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フラロビのSS置き場。
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自分を改造する男だからMかもだけど、対象に自分も含めるSかもしれない。


私は自他共に認めるドSで、好きなCPだからこそSS内で試練を与えまくることで定評がある(?)。
フランキーはSかMかで言えばS、なのに麦わらの一味においては女性陣にMの扱いを受けることが多い、ロビンとのパワーバランスもフランキーはMに甘んじてそう。
ロビンは誰に対してもS、でも対フランキーinベッドではM、女王様が自分にだけ見せる甘さというのは、男の自尊心をくすぐるよね。


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35. 梅桃桜


梅の香が春の訪れを告げる。
3月に入ったばかりで、空気には然程うららかさを感じないが、道行く人々の服装に心持ち春の色が混じり出したような気がする、そんな時節。


ロビンはひとり、電車に揺られていた。
真っ白なコートに身を包み、きちっと足を揃え、文庫を手にしているロビンはさながら鶴が読書をしているかのよう。
周辺の男性乗客がチラチラと視線を送ってくるが、彼女は全く頓着ない。
カタタン、カタタン、と電車が揺れる度に黒髪も揺れる。


間もなく、古書店に工事が入る。
難儀した大量の古書の仕分け作業も、クローバーの遺品整理も終わり、日中に空き時間が出来るようになったロビンは時折、新しい家に入れるカーテンやリネン、生活雑貨などを探しに出かけるようになった。
家具に関しては基本的に、クローバーが使っていたものを再利用するつもりでいる。
家具だけでなく、建具や柱・木材等、使い回せるものは使って欲しいとトムにお願いしてある。
クローバーの遺したもの、クローバーの古書店を感じられるように、それがロビンの願いだった。


クローバーの使っていた調度品はどれも、古民具・時代家具といったカテゴリに入るもので、落ち着いていて趣味がいい。
アイスバーグやフランキーが率先して、家具や建具のリフォームをしてくれている。
フランキーはたまに薄く鉋を引き直して見違えるように生まれ変わった家具の、綺麗に浮かび上がった木目を褒めてもらいに来たりする。
ロビンはふと、得意気に頬を光らせているフランキーを思い出して、緩んでしまう口元を読んでいた本で隠した。


フランキーを思うと、ロビンの胸の中は暖かくなる。
それはもうずっと昔からなのだけれど、最近ではその暖かさに、甘酸っぱいような、きゅうと締めつけられるような疼きも混じる。
ロビンは流れる車窓に目を遣った。
青い空に金色の太陽。
空気はまだ温まっていなくても、陽光はもう春のものだ。


フランキーは本命の入試も終え、後は結果を待つばかり。
併願した私立大学に合格することが出来たため、とりあえずは浪人生活の未来から逃れることが出来た。
だから第一希望の試験にもゆとりを持って臨めたと思う。
奨学金制度を活用できたアイスバーグとは違い、成績も素行も良くない自覚のあるフランキーは、トムの経済的負担を軽減するために私立よりは国立と祈っているが、ここまで来たら運は天に任せるしかない。


トムは「金のことは気にするな」と言っている。
アイスバーグには「だったら真面目に高校生やりゃあ良かったんだ」と言われた。
ロビンは精一杯やることはやったのだから、桜が咲けば良いと思う。


4月になれば、あのフランキーも大学生になる。
ひとつ、大人になる。
「桃栗三年、柿八年、柚子は九年でなりかかり、梅はすいすい十三年、梨の大馬鹿十八年……人間は……もっと時間がかかるわよね……」
何事も、すぐには熟成しない。
また、胸の中が甘く疼く。
ロビンは詰まる息を小さく吐き出した。


私は24年。
この年になってもまだ、自分の心が分からない。







ロビンは商店街最寄りの駅で降りた。
そこそこ多い人波に紛れ、改札口に向かう。
何気なく、視線を電車の進行方向へ向けた先で、昇降口から駅員に引っ張り出される緑色の短髪の青年を見つけた。
「ゾロ!」
ロビンは懐かしい顔を見つけて思わず、小走りで向かう。


