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フラロビのSS置き場。
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海列車でのロビン奪還作戦、大好きだ。そげキングのテーマソング何回聞いたか。


『からくりサーカス』で、「おまえは生きた人形だ」と言われ続けたしろがねが、自分自身を「私は生きた人形」と思いこんでいたように、「存在することが罪」と言われ続けたロビンもまた、「自分は存在していてはいけないのだ」と思いこんでいたから、死ぬ選択を容易にしてしまう傾向があった。
しろがねは鳴海に「おまえは人形じゃない」と言われて呪縛が解けた。
やはりロビンの呪縛を解いたきっかけはフランキーの「存在する事は罪にならねェ」の一言だと思う。


++++++++++






40. これが恋ということに。


「ごめんなさいね」
ロビンは心配そうなフランキーに笑顔を向けた。
「何かフランキーに言い忘れたことがあって……それが何だか気になっていて。思い出すのに一生懸命になってしまってたわ」
「何だ、そうか。てっきり、体調が悪くなったのかと…」
フランキーのホッとする顔にも、ロビンの心が締め付けられた。


「フランキーの合格祝い、買ってあるの、忘れていたわ。トムズに戻ったら渡すわね?バースデープレゼントと抱き合わせで申し訳ないのだけれど」
「いいのに、誕生日プレゼントなんて…御馳走も作ってもらったのに」
と言いながらも、フランキーは嬉しそうだ。
「改めて、第一志望、合格おめでとう。頑張ったものね」
「うん。でもかなり相当運任せだったけどな」
「運も実力のうちよ」
ロビンは握った手に、きゅ、と力を込めた。


「誕生日か…そういえば、ロビンの誕生日っていつ?」
考えてみたらロビンの誕生日を聞いてなかった事実に、フランキーは気付く。
ロビンはちょっと決まり悪そうにして、
「先月よ?2月6日」
と答えた。
「何で言わないんだよ?過ぎちゃってるじゃん!」
フランキーは「しくった!」とばかり、畳の上に跳ね起きた。


「いいのよ、別に。お祝いって年じゃないし、年取るの、もう嬉しくないし…」
フランキーの先を6年も進む自分の年齢を呪わしく思いこそすれ、喜ばしくも何ともない。
この先、一生分の誕生日を返上したいくらいだ。
ロビンもフランキーに合わせて身体を起こす。
「それはそれだろ?どうして遠慮すんの?」


1月のアイスバーグの誕生日にだって、ロビンは御馳走を用意してくれた。
何で間の2月にある自分の誕生日を飛ばすのか、まだ若いフランキーには「誕生日いらない」の気持ちは理解出来ない。
知っていたらおれだって!、と言いかけて
「だって…先月はそれどころじゃなかったでしょう…」
「う…」
二の句が継げなかった。


確かに、ロビンの誕生日辺りは私立の受験が鬼のように近づいていて、英語の夢ばかり見ていて魘されてて、余裕なんてまるでなかった。
「今からでも遅くねェ!明日にでも一緒に…」
買い物にでも行ってプレゼントを贈ろうとするフランキーを、ロビンは制する。
「私、別に何か欲しい物なんてないし。お金が勿体無いわ」


元々、宵越しの金を持たない主義のフランキーには蓄えなんてない。
買いに出たところで大した物はあげられない。
「なら、せめて気持ちだけでも…」
フランキーの首が、しゅん、と下を向いた。
フランキーの様子に、折角の厚意を拒絶する形になってしまって可哀想なことをしたかしら?、と思ったロビンは少し考えて、提案する。


「だったら、フランキー…。私のバースデープレゼントに、キスをくれる?」
「はァ?」
項垂れていた首が、しゃきん、と前を向いた。
「それなら元手はいらないし、フランキーが持っているものだけで何とかなるでしょ?」
「それは…そうだけど…」
「あ、そうだ。私、新しいお店で使う小さなキャビネットが欲しいのだけれど、それをプレゼント用に作ってくれても」
「キスでお願いシマス。キャビネットは別口で作りマス」


正座して頭を下げるフランキーがとても可愛い。
「キスも唇限定、って言うのではなくて…フランキーがしたいところ、どこにでもいいわ」
何という渡りに船な素晴らしい提案。
「そ、そんなんでいいの?」
訊ねると、ロビンはにこりと笑顔を返した。
「ええ、勿論」


ごくん。
フランキーの喉仏が上下する。
「どこでも?」
「どこでも」
「……エッチなところでも?」


こんなに真剣な表情は家庭教師をしていた間に一度も見たことないわ、とロビンは思った。
「いいわよ?座ってたらキスできない場所なら、ポーズを変えるわ?」
ワザと扇情的に言ったら
「い、いい。変えなくて…」
と耳を赤くした。
変に朴訥な反応に、普段たくさん遊んでいるクセに、と可笑しくなる。


「じゃ、じゃあ…」
プレゼンターが、ごほん、と咳払いをする。
フランキーは居住まいを正してロビンに向かい合った。
繋いだ手を解くのを忘れるくらい、どうやら緊張しているらしい。
自由になる手が、ロビンの頬に伸ばされる。


