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フラロビのSS置き場。
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暗黒女ロビンが妬いたら相当性質が悪いと思う。


フランキーが仲間に加わった後、ロビンはかなりじっくり相手を観察したと思う。
それこそ『吊り橋理論』ではないのかという疑念から始まって、徹底的に自己分析をして、フランキーと出会ってからの逐一をお浚いして、一生懸命推察を繰り返すんだけど答えが出ない。
今まで誰かを好きになったことがないから比較検討も出来ない、エキセントリックレディーなのに、そういった意味で未成熟なロビンちゃん。


++++++++++






24. 高嶺の花の悋気


窓下の水色の頭を見下ろしながら、ロビンは出来るだけ冷静に、心に湧き起こった動揺を自己分析しようとしていた。
けれど思考は堂々巡りして、「何故」「どうして」を繰り返す。
しかもその思考は非常に感情的で、女性的な方向に大きく振れて行く。
これでは建設的で論理的な分析の展開は到底望めない。
「残念だわ…これなら思考停止した方がいい」
今すぐ、答えが欲しいのに。
ロビンの唇が微かに震えた。


「ンマー、フランキーが帰ってきたのか」
背後から声をかけられ、肩がびくっと引き攣った。
気がつくと、アイスバーグが自分が眺めている同じ窓から階下を見下ろしていた。
人の気配には敏い方なのに。
こんなに近づかれても分からないくらい、自分の気が散漫していたことにロビンは驚いた。


「あ…アイスバーグ、早いのね。おはよう」
ロビンはいつも通りの顔を心がけ、にこやかに挨拶をする。
アイスバーグはロビンの笑顔に幾許かのぎこちなさを覚えたが、
「…おはよう、ロビン」
と、いつも通りの挨拶を返した。


「フランキーが車で送られて来たのがここから見えて……彼、出かけてたの?」
さりげなく、取り立てて問題でもない調子で話題を振る。
「ああ、ちょっと。野暮用だって言っていたが」
アイスバーグも取り立てて問題でもない調子で返事をした。
今日の天気の話をしているのと何ら変わらない。
もしもそれと何かが変わっていると感じるのだとしたら、それは自分の気の持ちようであることは、ロビンには良く分かっていた。


「彼女のところに?フランキーの彼女って高校生じゃなかったかしら」
「ンマー……そうだったかな」
話の筋が変な方向に行かないように、とワザとはぐらかしてみた。
「あの女の人、私とあまり年齢変わらないように見えたけれど」
「アイツはあんなで人懐っこいからな、遊んでくれる相手には事欠かねェみてェだ」
今のはあまりフォローになってなかったかも、アイスバーグは慎重に自分の言葉を選ぶことにする。


「…そう言えば本人も言ってたわ。おれはモテるんだ、って…。で?」
「で?って…?」
「何しに?いつから出てたのかしら?」
「さァ…おれが寝てる間に出てったみてェだしな…」
『ロビンに見つからないように、もっと早くに戻ってくりゃいいものを』
やっぱりアイツは馬鹿だな、と腹で思う。


ロビンの黒い瞳がじっとアイスバーグの顔を視ている。
見る、でも、観る、でもなく視られている。
じっくりと、探られている。
流石のアイスバーグも、相手がロビンでは誤魔化しが幾らも効かない。
『何でおれがこんな目に?フランキー、てめェ、早く上がって来い!』
アイスバーグの念波も虚しく、ギャラリーに観察されていることを知らないフランキーはどこへやらと通りを歩いていく。
「コンビニにでも行くのかしら」
ロビンの声はヒヤリとした冷気を纏っているように感じられた。


「それで何して遊んで来たのかしらね?」
訊くだけ野暮かしら?
アイスバーグは次第に詰問されている心地になってきた。
何故おれが?、との思いが否めない。
「さ、さァ…おれはフランキーの交友関係に詳しいわけじゃねェから」
「さっき、濃いキスしてたけど」
「さ……」


