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フラロビのSS置き場。
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アニキはどう見てもお節介だからなあ。


ロビンにとって世の中には、敵と利用する対象とその両方の人間しかいなかったから、周りに警戒心を持たれないよう、所属する組織の中で不用意な軋轢を生まぬように、笑みを浮かべて当たり障りなく生きてきた。
その中で彼女にとっての特別は麦わらの一味だけで、後はどうでもいい存在、フランキーも滅ぶ世界に属する存在なのに、素の顔で話している、話さなくてもいいのに。
まあ、ロビンは話すつもりがなかったけど、フランキーがしつこく話しかけてくるから仕方なく会話をしたのかもしれない。


++++++++++






42. マザー・グース(前編)


「ロビーン!あそびにきたぞ!」
古書店の入口から元気な声が聞こえた。
ばっ、と真っ赤な顔をしたロビンがフランキーの膝の上から跳ね降りる。
見ると小さな身体が一生懸命、店の引き戸を開けようと悪戦苦闘しているのが見えた。
「チョッパー!」
ロビンの瞳がキラリと光り、彼女は新たな客・チョッパーの元にすっ飛んで行った。


あまりにも物の見事に空っぽになった膝の上に。
フランキーは固まったまま呆然とした。


「チョッパーいらっしゃい」
まだ非力なチョッパーの代わりに、ロビンは内側から戸を開けてあげた。
「げんきだったか?ロビン」
円らな瞳がきゅうんと見上げてくる。
「ええ。元気だったわ」
ロビンの胸もきゅうんとする。


チョッパーはカヤの年の離れた弟で、ココロの孫チムニーと同じ幼稚園のクラスメイトだ。
チムニーがココロの預かりとなる時は、商店街に家のあるチョッパーは決まって一緒に遊ぶのだった。
たまにこうやってチョッパーはロビンのところにも遊びに来る。
チョッパーの可愛らしさは反則である、というのは彼を知っている男性の大半が抱く感想だ。
その無意識的なあざといくらいの可愛い仕草に、女性陣は軒並みメロメロになるからだ。
それは、基本的に可愛い物好きのロビンも例外ではなく。


「今日はココロさんのところにチムニーが来てるの?」
ロビンが膝をつき、目線を合わして訊ねると、
「うん。ママがごようじだから おばあちゃんとこにくるっていってた。だからおれ、あそびにさそいにきた」
とチョッパーは大きな声で答えた。
「おれんちであそぶんだー」
チョッパーはニコニコする。
ただそれだけで、チョッパーはロビンに『いいこいいこ』してもらっている。


『いいこいいこ』はガキにするもんだよな、なんてさっきまで落ち込んでいた男は、その考えを180度方針転換した。
ガキ扱いでもいい、その『いいこいいこ』特権はおれだけでいいんじゃないの?ロビンさん。
じとー、と目を三角にしてチョッパーを睨みつける。
幼稚園児と同レベルで競ってる?
んなこたァ、どうでもいい。
チョッパーは目下、実質的にフランキーの一番の恋のライバルなのだから。


「何で先にここに来ンだよ」
だったら真っ直ぐトムズに行けよなー
見るからに不機嫌の塊になった男が幼稚園児に文句を言う。
「あなただって、家に帰らないでここに来たじゃない」
だから気にしなくていいのよ、とロビンはチョッパーに笑いかけた。
チョッパー>>>おれ
フランキーの頬がぷくうと膨れた。


「あー!アニキー!」
チョッパーは駆け出して、むくれる広い背中に貼り付いた。
「おう…チョッパー…元気そうだな」
「げんきだぞ?フランキーは…げんきなさそうだな。みてやろうか?」
「ああ、まァ、さっき薬飲んだから大丈夫だ。また今度な」
フランキーは適当にあしらった。
医者志望のチョッパーがこしらえた、『道端の花や葉っぱを磨り潰して作った色水』とか『公園と幼稚園の土と砂をブレンドして作った特製ダンゴ』やらの薬は、そう何度も付き合って口に出来るものではない。


