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フラロビのSS置き場。
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端的に言えば、大事なモノをひとつしか持てない不器用な男なんだよ。


ゾロは、恋愛スイッチが常にオフ状態で、今はただ強くなることしか頭になく、恋愛要素が入り込む余地がないタイプ、しかも己に厳しく非常にストイックだから、大剣豪になる研鑽を積む日常には恋愛は邪魔くらいに思ってそう、若いしね。
ゾロの日常の描写でも鍛錬してるか、寝ているか、要するに全精力を鍛錬に注ぎ込んで睡眠で体力回復を繰り返しているわけだから、女にうつつを抜かしているヒマは彼にとって大いなる無駄だろう。
己の強さを自ら認めることが出来て心に余裕が生まれた時、ようやくそっちに目が向くと思う。


++++++++++





37. 海賊王になる少年(自称)


「おまえ、もう彼女といいのかよ。デートじゃなかったのか?」
「特に一緒にいる気分でもなかったンで……駅で別れた」
「何だそりゃ」
「つか、何で知ってンの?」
「いや、さっきホームで見かけたから。なァ、ロビン?」
「ええ」


ロビンは気分を良くしていた。
ゾロの言う通り、フランキーはあのまま、あの女の子とデートをするものだと思っていたのに。
デートしないで帰って来た事実と、クザンに対して盾になってくれた事実。
そしてフランキーの話しぶりから、今の彼女にはあまり気がない様子なのが見て取れて。
そう、今の彼女はそんなに好きじゃないの。だったら…
無理して付き合う必要なんてないのに、と考えて小さく頭を振った。


「ふうん…」
フランキーは、何だかいつもよりも上機嫌に見えるロビンを横目に見て、ちょっと頬を膨らませた。
さっきから気になっていた、ロビンとゾロのやたら近い距離感。
ようく見たら、ロビンの白い手がゾロを掴まえていて、だから寄り添うように歩いていたのかと理解する。
「で?何でロビン、ゾロのシャツ摘んでンの?」
出たのは低くて不機嫌そうな声。


「だってゾロが迷子になったら、私の保護者責任になってしまうもの」
「ああ…なるほど」
「なるほどってなんだよ」
なるほど、と言いつつも、口が尖ってしまう。
自分とはない物理的な接触を見るにつけ無性に妬けてきて、ゾロをブン殴りたい気持ちになってくる。


ああ、そうだ。
7年前もそうだった。
ゾロやウソップがロビンと手を繋ぐと正体不明の不機嫌が襲ってきたモンだった。


高校生になっても変わらないおれ、というものを再発見しつつも、その不機嫌は昔よりも具体性を持ち、やたら度合いが強いように思われる。
ゾロはフランキーよりは背は低いが平均よりはデカい部類で、しかも筋トレ馬鹿なので、ある意味、『筋肉の張り方』に関して言えば向こうに一日の長があると認めざるを得ない。
要するにクザンなんぞよりも、ゾロの方がロビンと並んでいて見目がいい、ということだ。


19歳と34歳を比べれば、そりゃあ34歳の見た目の方が上に見えるのは当然だが、同じ年齢で括れば、高3フランキーよりも高3ゾロの方が老けて見える(と思うけどどうだろう)。
ゾロとロビンは、傍で見ていてもそんなに年齢差を感じない。
そんなふたりが並んで、ロビンが手をゾロの腰の辺りにかけ、一歩下がって歩いている姿を見ていると、フランキーの頭が茹ってくる。


おれ、ロビンにそんな風にしてもらって歩いたことねェぞ。
ちょっとかなりゾロが羨ましい。
何より、ロビンにとっての『手のかかる弟ポジ』をゾロに取られてしまっている現状が許せない。
ゾロに
「どうしたフランキー。腹でも痛ェのか」
と言われ、誰のせいで、とまたムカついた。







三人で並んで歩いているうちに、児童公園に差し掛かった。
都内の住宅地内にある公園にしては割と広くて、木登りができるくらい大きな木が何本も枝を張っている。
ブランコに雲梯に砂場に鉄棒。
シーソーに回転遊具に、滑り台付き山型遊具。
昔、ロビンがフランキー達とよく遊んだ公園。


