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フラロビのSS置き場。
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個人的には、ゾロにはたしぎがお似合いだと思う。


W7に辿り着くまでのロビンがゾロに恋愛感情を抱けたか、というのも低確率で(ゾロビを否定しているのではなく確率論)、ロビンは深く交わることを恐れていたわけだから、自分の引いた線から出ることはないし、踏み込ませることもしない。
ゾロは他のクルーに無理な『元敵のロビンから自分だけは距離を取る』を冷静に実践していた筈なので、自ら情が移ってしまう行動に出るとは思えない。
ただ、お互いに相手を観察し合っていたとは思うので、そこで精神的な何かが生まれている可能性はあるけど、でも、若いゾロにはロビンの全てを受け止めきれるだけのキャパがまだないと思う。


++++++++++






38. きみとあるいてく


「そういやゾロ!久し振りだなァ。何でいるんだ?迷子か?」
ゾロに手荒く放り投げられたはずのルフィが、痛痒なく笑いながら言った。
全くもって癪に障る、と顔を顰めつつ、
「うるせェなァ。何でタメ口なんだよ」
と文句を言うと
「おれは海賊王になる男だ!おれは船長、おまえらはおれの船のクルー。当然じゃんか」
とキッパリと言い放たれた。
「勝手に決めんな」
やってられっか!と、ゾロは竹刀を仕舞う。


「ゾロはおれの海賊団の戦闘員な?剣士なんてカッコイイじゃん」
「ま、まァな…」
カッコイイと言われてまんざらでもないゾロは、マリモ頭を掻いた。
「フランキーも『仲間』なのかよ」
ゾロは傍らのチンピラに訊ねる。
「おれは船大工だとよ」
フランキーはルフィの足型スタンプ塗れで真っ白になった制服のズボンをバシバシと叩いた。


「ルフィ。もう一度言っとくがなァ…おれは『大工』であって『船大工』じゃねェ。そこんとこ間違えンな」
「まだ『大工』ですらねェしな」
「うるせェな」
「でもおまえ、腕いいじゃん。フランキーならスッゲェ船作れると思うんだよなァ」
ルフィは二カッと笑う。


「ま、まァ…おれはスーパーだから?どんなモンでも作れるが…」
「だろ?」
手放しで褒められて、フランキーも悪い気がしない。
ルフィの笑顔には逆らう気が萎える。
海賊ってのも男のロマンだよなァ、なんて思う。
単純な男達。


そこに、ペットボトルを抱えたロビンが戻って来た。
「ルフィ、こんにちは」
「あ、ロビン、元気かァ?」
にこり、と挨拶を交わし合う。
「何だ、ロビン。ルフィと知り合いだったのか?」
フランキーは目を丸くする。
「ロビンはおれの船の考古学者だ。おまえらの仲間な?仲良くしろよ?」
「うふふ。よろしくね」
ロビンはクスクスと笑った。


「あ、そう言えば。向こうでお友達が探してたわよ?ルフィ」
「友達?」
「ほら、向こうにいる…」
ロビンの指差す方に、クルクル回る少年(?)の影。
「ムギちゃあーん」
「あー!ボンちゃーん」
「もお、探しちゃったじゃないのよーぅ。あちし、しょうがないから回ってたのよーぅ?」
「わりーわりー」
じゃあなーおまえたちー!とルフィはランドセルをガタガタ言わせながら駆け出していく。


「ありゃオカマか?」
「ルフィのヤツ、かなりエキセントリックなダチがいンだな…」
「ああいうカッコ、ド●フの再放送特番で見たことあるぜ?シム●が着てた」
「お前、気が合うんじゃねェか?変態同士。声も似てたし」
「うむ…」


それにしても。
フランキーとゾロは、はあ、と大きな溜息をついた。
「くそお…またヤラレ損だ…あンのクソガキ…」
「アイツの強さ、異常だよな…」
「ゾロ、お前さっき、何か言いかけてなかったか?」
「そうだっけ?…忘れた」
「ま、いいや」
「ところであなたたち」


ルフィがいなくなって一転、ロビンの表情が険しくなった。
「小学生相手に何本気でケンカしてるの?見てたわよ?」
「ケンカも何も。おれたちが一方的にヤラれてたんだぞ?」
「それにふっかけてきたのはルフィだ。おれ達ァ、正当防衛で」
という懸命の訴えは聞き届けてもらえなかった。
青年達はロビンのお小言を喰らい、ペットボトルは脳天に渡された。







ゾロを自宅に送り届けての帰り道。
蜜柑色に染まり出す地面に影を伸ばしながら、ロビンとフランキーは肩を並べて歩いた。
「ゾロを無事に送り届けることが出来て、本っ当ーにホッとしたわ」
「アイツの方向音痴、年々酷くなってる気がする」
「高校卒業後はどうなるのかしらね…」
ロビンはくすりと笑う。


ロビンの白いコートも、白い顔も、オレンジ色に染まっている。
つい見惚れていたフランキーは、声の出し方を忘れてしまって、
「ああ。遅くなってしまったわね」
の問いにただ
「うん」
とだけ答えた。
ロビンのヒールが楽しげに歌っている。


「ロビンさァ…」
「なあに?」
「何か今日……いいコトあった?」
突然の思いもよらない質問に、心当たりのあるロビンは戸惑った。
「どうして…?」
そんな風に思うの?と訊ねると
「何となく…いつもよりにこにこしてるし、歩き方も跳ねてるみたいだし」
と、返事が来た。


ロビンは両手で頬を覆った。
フランキーが彼女とあまり上手くいってないこと。
フランキーがその彼女とデートする気が湧かなかった結果、こうして一緒に歩いていること。
それらに付随した感情が、無意識のうちに動作に表れていたとは。
嫌だわ。
私、そんなに、感情が外にあふれてた?


