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フラロビのSS置き場。
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普通に成長していたらどんなルックスの34歳だったんだろう…。


ナイフの一本も持ってなかったと思う、鋭利な刃物がないなら何の道具を使って自分の手足を切断したものか。
いきなりあの手足をくっつけたわけじゃないだろう、急ごしらえの仮の手足から始まって、試行錯誤を繰り返し、何度も手足を取り外したんだと思う。
何年もかけてあの珍プレーな体型になるまで、ずっと廃船にいたんだろうか?


++++++++++






31. 魅力と努力で名誉挽回(後編)


おれはロビンに綺麗に笑っていてもらいたいのに。
そのためにロビンを、笑顔を取り上げる悪いヤツから守ってやるって決めているのに。
それなのに、おれがロビンを無理に笑わせるような真似してどうする?
おれだけがロビンの家族だってのに。
ロビンはずっと言ってるのに。
おれしか頼れるヤツがいないって。


年上でも、物凄く賢くても、人間関係についてのロビンの経験は物凄く浅く、狭い。
家族にも友達にも恵まれなかったロビンは、きっとこれからひとつひとつ、感情の発露を覚えていくのだろう。
ただ笑顔を緩衝材として使うことしか知らなかったロビンが、フランキーと出会って心の底から笑うことを知ったように。


頭に来ることがあれば怒り、気に入らないことがあれば拗ね、時には怒鳴ったっていい。
今までは我慢して呑みこむだけだった悲しみも寂しさも、涙で洗い流せばいい。
甘えたければ、肩を貸してと言えばいい。
幾らだって貸してやる。
そうやってロビンを救えるのは、
おれだけしか出来ないことだ。


「い、いいよ。謝らなくて。悪いのはおれなんだ。ごめんな、ロビン。不愉快な思いをさせて」
ロビンと仲直りできて嬉しいのと、ロビンが不憫になってしまって悲しいのとで、涙腺が決壊寸前だった。
「ロビンの言う通り、全部、節操無しが良くないんだ。それもやめる」
「フランキー、それは」
鼻をぐじゅぐじゅ鳴らしながら、フランキーは大きな手の平でロビンを制した。


「ロビンは…他にいないもんな。苛々をぶつけられるヤツなんて」
フランキーは泣きそうになるのを堪えて、頑張って明るく笑う。
「おれならいいよ、幾らでも。幾らでも、ぶつけてくれても。今回もこれくらい、ホント、全然平気だったから」
強がるフランキーの笑顔に、ロビンの胸の中が甘く締め付けられた。


何言ってるの。
私がちょっと口を利かなかっただけで
しゅんとしていたくせに。
ずうっと泣きそうな顔をしていたくせに。


今だって、ほら。
空色の雫がこぼれてる。
何て綺麗。
あなたの涙に、私はどうしようもなく魅かれてしまう。


「さ、学校に行かなくちゃな」
ホッとしたら泣いている自分が途端に恥ずかしくなった。
フランキーはちゃっちゃと靴紐を結ぶと、ロビンから顔を背け、
「ちっとも泣いてねェから、大丈夫」
と立ち上がろうとした。


「フランキー」
すると、ロビンは両手を伸ばし、フランキーの頭を抱き締めた。
ぎゅうっと胸に抱え込み、自分の胸元で、フランキーの涙を拭いてあげる。
ロビンの思いがけない行動に、フランキーの膝から力が抜ける。
ぺたり、と玄関の三和土に尻がつき、大きな身体はそのまま、ロビンの胸に預けられた。


フランキーの顔面半分がロビンの胸の谷間に沈み、高い鼻筋も乳房にめり込んだ。
突然に降って湧いた幸運な出来事に、フランキーは勿論身動きをしない。
柔らかな肉に埋もれて次第に呼吸も困難になって来た気もするが、こんな幸せな窒息死ならそれもいい。
腹上死と並ぶ、男の本望ってヤツだろう。


「ロビン……せっかく着替えてきたのに。汚れちまうよ、また」
「フランキーの涙を汚ないだなんて思ったことないわ」
「鼻水も、ヨダレもつくぞ?」
「同じよ」


フランキーは瞳を閉じて、大きく息を吸い込んだ。
ロビンの甘い、花のような体臭がフランキーの鼻腔を満たす。
ロビンのおっぱいは温かくて柔らかくて幸せだった。
学校何ソレ?
このまま寝ちまおうかなー、寝不足だしー。


フランキーが幸福感に浸っていると、微かな声が耳に届いた。
「フランキー…お願い…私を嫌いにならないでね」
ロビンの言葉にハッとする。
気付くと、自分を抱き締める細い身体がカタカタと震えていた。


ああ。
喧嘩して、相手と疎遠になってしまった状態を「怖い」と思っていたのは自分だけじゃなかったんだ、とフランキーは思った。
ロビンも、昨日一日、悩んでくれていたんだ。
その事実にフランキーの心が高揚する。