「アニキー!こないだの ほうだい すごかったぞ!またなにか しんさく ないか?」
チョッパーはロビンに物凄く可愛がられているし、そんな時はフランキーからロビンを取り上げてしまうし、だからと言って力づくで排除したら大人げない事この上なくロビンに怒られてしまう。
可愛い、ってだけでロビンに好かれているチョッパーに、時にムカつかないでもないのだが。
「アニキってすげー!」
と手放しで絶賛してくる彼を邪険にも出来ない。


「ほうだい?」
「アニキはすーぱーなんだ!なんでもつくれるんだぞ!」
その後のチョッパーの説明はオノマトペだらけになって、ロビンには理解不能になった。
チョッパーに変わってフランキーが補足する。
「その…船に載せる砲台をな…」
「船?」


将来、ルフィのために本当に船を作ることになるのかどうかは知らない。
でもとりあえず、盛り上がって楽しんでいるルフィやチョッパー達のためにと、『砲台のついた秘密基地的なモノ』を試作して
「これを船首に取り付けるといい」
なんて披露したのは最近のことだ。


根本的に、この手のモノを作ること自体は、フランキーは大好きだ。
子どもたちのために、と言いつつも、久し振りに『男の子の夢』を作っている自分自身が楽しかった。
ルフィくらいの時にさんざっぱら作ってアイスバーグに怒られたのは、今ではいい思い出だ。
まあ。
ルフィ達と一緒になって調子に乗って試し打ちをして、工場の屋根を落とし、これまた久し振りにアイスバーグに怒られたのは、余計なことだったかもしれない、と自分でも思っている。


「おれ!むぎわらのいちみにはいったんだ!」
チョッパーは大きな目をキラッキラさせながら、フランキーの背中の上に立ち、うおおお!と叫んだ。
「い、いてッ、痛ェぞ、チョパ…人の背中で跳ねんな…」
小さな踵で、背筋や背骨をゴリゴリされる。
「あら、そうなの?」
フランキーを踏み台にしているチョッパーと、普通にしてても目線が合うロビンは和やかに会話をする。


「こないだ、ルフィに『せんい』にしてもらったんだ!」
「じゃあ、チョッパ-は私の『仲間』なのね」
「おう!よろしくな、ロビン!どんなびょうきも なおせるようになるぞ!」
「ふふふ。よろしくね。期待してるわ」
「す、すみません。チョッパーどけてクダサイ…」


ロビンはチョッパーの脇に両手を挿し入れると、ひょい、とその小さな身体を抱き上げた。
背中や肩を踏みつける肉の塊をどけてもらったのはいいけれど。
チョッパーがロビンに抱っこされ、その胸にふっかりしている様に、男は目を剥く。
フランキーが納得いかないのは、チョッパーが自分の置かれている状況に一切の感動を抱いていないことだ。
や、ちょっと待て。
何で普通にしていられンだ?
お前の手元、眼前にあンのは、ロビンのおっぱいだぞ?


「おれだったら…アレがおれだったら…」
「どうしたの、フランキー」
「やっぱ、ぐあいわるそうだぞ?みようか?」
「いや…何でもねェ…」
フランキーは震える手で鉛筆を握り直した。


「チョッパー、野菜ジュース飲む?」
「うん」
ロビンはチョッパーを胸に抱きながら、またも、『いいこいいこ』をした。
フランキーの手の中で、鉛筆がミシミシと悲鳴を上げる。
「綿飴もあるのよ?食べる?」
「おおお、わたあめ?おれ、あまいのだいすきだ」
フランキーの斜向かいの席に下ろされたチョッパーは、嬉しさに足をパタパタさせた。


チョッパーの前にオヤツを届けるロビンに
「おやつ、勝手に食わせていいの?」
と、問う。
「カヤちゃんに了解をもらってるわ」
ロビンはフランキーの前にもコーラのお代わりを置き、チョッパーの隣に腰を下ろした。


さっきまではおれの隣に座ってくれていたのに…


ぐすん、と鼻が鳴る。
フランキーからは課題をやる気力が一気に砕けていった(最初からないけれど)。



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