ロビンは懐かしく思い、ふたりに
「少し寄って行かない?」
と誘ってみた。
「さっきはふたりともありがとう。クザンから庇ってくれて。お礼に飲み物買ってあげるわ。何がいい?」
とにこりと笑う。
フランキー達は勿論、それに付き合う。


「フランキーはコーラでしょ?」
「おう」
「ゾロは…」
「酒」
「ないわよ」
「じゃあ、何かスポーツ飲料系」
「分かったわ」


ようやくロビンはゾロのシャツから手を離し、自販機に向かう。
フランキーは、ようやく開いたロビンとゾロの距離に、ホッと安堵した。
「フランキー、ゾロから目を離さないでいてね。お願いよ?」
2,3歩先で、ロビンが振り返って言う。
「了ー解」
「ゾロはそこから一歩も動いたら駄目よ?」
「わァったよ」


ハミングを口ずさみながら歩いていくロビンの後ろ姿を眺めながら、ゾロが言う。
「なァ…ロビンて…少し、雰囲気変わったか?」
「そおか?どこか変わったか?おれは毎日見てるから分かンねェのかもな」
フランキーはロビンに特別、変化を見受けられないので、首を捻る。
「ロビン、お前から見てどこらへんが変わった?」
「うーん…どこ、って言われてもな…」


基本的にロビンは感情の振れ幅が小さい。
いつも落ち着いていて、冷静で、どちらかと言えば安定してローテンションだ。
ゾロは今日、その彼女の感情の起伏を数回感じた。
そうだな…ゆっくり思い返してみればそれは、いつも、フランキーが…
ゾロは何かを思いつく。
「フランキー、おまえ…」
「ゴームゴムのォ…」


がーとりんぐー!


フランキーとゾロの鳩尾に、小さな拳が数発、クリーンヒットした。
「ぐは!」
不意を突かれた、ふたりの息が詰まる。
体重の軽さをスピードで補ったそれは、なかなかの重さをもってふたりの腹にめりこみ、ゾロの言いかけた言葉は相当の衝撃をもって、腹に戻された。
がはっ、と詰まった息を吐き出しつつ、身体がふたつに折れきるのを堪える。


「何だ、ふたりともー!油断しやがって!」
ブランコの柵に立つ、細い足。
柵に乗ってもフランキー達よりもまだ低い目線。
ランドセルに麦わら帽子。
一繋小2年生、商店街の問題児、モンキー・D・ルフィ。
海賊王におれはなる!が口癖の少年だ。


「だーめじゃねェか!まともに食らってちゃ!」
「てンめェ…ルフィ…」
「この、クソガキ…」
膝をつかされそうになり、大いにふたりのプライドに触った。
小学生にしてやられ、フランキーとゾロの勘忍袋はブチ切れる。
負けん気と闘争本能の塊の高校生チームは反撃体勢を即座に整えた。
すかさず拳と竹刀を繰り出すも、猿のように素早い少年はそのパンチと切っ先をひょいひょいと交わす。


「クソ、ちょこまかと…」
威力の高い攻撃も、当たらなければ意味がない。
「一発でも入れば軽いから吹っ飛ぶんだがな」
フランキーもゾロも、ルフィに攻撃をまともに当てたことは一度か二度しかない。


ゾロが一気に踏み込み、竹刀を振り下ろす。
容易く交わされ、払った竹刀の切っ先が足の裏で止められる。
ゾロにとってはかなりの屈辱。
が、その瞬間、間合いを詰めて、ゾロはルフィの腕を掴んだ。
「リーチの差だな。捕まえたぞ、覚悟しやがれ」
掴まえちまえばこっちのもんだと、ゾロは竹刀を振り上げた。


「ゾロ、放せ!その体勢は金的喰らうぞ?」
フランキーが叫ぶ。
「ゴムゴムのぉ…」
「鐘を喰らってたまるかよッ」
ゾロは慌てて身を交わし、ルフィを放り投げた。


「正面から掴まえてもダメなんだ。アイツは後ろから首根っこ掴まえねェと」
長身高校生と、チビの小学生。
目線はちょうど急所。
「やられたことあンのか?」
「ああ…ちょっとしたトラウマだ」
アネキとして生きてくのかもしれない、と覚悟した瞬間だった。



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