極力動揺を表に出さないよう気をつけながら、ロビンは答えを探す。
「あ、あの」
「ゾロに会えたの、そんなに嬉しかった?」
明らさまに拗ねた声。
ロビンと目が合うと、空と同じ夕焼け色に染まった瞳がぐるうりと泳いだ。


何だ、そういうこと。
フランキーは弟役をゾロに取られたような気がして、ヤキモチ焼いただけなのね…?
鼻を鳴らすフランキーが可愛くて、微笑ましくて。
そんなフランキーも、フランキーの言葉に振り回されている自分も可笑しくて。
ロビンは笑いを噛み殺した。


「な、何で笑うんだよ」
「そうね。ゾロと久し振りに会えたのは嬉しかったわ」
「ふうん」
ロビンの答えも、自分の幼稚なヤキモチが見透かされているのも面白くなく、フランキーは不貞腐れたけれど、ロビンの言葉が
「でもね。一番は……フランキーが助けに来てくれたこと、かしら」
と、続き、フランキーのふてふてした気持ちはどこへやらと吹き飛んだ。


「私ね、ホームで彼女と一緒にいるフランキーを見かけて、これからデートに行くんだと思って…。だから、あの場にフランキーが来るって頭が全くなかった」
ロビンは俯き、ブーツの尖った爪先が規則正しく踏み出される様に目を遣った。
「でも、フランキーは助けに来てくれた。ああ、本当に、約束通り助けに来てくれたんだ、って…」
「助けだったら……ゾロもいただろ」
ロビンの物憂げな横顔にドキドキしながら、今日の最大のライバルの名前を出す。


「ゾロも庇ってくれたけれど。そもそも彼がクザンを敵認定したことが始まりと言えば始まりで。私ひとりだったら無視して終わりだったと思うわ」
「ゾロのヤツ…見境ねェからなァ…」
「でも、ゾロにしても、クザンの私に対する言動に含みを感じてのことだから、別にいいのよ。とにかく、私はフランキーが、助けに来てくれたことが嬉しかったの」


フランキーは思った。
自分と彼女がロビンの目にはどう映っていたんだろう、と。
隣を歩くロビンはニコニコしていて、自分が彼女と過ごしていた事実を気にしているようには見えない。
前に、「誰と付き合おうと自由」とロビンに言い切られたことが、胸に引っ掛かっている。
あの時みたいに妬いてくれたら、なんて思う。


自分を抱き締めたロビンの、小刻みに震える細い身体が忘れられない。
『弟』である存在に嫌われることを厭うても、堪え切れなかった彼女の嫉妬。
あの時のロビンの頭の中には自分しかいなかった。
ロビンは恐怖や嫉妬や懊悩で心を占められて苦しんでいたのに、そんなロクでもない感情ででも自分のことだけを考えてくれていたんだと思い当った際、フランキーの胸の中は暗い喜びで満たされた。


干渉されたい、だなんてどうかしてる。


たまに、己の望みのためにロビンの不幸を容認してしまう自分自身がいる。
フランキーはそんな自分が滅法嫌だった。
ロビンは『姉』で、おれは『弟』。
今もロビンは、約束を守って駆けつけたお利口な『弟』に喜色いっぱいじゃねェか。
フランキーは、ゴキゴキと首の骨を鳴らし、煩悶し始めた気持ちを誤魔化した。







「帰り道に夕飯の買い物をしていくわ」
ロビンが言う。
「だから、フランキーは先に帰ってても…」
「付き合う。一緒に行く」
フランキーは即答した。


また、クザンのヤツがロビンにちょっかいを出してくるかもしれない。
フランキーのいないところで、ロビンを飲みに誘ったり口説きにかかったりしたら、コトだ。
「こんな便利な荷物持ち、先に帰すこたァねェだろ」
明るく、うはは、と笑うフランキーに、ロビンの笑顔がほころぶ。


「なァ、ロビン」
「何?」
「あのさ…ゾロにやってたみてェに、おれのシャツ、握っててくンない?」
「どうして?フランキーは迷子にならないでしょう?」
意味が分からないわ、とロビンの瞳がまじまじと見上げてくる。


「い、いいから…握ってよ、シャツ」
夕日が出ていてくれて良かった、と思う。
絶対に顔が真っ赤になっている自信がある。
自分の子供っぽい意図も、ロビンには見抜かれている自覚もきちっとある。
「変なフランキー」
ロビンがくすくす笑った。


やさしい手が伸びて、細い指がフランキーのシャツを、きゅ、と握った。
腰の辺りに感じる、控え目なロビンの重み。
緩やかな従属関係からの依存と、ささやかな支配欲の充足。
シャツが引かれる度に、ロビンを感じる。
「これでいいの?」
ロビンが訊ねると、フランキーは振り返らずに
「ああ」
と答えた。


こんなことでヤキモチ焼かなくても、心配しなくてもいいのに。
ロビンは前を歩く、広い背中を見つめる。
『カッコ良かったわよ、フランキー。凄く…素敵だった』
視線を落とすと、足元には長い影が伸びていて、大きな影と小さな影が並んで揺れていた。
ロビンは半歩、フランキーに寄る。


「ん?どうかした?」
シャツを引っ張られる角度が変化したことに気付き、フランキーがロビンに目を向けた。
「どうもしないわ」
黄昏に染まる額に、ロビンは笑顔を返す。
「そう?」
大好きな笑顔が、ロビンにも返ってきた。







自己満足でしかないけれど。
せめて、
影と影を寄り添わせて。



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