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フラロビのSS置き場。
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何かもう、フランキーとロビンが幸せならそれでいいか、ってなってきた。


新世界以降のフラロビはやはり、そういった経緯から肉体的な恋愛から精神的な恋愛に移行している感がある。
そもそも、男というものに嫌な過去持ち(だろう)ロビンが肉体関係に重点を置いていたかと考えた時、全然置いていない気がして、最初からフランキーとロビンは次元としてより上位の大人の恋愛ステージに上がっている気がしないでもない。
セックスも一晩に何回も、ていうんじゃなくて、濃いのを一回みたいな(新世界アニキはそれすらも想像できないが)、お互いに相手が欲しいなら応えるけどガツガツしない、肉体経験自体は既に余所で済ましてきたからいいよね的な、もう揺るがない「安心と信頼」がそこにあって、既に倦怠期に突入してなきゃいいけど。


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67. 誰がコマドリ殺したの?
(13) 紫の似合うひと


クリスマスイヴ当日ともなると、街行く人波は幸せそうなカップルばかりになる。
腕を絡めたり、腰を抱いたり、イチャコラする恋人同士が放出するハートマークに当てられながら、フランキーは一人、今年最後の部活の帰りにショッピングモールを歩いていた。
フランキーにも出来たばかりの彼女はいるのだけれど。
何となく、彼女と今日という日を過ごす気になれなくて、適当な理由をつけてデートの予定を入れなかった。
夜にマキノ店パーティーを企画していて良かったとも思った。


昨年のクリスマス、ロビンはトムズの面々と小さなケーキを食べただけで、本当に嬉しそうな顔をしていた。
大きな黒い瞳を子どもみたいにキラキラさせて、白いクリームと赤いイチゴの間に刺さったサンタのデコレーションと、マジパンに書かれた『Merry X'mas』の文字を食い入るように見つめていた。
それはあの夏休みに、生まれて初めて鬼ごっこやかくれんぼをした時の、あの顔と全く同じで、フランキーは途方もなく満足したのを覚えている。


今年は『仲間』で『クリスマスパーティ』をする、このふたつのキーワードがロビンのツボに入っているようで、とにかく浮かれているのが傍にいて伝わってくる。
二言目には「フランキーのおかげ」と言われて、何とも気恥ずかしい。
でも、ロビンは喜んでくれるならそれでいい、とフランキーは思う。
思うけれど。
はあ、
と大きな溜息が出た。


フランキーには彼女がいて。
でも、フランキーが心底好きな女は、別にいて。
ということは、今の彼女は一番好きな女でも何でもなく。
じゃあ、何で彼女と付き合ってるんだろう、性欲処理のためか?、なんて結論が出て。
クリスマスの幸福なムードの中、自分の今現在に虚しさすら感じる。


フランキーは溜息をつきつき、ショップのウィンドウを覗く作業に勤しむ。
覗く店はどれもレディース向けで。
楽しそうに、彼氏に買ってもらうプレゼントを選んでいる女の子の手元を見ては、傾向や相場をリサーチしていた。
そんな女の子達にロビンを重ね合わせて、フランキーは少し寂しそうな笑みを浮かべた。


皮ジャンに両手を突っ込んだまま、ブラブラとカップルでごった返すアクセサリー売り場を歩く。
ガラスの什器の中にはキラキラしたアクセサリーが所狭しと並んでいて、今や書入れ時の売り場はまさに戦場だった。
何の気なしに眺めていて、ひとつの指輪に目が止まった。
小さなアメジストが一粒飾られた、クラシカルな細いプラチナのリング。
爪の形で紫の花みたいに見える。


それがロビンの指に嵌められた様を想像して
「似合いそうだな」
と独りごちた。
あの細い指にはボリュームのあるゴテゴテした指輪は合わないように思うし、それに何より、ロビンには紫が似合う。


そんなことを考えてぼーっと眺めていたら店員が寄って来て、プレゼントですか?、なんて訊ねて来た。
ぎょっとして、いやいや別にただ見てただけ、と慌てて首を振る。
考えてみたら、しこたま彼女を乗り換えてきたけれど、こういったプレゼントをしたことなんて今まで一度もなかった。
正直、初めて見るもので、物珍しい。
ジャンルは違うがクラフトマンとしての血が騒ぐ。


ごらんになりますか?、と店員がアメジストの指輪を什器から取り出して、黒いビロードの取り皿の上に置いた。
フランキーは、キラキラ光るそれを恐る恐る指で摘み上げて見た。
「小っちゃ…」
手の平に載せる。
自分のデカくてゴツイ手と対比させるとまるでそれは玩具のよう。
でもとても繊細で、ロビンの指先を載せているように気持ちになった。


2月生まれの方ですか?、と店員が言うので、何で知ってるの?、と返す。
店員は苦笑しながらアメジストは2月の誕生石なのだと教えてくれた。
そうだったの?、男所帯育ちでそういったモノには全く興味のないフランキーも苦笑いをした。
誕生石、なんてものの存在を初めて知ったフランキーは、だからなるほどロビンに似合うのか、などという訳の分からない納得をする。