フランキーに負けず劣らずの悪い目付きが振り返り、自分の名前を呼んだ相手を探した。
四方八方に、気の網が張り巡らされる。
そして、相手がロビンだと分かると、ゾロの放つ殺気の糸が緩み、目力も緩んだ。
「何だ、ロビンか。久し振り」
「誰彼構わず、そうやって殺気を放つの良くないわよ?」
「常に緊張感を持つことが大事なんだよ」
ゾロはニヤリと口角を持ち上げた。


「久し振りね。帰って来たの?卒業式は…まだよね?」
ロビンの問いに
「家に帰って来るつもりはなかったんだけどよ…学校に行く途中、道がなくなって…」
と真剣に不思議そうな顔で答える。
「それで迷子になって、駅員さんに強制的に自宅最寄り駅で下ろされたのね」
ロビンは別段、驚かない。


背中に竹刀を三本担ぐ、物騒極まりない青年は、フランキーの幼馴染で昔ロビンとも遊んだ仲だ。
今はスポーツ推薦で地方の剣道強豪校に通っている。
大学もそのまま持ち上がりなので、受験戦争も無縁でひたすら剣豪への道を邁進している剣道馬鹿だ。


問題は、彼が奇跡的な方向音痴だということ。
ロビンが過ごした夏休み、あのたった1ヶ月の間に何度、商店街あげての捜索活動が行われたことだろう。
初めの頃は心底心配して必死にゾロを探していたロビンも、そのうちに慣れた。
一日に一度は町の広報スピーカーから、ゾロ迷子のお知らせが流れていた。


行動範囲が狭い、小学生のうちはまだ良かった。
中学高校と進むにつれて、ゾロの捜索は困難となり始め、通学・学校内では監視がつき、帰省にあたっては両親または教師の送り迎えが徹底された。
だが、こうして包囲網を突破してしまうことがある。
駅員にとっても、このファンタジスタを最寄り駅まで連行することは、特に珍しいことでもない。


「ゾロ、今日は家に帰るんでしょ?」
「ああ。ここまで来たらなァ」
仕方ねェよな、と頭を掻く。
「一緒に帰ってあげるわ」
というロビンの申し出に、ゾロは
「いいよ」
と即答し、それにロビンは
「駄目よ」
とゾロが鼻白む勢いで言い放った。


「だってあなた、絶対に迷子になるじゃない。ここで出会った私には、あなたを無事に家まで送り届ける責任があるわ」
「わ、分かったよ…」
「私が見失ったら町内皆の迷惑になるのだから」
甚く生真面目なロビンが、一度言い出したら聞かないことをゾロも知っている。
ゾロもフランキー同様、脳筋なので舌戦になったら絶対に勝ち目がない。


ゾロが足を一歩踏み出す。
「改札はそっちじゃないわ」
即座にロビンの指摘が入る。
「ゾロ。あなたには帰巣本能がないのね。このままだとあなたいつか、本当に帰って来れなくなる日が来るわ」
「それで駄目になるのなら、おれはそこまでの男ってことだ」
「別に男気を語る話ではないわね」
ロビンは、今度は逆に歩き出そうとするゾロのシャツを握った。
ゾロの身体が、くん、と後ろに引っ張られる。


「何でシャツ摘むんだよ」
何だかちょっと恥ずかしいので止めて欲しいゾロだったが、
「捕まえてないとどこに行くか知れないから」
と、ロビンは放してくれそうにない。
「犬のリードかよ」
「そのようなものね」
と遠慮がない。


ゾロは諦めて、摘まれつつ歩きながら世間話をする。
このふたりの共通点といえば
「フランキーはどうしてる?受験終わった?」
フランキーの話で。
「試験は一応、全部済んだけど…後は結果待ち」
「受験組は大変だなァ…」
「スポーツ特待生はその点いいわね。この間の大会も優勝したのよね?おめでとう、タイトル総舐めですって?」
「まあな」
「フランキーも何とか大学生にはなれそう。肩の荷が下りたわ」