「二カ所、してくれる?」
近づくロビンが囁く。
「二カ所?」
「ええ。場所を変えて、二カ所」
長い睫毛がすっと伏せられた。


フランキーは物凄く考えた。
受験勉強中だって、こんなに素早く考えを巡らせたことなんか一度もなかった、と胸を張って言える。
こんなに肉迫しているのに、まだどこにキスすべきかが決まらない。
エッチなところでもいいとロビンは言ったけれど、いきなりそれでは、流石にどうだろう?
本当は、唇にしたいけれど。
ロビンは、おれを『弟』だと思っているわけで。


フランキーの手がロビンの頬に触れ、引き寄せる。
手が触れた瞬間、ロビンの身体が、ピク、と反応した。
光る睫毛が微かに震え、艶やかな唇が誘うように開く。
ロビンの頬が少し、ピンク色に染まっている。
婀娜めいて見えるロビンに、フランキーの全身には、ぞわり、と戦慄が走った。
分厚い胸筋の内側で、心臓が早鐘を打ち鳴らす。


フランキーは悩んだ末に、ロビンの頬と、目蓋に唇を落とした。
そっと近づき、一カ所、一カ所、時間をかけてキスをする。
サラサラと、ロビンの黒髪が滑る音が拾えるくらいに近く。
目蓋の薄い皮膚はしっとりと吸いつくようで、フランキーは唇を離すのに力が要った。
軽くキスをしただけ。
とはいえ、フランキーがこんなにも緊張したことは今までなかった。


どんな顔をしていいのかが分からなくて、緩やかに距離を取る。
「妥当、ね…」
舞い上がったフランキーはロビンの言葉を聞き逃した。
「今、何て?」
「ううん。こっちの話」
プレゼント、ありがとう。
ロビンは嬉しそうににっこり微笑んだ。


頬と目蓋、親愛と憧憬。


それがフランキーが自分に抱く、気持ち。
調子に乗って、唇や変なところにキスをしてこなかったことが余計に、フランキーの正直な内面を指し表しているように思う。
「それじゃ、帰りましょ。フランキーにプレゼント渡したいから」
ロビンは立ち上がろうとした。
でも、フランキーが立ち上がらなかったので、繋いだ手が引っ張られ、彼女はまた畳の上に戻る。


「どうしたの、フランキー?」
ロビンが問うと、
「ロビンもしてくれよ、おれに、二カ所!」
と真っ赤な顔で言う。


「今のは私へのプレゼントでしょ?」
「おれも誕生日じゃん?」
「プレゼントはもう用意してあるわよ?」
「それのオマケってことで。なッ?ど、どこでもいいからさッ」
「どこでも?」
「エッチなとこでもOK」
「それはいいわ」


「仕方ないわね」
ロビンは繋いだままのフランキーの手を持ち上げた。
男らしい、厚い手の平、長い指。
見ているだけで、背筋にぞくぞくした何かが走り抜ける。
ロビンはその手の甲と指先に、想いを込めて唇をつけた。


ロビンがゆっくりと顔を上げると、何故か愴然としたフランキーの瞳と目が合った。
「手、だけ?」
何で泣きそうになっているのかが分からない。
「そうよ?」
とロビンが返事をすると、フランキーの口が思いっきりへの字に曲がった。


「手、以外で!もう一カ所!何だか納得いかねェ!」
フランキーは畳の上でジタバタとダダを捏ねた。
「どうして?どこでもOKなんでしょ?」
「そ-うーだーけーどー!」
いつぞやの己の妄想とリンクするやり取り。


「キスが欲しいなら彼女に幾らでもしてもらえば…」
「違うー!おれはロビンのが欲しいのー!」
自分が今したように頬でもいい、前にしてくれたように額でもいい。
もう少し、身体的距離が近くなるキスが欲しい、刺激が欲しい、という旨をダダを捏ね捏ね訴えた。
「わがままね」
ロビンは眉を顰めた。
私はもう逆に、あなたの『姉』でいるために、身体的な接触を極力避けたいのに。


ロビンはアロハの襟元を握ると、フランキーの首筋にキスをした。
耳朶の下に鼻を挿し入れると、太陽を連想させる色の肌からは、濃い雄の匂い。
太い静脈を浮かび上がらせる、比較的薄い肌に唇を寄せ、その血潮の通り道に噛みつくようなキスをする。
最後に、ちゅ、と音を立てて唇を離せば、そこにはカチカチに固まった『弟』が呆然としていた。


「これでいい?」
「う、うん…」
フランキーは両手で自分の首筋を押さえ、いささか黒ずんだ顔色で頷いた。
どうやら呼吸が止まっていたらしい。
「大袈裟ね。これくらいのキス、幾らでもしてるでしょう?」
ロビンは立ち上がり、スタスタと和室を出ていく。
「ちょっと、待って。ロビン」
フランキーは慌てて追いかけた。


「お、怒って、る…?」
「怒ってないわよ」
フランキーに背を向けた陰で、ロビンは表情と感情を隠す。
尊敬と賞賛と、それから、執着。
「私も大概…歪んでいるわね…」







息が出来ない。
あなたのいない世界の空気では生きていけなくて。
でも、あなたのいる世界の空気は、私の胸には痛過ぎて。
息が出来ない。
それがきっと、私に用意された運命、遠くない未来。


これが恋なのだと、気がついてしまったから。
これから私が進む道は、あなたへの畏敬の念で埋め尽くされることだろう。


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