「アイスバーグ」


ロビンの全身から真っ黒いオーラが噴き出した、ようにアイスバーグは感じた。
目も合わしていられない。
「あれはフランキーのセフレだ」
即効で白状する。
怖ェ。怖すぎる。
アイスバーグの全身からは冷や汗が垂れ落ちた。


ロビンは沈黙した。
以前フランキーと彼女話をして、彼が性に対して無節操であることは理解していたつもりではいたが、高校生かつ受験生の立場でそこまで奔放だとは考えが及ばなかった。
セフレ、ね。
抱かせてくれるなら、誰でもいいの?
ふう、と溜息が出てしまう。


「昨日はヤりたくなったのが遅くなってからだから彼女が呼び出せねェ、ってさ」
一度白状を強いられたアイスバーグは、諦めて包み隠さず言うことにした。
もうこうなってしまえば、アイスバーグがどんな小手先の技を繰り出したところで結果は同じだ。
余計な言い訳や嘘を重ねるだけ、ダメージは深くなるに違いない。
「何て節操無しな…」
ロビンは呆れ声を隠そうともしない。


「まァ…そう言ってやるな。ここのところ勉強勉強で遊んでるヒマもなかったんだ」
昨夜、フランキーに悩みを相談され、その原因が目の前の女性にあることを知っているアイスバーグは、「せめて」と義弟を庇いに回る。
罪悪感を覚えている彼女に、更に素行で悪評価がついてしまったとしたら、気の毒さは目も当てられない。
自業自得な部分があるのだとしても、男同士、分からないでもないのだ。


「溜めに溜め込んで、トムズから犯罪者を出すわけにもいかんしな。溜まれば外に行くしかねェんだ。アイツの性欲の面倒をみることはロビンだって出来ないんだし」
ロビンの髪が一筋揺れた。
アイスバーグの台詞を受けて、つい口から飛び出そうになった言葉を、唇を噛み締め寸でのところで押し留めた。
その言葉を厳重に、心の奥底に仕舞い込む。
自分の愚かしさにも苛々が募る。
そして、アイスバーグの最後のフォローも良くなかった。
「それにアイツにとっちゃセックスなんてなァ、スポーツみてェなもンだから」


「そこに深い想いは介在しない、ってことね」
「ンマー、ロビンには…アレが運動って、理解出来ないかも知れんが」
アイスバーグとしては、だから大したことじゃないんだよ、と強調したかったのだが。
ロビンにしてみたら少しもフォローになっていなかった。
見る見る間にロビンの顔が曇っていく。
その様子にアイスバーグは、自らのフォローの失敗を確信した。







「おはよう、早ェんだな、ふたりとも」
そこへようやくフランキーがふらりと帰って来た。
ロビンの予想通り、フランキーの手首にはコンビニのビニル袋がぶら下がっている。
いつもなら寝ている筈の時間にロビンと会っても怪しまれないように、早く目が覚めたからコンビニで買い物をして来たフリをしよう、の浅知恵が悲しいくらいに見て取れた。
即座にロビンの頭には『アリバイ作り』の文字が浮かび、とアイスバーグにはフランキーの『アリバイ』が呆気なく看破されたのが見て取れた。


「顔つき合わせて何の話?」
それに気がつかない本人は呑気なものだ。
何食わぬその顔が、やたらとすっきりしているのも、ロビンのイライラを増長させる。
黙りこくるロビンの代わりに、
「ンマー…、おまえの性へのスタンスについて、ちょっとな」
とアイスバーグが返事をした。


「何でそんな朝の爽やかさにそぐわねェ話を…」
と言いかけて、ロビンの傍らの窓から見える景色に思い当たり、フランキーから軽く血の気が引く。
ロビンの瞳には呆れを通り越した、一種の軽蔑を含んだ色が浮かんでいた。
ロビンの後ろで、アイスバーグの片手が「すまん」の形を取る。
フランキーの様子から、鬱屈していた精力を発散できて、悩んでた心も上向きになったんだな、と感じられていただけに、この事態はかなり頂けない。
何にしても、フランキーの詰めの甘さが招いた結果だとは思うけれど。


