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フラロビのSS置き場。
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選曲が古いのは私が古い人間だから。


登場してからずっと、ロビンは大抵作り笑顔を浮かべていて、本心を透けさせるようなことはなかった。
笑顔か真顔か、麦わらの一味に加わってからは呆れ顔を見せるようになった。
そんなロビンが大きく感情を揺らしたのはクザンが登場した時で、その晩、ひとり目を覚ましたロビンの表情は、初めて仮面を脱いだ素の顔で、この後CP9が接触してこなかったとしても、麦わらの一味から自ら姿をくらます決心をしていたように思われる。


++++++++++





41. あした晴れるか


思い出を回帰して、再び、フランキー20歳とロビン26歳がいる白詰草古書店。
テーブルの上には薄紫と淡い水色の紫陽花。
と、放りっぱなしのフランキーの勉強道具。







ロビンの指がフランキーの髪を撫でる。
柔らかな、水色の髪。
フランキーが大きくなるにつれ、その髪は幾分太さとハリを増してはいるが、ロビンが好きな感触であることには変わりがない。
ロビンは親指でフランキーの前髪の生え際をそっとなぞった。
フランキーの肩が、ひく、と揺れる。
感じてしまうのを誤魔化すのに苦労するから、そんな風に触れないで欲しい、とフランキーは思う。


「どうかした?」
何かを考えているかのような顔をして、自分の髪に触れ続けるロビンに疑問符を投げる。
「ん…前髪伸ばしているの?何となく、長いかなって思ったものだから」
「アウ、良く気がついたな?リーゼントにしようと計画中なんだ」
微妙な違いに気付いてもらえたフランキーは、物凄く嬉しい。


「そうなの」
にっこり微笑むロビンに、フランキーは馴染みのポーズを取ってみせた。
「更にスーパーな進化を遂げちまうんだぜ、おれァ」
「ふふふ、そうね。似合うと思うわ」
「だろ?」


昔から変わらない前髪を立ち上げるスタイルも、ロビンは好きだった。
広くて男性らしい額の形も、好きだった。
風呂上がり、いつも立ち上がっている前髪が下ろされて、その額を隠した少し幼げに見える髪型も密かにいいなと思ってて。
きっとリーゼントもかっこいいと思う。
フランキーがフランキーらしくいられるなら、ロビンはどんな姿でも受け入れられる。


「さて。ちょっとお喋りが過ぎたかしら。そろそろそれに手をつけなさい?」
ロビンの指がテーブルの勉強道具の上を、ぴぴぴ、と指した。
「えー…」
見るからにやる気のない態度のフランキーに
「だったら何でここにお店を広げたの?」
と、低い声で言うと、青年は不承不承、腰を伸ばした。


「コーラのお代わりを持って来てあげるから。それではいつまで経っても終わらないわよ?」
ロビンが腰を上げ、空いたグラスに手を伸ばす。
その時、フランキーがロビンの腰に腕を回し、自分の胸元に引いた。
ロビンの腰に額をつける。
それと分からぬよう、服の上から、ロビンの腰に唇をつけた。


「ふ、フランキー?どうしたの…?」
ロビンの声が戸惑っている。
変だと思っているに違いない。
それも仕方がない。
こんな風に抱きつくのは、ロビンへの想いを意識してからは一度もない。
『姉』であることよりも『惚れた女』に、ウェイトが置かれてからは一度もないのだから。


束縛したい。
自分だけのモノにしたい。
でも、こうして捕まえていても、絶望的に遠い。
縮まらないこの距離をどうしたらいいんだろう?
この世で一番、形があるモノの中で、おれから遠いのは、ロビンだ。


何年もかけてふたりで積み上げてきた関係性の中に、フランキーの気持ちはもう収まり切れない。
もう臨界点が近い。
触れたくても触れられなかった彼女に、触れる。
これまでは触れなくても我慢できた、でももう、触れないと我慢が出来ない。
好きだと気付いてからは『弟』と見られるのが嫌で、あえて甘えることも禁じていたけれど。
『弟』であることに躊躇いがなかったあの時に戻れば、甘ったれの『弟』の顔に戻れば、こうやって近づける。
またどうしようもなく『弟』であることを、ロビンに印象付ける結果になってしまうけれど、触れられる。


