテキストやらルーズリーフやらペンケースやらをスポーツバッグの中から引っ張り出して、テーブルの上に無造作に放り出した。
テーブル半分を私物に占拠させ、退散する気がまるでない意思表示をする。
「ここの方が落ち着くし。勉強が捗るんだからしょーがねェよ」
「誰が仕様がないのだか」
ウハハハと屈託なく笑うフランキーに、ロビンは苦笑いを隠せない。


そこに一人の男が客として現れた。
が、店の中に水色の髪のアロハ姿を認めた瞬間、「また来ます」と一言、往来へと姿を消した。
『フランキーが居る』、それだけでロビンの周りに虫は寄って来ない。
それをアイスバーグには様々な虫除剤や殺虫剤の商品名でもって揶揄される。
「ンマー…、てめェのせいで益虫も駆除される。それじゃあロビンの為にならんだろう」
耳にタコなアイスバーグの言葉。


そんなこと知るか。
虫除けスプレー、上等じゃねェの。


フランキーはほくそ笑む。
ロビンに益虫が必要なら、スーパーなのが一匹いれば充分だ。
「へ。根性のねェヤツは端からここに来んじゃねーよ」
フランキーは椅子の背凭れを圧し折りそうなくらいに仰け反って、逆さまの入り口にべえっと舌を突き出して見せた。
「本当に仕様のない人ね。毎度のことだけれど、商売にならないわ」
ロビンは肩を竦めた。
「いいじゃん。別に茶店のアガリで飯食ってるわけでもねェんだし」
「それとこれとは話が別でしょ?」


ロビンがトレーを持ち上げ、シンクへと爪先を向けた。
「あ、おれ手伝うよ」
フランキーがパッと立ち上がる。
犬のように自分の元に駆け寄って来るフランキーに思わず、ふふふ、と笑い声が零れた。
「いいわよ。勉強してなさい」
「これ洗えばいいんだろ?」
先程、水仕事を終えたロビンが赤い指先を擦っていたのを見かけたから、肌を傷める作業を代わってあげようと思ったのだ。
「いいのよ」


ロビンは、トレーに手を伸ばす、アロハの胸元をそっと押し返す。
手の平に伝わる、自分とは明らかに異なる、硬い、筋肉の質感。
どきり、とした。
様々な想いや感情が一時に入り乱れ、自分の立ち位置を忘れてしまいそうになる。
ロビンは湧き起こった微かな動揺をフランキーに気付かれないように、細心の注意をもって、いつも通りの明るい笑顔を作った。


今はもう、自分よりも遥か上にあるフランキーの顔を見るためには、首を急角度に折り曲げなくてはならない。
こんなに近距離なら尚更で。
ロビンが見上げると、フランキーも幾らか前屈みになってこちらを見下ろしていた。
淡い空色の瞳の中に明るい星が輝いている。
広くて形のいい額、高い鼻梁、男らしい顎と頬骨。
黙って普通にしていれば、端正な顔立ち、と通るのに。


幼い頃のフランキーも知っているロビンとしては、彼の中に大人びた男の表情を見つける事は感慨深くも複雑な気持ちになる。
フランキーの、半ば開いた唇に目が行きそうになり、慌てて逸らす。
いけない。
どれくらい、彼に注視してしまっていただろう。
ほんの数秒だと思うけれど、不自然に思われなかっただろうか。
ロビンは最近、『出会った頃のままの自分』を振舞えているかどうか、不安になることがあるのだった。



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