「ああ、噂をすれば、ってヤツだな」
ゾロの指差す先、向かいのホームの端のベンチに腰かけている水色の髪がいた。
不意に傍らの女が放つ気の色が変化したことに、ゾロは気がついた。


TPOに関わらず、ゾロは常に周辺の気配を読むことを怠らない。
別に、対人関係を潤滑にするために空気を読んでいるわけでも、相手に気配りをしているわけでもない。
敵を探しているだけだ。
どうしようもないと言えばどうしようもない動機。
長年の修行の成果とでもいうのか、周囲の呼吸を読む鍛錬の成果とでもいうのか、職業病とでもいうのか。
感情の変化を知ることはゾロの特殊能力みたいなものだった。
目だけをロビンに向けると、先程まではなかった瞳の輝きと、上気した頬の色を確認することが出来た。


フランキーはゾロとロビンの存在に気がつかず、上の空で、屋根の上を歩き回る鳩の数を数えている。
手を振ろうとしたのだろう、ロビンの手が胸元まで上がった。
けれど、その手はすぐに下ろされる。
どこからかやってきた一人の女子高生がフランキーの傍らに腰を下ろしたからだ。
売店で買い込んできただろう何かをフランキーに手渡し、ふたりは並んで食べ始めた。


ロビンの目の輝きが消え、顔色も元通り、いや更に白くなったことを、ゾロは観察する。
「彼女が一緒ね。お邪魔したら悪いわ」
さあ行きましょ。
ロビンはホーム向こうのカップルに踵を返すと、ゾロを促し歩き出した。
深い人物観察が可能なゾロだったが、その感情の変化が何故起きたのかという心理にはまるで興味がなかった。
男女の機微に関しては全くの範疇外。
事象だけを捉え、ゾロの洞察は終わり、ロビンの声に「ああ」とだけ答えた。


「フランキーは相変わらずみてェだな」
「最近ではずい分と落ち着いたみたいよ、あれでも」
ロビンは苦笑する。
ロビンとゾロはカモの行列のようにして改札を抜ける。
「古書店の工事はもう始まったのか?」
「もうすぐ。解体作業が来週の…」


ロビンの言葉が途中で切れた。
怪訝に思ったゾロがロビンを振り返ると、彼女の黒い瞳が前方の誰かを見据えていた。
ゾロは、ロビンのピンと張りつめた緊張感に気付き、彼女の視線の向く方角に、鋭い目を投げる。
「あららぁ…今、帰り?ニコ・ロビン」
改札を出て少し行った先、そこにノッポの男が長い脚を持て余し気味に自転車に跨っていて、間延びした声でロビンに話しかけてきた。


ゾロの全身に、びりり、と警戒を知らせるシグナルが走る。
脊髄反射的にロビンの前に立ち、男と対峙する。
無意識に、右手はいつでも竹刀を引き抜ける位置に置いた。
「見慣れねェツラだな…誰だ、てめェ…」
「そういうそっちこそ、商店街で見たことない顔だなァ」
ノッポはロビンの傍で白眼視するゾロを不躾に眺め、
「いつも連れてる彼と違うじゃない?」
と、ロビンに軽い調子で言う。


「彼はこの商店街の家の子よ?刀剣専門の骨董店の。少し離れた高校に通っていて、下宿先から帰省してきたの」
ロビンはどこか硬い口調でゾロをノッポに紹介し、続いて
「ゾロ、彼はクザン。氷屋さんのアルバイト」
と、ゾロに紹介した。


「氷屋ァ…?」
ゾロは険しい皺を目元に刻んだ。
こいつが一介のアルバイターってタマかよ?
確かに一見、相対する者の気を殺ぐような態度だが、目は相手の力量を推し量り、だらけているようで隙がない。
何より、相手を凍て尽かせるような覇気を持っている。


じり、とゾロの爪先が間合いを探る。
コイツは、強ェ。
こめかみから汗が流れた。
迷子常習者の剣士は、会って数秒のだらけ男を敵認定した。



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