「私は…今のままのフランキーが好きだから。いいの、自然にしていてね」
トクトクトクトク、ロビンの胸の奥から少し早駆けの心臓の音が聞こえてくる。
ロビンが生きている音がする。
ロビンは、アイスバーグの言うように生身の女で。
サンジ達の言う通り、身体が『女』だと判断すれば、それに従うことは間違いじゃない。
ロビンに抱かれて、下腹部に熱がじわじわ集まり始める。
けれどもう、フランキーの心には罪悪感は湧かない。


本当に、自然にしてていいんだな?
そんなこと言ったら、気兼ねなくロビンで抜くぞ?
無節操を止める分、それッくらい大目に見てくれよな?
でも、大丈夫だから。
おれは変わらない。
おれはずっと、ロビンの傍にいるから。


「だから、嫌いにならないでね」
ロビンは消え入りそうな声で繰り返し言った。
泣きやんだフランキーが屈託なく笑う。
今や幸せの絶頂にいるフランキーには怖いモノなんかない。
「おれがロビンを嫌いになることなんて、絶対ェないから。心配すんなよ」
「あり…がと…」
ロビンはフランキーに気付かれないように苦しい溜息を小出しにした。


本当に、嫌いにならない?
私があなたの理想とかけ離れた女でも。
私がどうしようもなく汚れた女でも。
私の過去を聞いて、離れて行かない?
ロビンには若い彼の言葉を鵜呑みにする勇気はなかった。


ロビンの手がフランキーの額の毛をそうっと掻き上げる。
ロビンの濡れた黒髪がフランキーの顔にかかり、その冷たさに思わず目を瞑る。
すると、水色の前髪の生え際に温かくて、とても柔らかいものが触れた。
おっぱいとはまた違う、柔らかい何か。
フランキーが、触れたそれがロビンの唇だと気付くのには、かなり時間がかかった。
そして、そうと気がついた時には、それは離れてしまっていた。


ぽかん、とした顔で見つめて返してくるフランキーに、ロビンは
「ふふ、八つ当たりしたお詫びね」
と笑った。
「う、うん…」
「さあ、学校に行かなくちゃ」と促すと、フランキーは幸せな感触の残る場所に手を当てて、フラフラと立ち上がった。
「今日は早く帰って来てね。御馳走をたくさん用意しておくから」
「うん」
「行ってらっしゃい」
「行ってきます…」


ふわふわと歩くフランキーを、ロビンは笑顔で送り出す。
玄関の内側にひとりだけになると、自分の唇をそっと撫でた。
「ちょっとだけ…気が晴れた…かしら?」
昨日のフランキーのキスシーンを思い出すとまだ少し、胸が焼ける。
額とはいえ、フランキーに唇で触れたことで、ロビンの溜飲は幾らか下りた。
そんなことで一喜一憂する自分が滑稽で、ロビンは小さく苦笑した。
「やっぱり私…相当間抜けになったみたいだわ」


フランキーは弟で友達。
だから大切なひと。
それらとは違う何かが、ロビンの胸に新たに芽生え始めた。
その何かの名前から、ロビンはあえて目を逸らした。
その名前は知らないままの方がいいと、本能が訴えていた。







地面がやたら柔らかく感じる。
雲を踏んで歩いているような感じがする。
勝手に緩んでしまう顔面を手で押さえ、自転車が置いてある工場まで蛇行しながら進む。
ロビンの胸にぎゅってしてもらった。
ロビンにでこちゅーしてもらった。
朝起きて来た時の悲愴感など、今のフランキーのどこにも見つけられない。


キスなんて、今までに幾らでもしてきたのに。
ずっと深く、ずっと際どい場所にだって、他のコにキスされているし、キスしている。
たった一度の、それもおでこにほんの軽く触れただけのキスに何でこんなに舞い上がっているのか、自分でもよく分からない。
よく分からないが、とにかく気分がいい。
とにかく今週のおれはスーパーだ。
「よおおっしゃあああ!」
と大声で叫んで、工場で汗を流すアイスバーグに
「うるせェ!」
と怒られた。


どうしてこんなにもロビンが自分を必要としてくれるのか、フランキーには理解出来ない。
確かに自分にとってロビンは必要だけれども。
でも、ロビンと自分とは雲泥の差があると思う。
腕っ節だけで何の取り柄もない男の、一体何が必要なんだろう。
やはり自分が、唯一無二の『弟』だから、何だろうか?







「ンマー、全くニヤけた顔しやがって…」
珍しくのんびりと自転車を走らせていくフランキーの背中に、アイスバーグは安堵の息をつく。
「どうやら仲直りできたみてェだな」
トムがそう言って笑うので、アイスバーグも
「全く世話が焼ける」
と苦笑した。


アイスバーグが見上げると、ロビンが物干し台で洗濯物を干しているのが見えた。
味噌汁爆弾を喰らった洗濯物が洗い終わったのだろう。
ロビンは機嫌良さそうに鼻歌を歌っている。
「ロビンとフランキー…相互依存の関係、ってことか」
フランキーはともかく、ロビンが元気になって良かった。
あのふたりは本当に相性がいいんだな、とアイスバーグは思う。


聡明な彼をもってしても、ふたりの間に恋愛感情が芽生える可能性については、この段階では思い至らなかった。



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