何気なくプライスを見て、引いた。
「じゅ…12万…」
ごめん無理だわお姉ちゃん。
ありがとうございました、の声を背に、フランキーはそそくさと退散する。


せっかくロビンにぴったりのプレゼントを見つけたと思ったのに。
預金残高がゼロどころか、数字の脇に三角をつけるようなフランキーには到底手が出ない。
「うーん…宵越しの金を持たねェのがおれのポリシーだけど…そろそろ金貯めた方がいいかもなァ…」
出所はともかくとしても、ロビンは都内の土地建物を買っても生活に困らない程度の貯蓄がある。
どう見積もっても赤字経営にしか思えない古書店のアガリ以外にも、彼女は収入があるらしく、訊けば堪能な語学力を生かして、専門書や考古学論文の翻訳をしているらしい。


そんな彼女に認めてもらうには、とりあえず経済的に自立した男になる必要があるだろう。
どうあってもロビンの収入の方が多いとは思うけれど、人間ふたりを養っていくだけの経済力は欲しい。
「指輪のひとつくらい、ぽん、と買ってやれるだけの甲斐性は欲しいよなァ…」
早く社会人になりてェ。
フランキーは口を尖らせた。


「指輪、ねェ…」
そういえば。
ロビンが指輪をしてるとこ、見たことねェかも。
首元の小さなペンダントトップ以外、装飾品を身につけているイメージがない。
「うう…ん。指輪するの、嫌いなのかな…」
今度訊いてみよう。ついでにサイズも訊けたら訊いとこう。


いずれにしても。
今のフランキーはロビンに指輪を贈るには時期尚早も何も、贈る権利がない。
弟は、指輪を贈るポジションにいない。
いつかはペアリングなんてしてみたいけれど、そこに至るまでの道程は険しい。
まずはロビンの目から『弟フィルター』を外すことが先決だろう。
「6歳、かァ…」


絶対に越えられない壁。
絶対に埋まらない溝。
一番近くて、遠いひと。


結局、フランキーはロビンへのクリスマスプレゼントにハンドクリームを選んだ。
初めての冬の水仕事にロビンが音を上げていたっけな、とハンドクリームとしては結構高めのプライスのそれを手に取った。
決め手はパッケージに描かれた花が紫色だったのと、やさしくて上品な花の香りがロビンっぽいな、と思ったからだ。
その香りが描かれた花の香りであり、その花の名前がラベンダーであることを、男所帯で花になど縁のないフランキーは、やはり知らない。


フランキーは彼女用プレゼントもハンドクリームにした。
ロビンと同じモノではなく、諸々の事情により、若干安めでパッケージがピンク色でより女の子向けな感じのモノにした。
店を出てから、彼女用のクリームの匂いを確かめないで買ったことに気付き、また落ち込んだ。
彼女用プレゼントもハンドクリームにしたのも、何にするか考えるのが面倒になったからで。
本当に、何で付き合ってるんだろう?


でも、ロビンとの関係に進展が見込まれない以上、彼女を作ると言うのなら、フランキーは常に『2番目』で手を打ち続けなければならない。
問題は、1番目と2番目との開きが、半端ないことだ。
「月とニッポンよりも差があるよなァ…」
手提げの中の、ふたつの可愛い小箱をフランキーは物思いに耽りつつ、見下ろした。






商店街最寄りの駅に着く。
プレゼントの買い物は勿論、この商店街では絶対にしない。
こんな狭い町でそんな買い物をしたら、当人の手にプレゼントが渡る前に、当人の耳にその内容が伝わってしまう。
そんでもって茶化される。


おまけに、いかにもプレゼントが入ってます的な手提げは、からかいの格好の餌食になるので、電車の中でスポーツバッグの中に突っ込んだ。
中でグシャグシャにならないように、比較的大事に肩にかけてはいるが、プール上がりに無造作に突っ込まれた汚れ物と混じっている段階で駄目かもしれない。
「まァ、何とかなっだろ」
待ち合わせには少し早いけれど、ロビンの店に行くことにする。
ロビンにもうじき会えることで気分を持ち直したフランキーは、調子っぱずれな鼻歌交じりに通りを歩いた。


古書店に近づくにつれ、フランキーの鼻歌が小さくなった。
店の前に遠巻きに、幾人かが中を覗いている。
見ると、この寒空に古書店の戸が全開になっていて、中から男の喚き声が聞こえた。
フランキーの歩速が一気に上がった。
ただならぬ気配に険しい表情で突っ込んでくるフランキーに、店前の男が無言で店内に指を指して見せた。


店の中に足を一歩踏み入れたフランキーが見たものは、見知らぬ男がロビンの顔を雑誌で殴っている姿。
ぶち、
とフランキーの中で、勘忍の緒が問答無用で切れる。
事情は何も分からない、が、大の男がロビンを殴っていいワケがない。
フランキーは重たいスポーツバッグを思い切り、高々と振り被った。


190センチの上背から、日々建築作業で鍛えている筋肉と、水泳で培った長い腕で繰り出されるストローク。
その中にクリスマスプレゼントが入っていることは、既に怒りで吹っ飛び。
取っ手がブチ切れる破壊力を持って振り下ろされたスポーツバッグは、狼藉者の脳天に見事、クリーンヒットした。



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