「あ、あのさ、ロビン…」
「アイスバーグ、話の続きだけれど、やはり私にはセックスがスポーツの感覚というのは理解出来ないわ」
オロオロと、それはもう見るからにオロオロと、いつもケンカばかりのアイスバーグが『フランキー可哀想』と思ってしまうくらいにオロオロとしているフランキーを、ロビンは軽く無視した。
無表情のロビン、というのは怒っている率の高いロビンである。
小学生の頃、フランキーが学んだことだ。
そしてそれが今のロビンで、しかも、今まで見たことがないくらいに無表情が怖い。


「そ、そうか」
アイスバーグはそれしか言えない。
アイスバーグにしても、怒っているロビンが怖い。
例え怒られる対象が自分ではないのだとしても、この無感情な低音で滔滔と責められるのを聞くのはかなり堪える。
しかも、仮に舌戦になったとして、才女であるが故の完璧な理論武装を、どう考えてもあのフランキーが論破出来るとは思えない。
腕力に訴えることが出来ない以上、フランキーに勝ち目はない。
もっとも最初から勝ち目ゼロのシチュエーションなのだが。


「理解は出来ないけれど、そういう『人種』が存在することは知っていたわ。そういう人は私のスタンスとは相容れないということも、私は学習している。今の私はもう……そういう人を相手には絶対に選ぶ気はない」
ロビンが自嘲する。
「私は……次にセックスする人は、私だけを見てくれる人がいいもの」
ロビンの口から『次に』とか『セックスする人』とか、気になる単語が飛び出して、フランキーの動揺に狼狽が上乗せされていく。


「ちょっと、ロビン」
フランキーが近づくと、ロビンは同じだけ身を引いた。
その露骨な嫌がり方にフランキーが固まる。
動揺と狼狽の上に更に恐慌が加わって、パニックが起きた。
アイスバーグはもう、義弟が気の毒過ぎて見ていられない。
と、少し何やらを思いついた顔をしているロビンが、逆にそろそろとフランキーににじり寄った。
顔を近づけてフランキーの胸元や首元をふんふんと嗅ぐ。
アイスバーグはそんなロビンを見て、『見慣れぬ物に警戒心を顕わにした猫みてェだな』と思った。


「ろ、ロビン…」
近寄るロビンに態度軟化を期待した、フランキーの希望も束の間、一頻り嗅ぐとロビンはさっきと同じくらい距離を取って
「この匂い、好きじゃない…」
ポツリと呟いた。
「私の好きなフランキーの匂いじゃないわ。知らないひとの匂い……」
「え?」


つられてフランキーは自分の着ているシャツを引っ張って嗅いでみる。
そこには残っていたのは、一夜を過ごした女の残り香。
さっきキスする時だ。
抱き合ったのが不味かったに違いない。
それどころかきっと、ロビンにはシャンプーやボディソープの匂いも、ここの物とは違うことが気付かれている。
耳の中でザザーッと音がする。
生まれて初めて聞く音だが、これが名立たる『血の気の引く音』であることは直感で分かった。


「お…お…おれっ!シャワー浴びてくるっ!」
フランキーはコンビニ袋をガサガサ言わせながら、風呂場へとすっ飛んで行った。
初めて勃発した、フランキーとロビンの『姉弟ケンカ』らしきものに図らずも巻き込まれてしまったアイスバーグは「やれやれ」といった気分だった。
もっとも、フランキーがロビンと同じ土俵に乗せてもらっているかは謎なので、厳密な意味で『ケンカ』と呼べるのかは疑問だ。


アイスバーグはフランキーの背中に
「間抜けだな…」
と感想をこぼした。
ロビンは硬い表情で何やらボソボソ呟いて、ダイニングテーブルの片付けに向かう。


「間抜けなのは、私よ」
アイスバーグにはそうロビンが呟いたような気がした。



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