フランキーはロビンの甘い体臭を、胸いっぱいに吸い込んだ。
じやじやと、臍の下が熱くなる。
ロビンに触れる代わりに、この邪な熱を毎度やり過ごさねばならない。
羊の皮を被った狼。
弟の顔をした、愚か者。
それが自分。


すとん、と、ロビンの膝から力が抜けた。
ロビンはフランキーの意図を知る由もない。
キスをされているとも思っていない。
フランキーが『姉』である自分に甘えているのだと、信じて疑わない。
けれど、フランキーに腰を抱かれ、愛する男の温もりで敏感になっている部分に、その唇を感じてしまったら、立ってなどいられない。


バランスを崩したロビンはフランキーの膝の上に落ちた。
「ごめんなさい、ヒールが…床板に引っ掛かって…」
ロビンは慌てて、言い訳をする。
フランキーは私に甘えているだけ、何を腰砕けになっているの?
しっかりしなさい、と己を叱咤する。
「ううん…いいよ…」
フランキーが後ろからロビンに腕を回し、彼女の前で、自分の手と手を繋いだ。


ロビンの周囲に腕で檻を作る。
けれど、その檻はとても緩やかで、虜はいつでも自由に抜けられる。
フランキーはきつく抱き締めたい衝動を抑えつつ、その半面、きつく抱き締めるだけの度胸を自分が持ち合わせていないことも分かっていた。
今度はロビンの肩に、額を載せる。


「どうしたの?」
ロビンは震えそうになる声を、どうにかこうにか押し出した。
「こんな風に甘えてくるなんて、久しぶりじゃない?」
ああ、やっぱり。
ロビンには今日のおれが何かおかしいってことがバレている。
フランキーは歯を食い縛りながら苦笑する。


「今日は何の課題?」
ロビンが訊いてくる。
「こんなに甘えてくるなんて、私に手伝ってもらうのが目的なんでしょ?」
いつもと違う、こんな行動も、ロビンにはどうってことねェのか?
おれの膝の上に抱かれても、『弟』が甘えてきている、そんな風にしか受け取れねェのか?
こんなにおれの心は急きたてられているのに、どうして涼しげでいられるンだよ?
寂しくて苛立たしいもどかしさに、破壊衝動が湧き上がる。
ぎり、と手の甲に指が食い込んだ。


「別に…」
フランキーはぶっきら棒に答えた。
「そう?手伝いがいらないなら私は読書に戻るけど」
ロビンの重みが膝から逃げる。
フランキーは即行で
「手伝ってクダサイ。お願いしマス」
と引き止めた。


ロビンがくすくす笑う。
その笑いに合わせ、フランキーも揺すられる。
ロビンの笑顔には敵わない。
ゆっくりと呼吸を整える。
フランキーの中でキリキリと張り詰めていた糸が緩んだ。


「それで?何の科目を手伝えばいいの?」
「とりあえず、まずは外書講読」
「とりあえず…?まず…?」
「その後に、仏文読解」
「…外書は何するの?」
「レジュメ、提出しないといけねェんだ」
「期限はいつまで?」
「昨日」
「え?」
「だから今日作って明日出す」
「意味が分からないわ」


フランキーがロビンの肩に顎を載せ、目を上げると、顰められている綺麗な眉が間近に見えた。
「そんなんだから外国語を第1も第2も落として、大学2年目にして語学だけで3科目も取る破目になったのよ」
ロビンの言葉には呆れが混じってて、ちょっとキツイ。
「うるっさいなあ。去年、第1は拾ったじゃねェか」
「つきっきりで面倒みてあげたのは誰?」
それはロビン。ぐ、とフランキーの言葉が詰まる。


「それに第2はまた落としたでしょ?屹度、来年は外書講読2も合わせてまた3科目になるわ」
「うるっさいってば。そうならないように手っ取り早く、和訳してよ。ロビンならお茶の子だろ?」
「それが人に物を頼む態度なの?」
「…ゴメンナサイ」
「まずは自分で訳しなさい?直訳でいいから。そうしたらいい感じに意訳し直してあげるわよ」
「えー。メンドくせえ」
「本当に…フランキーは語学が弱いのよね…」
ロビンの小言が続く。


ほんの数cm離れたところにロビンの唇がある。
首をほんのちょっと伸ばせば、捕まえられる。
「……ロビン」
そっと名前を呼ぶと、ロビンは身体を強張らせ、口を噤んだ。
「ロビン」
もう一度、名前を耳元で囁くと、ロビンの身体から力が抜けた。



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