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フラロビのSS置き場。
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隣の子との会話、フランキー、の読唇だって出来るんだよ。


小学校の公開週間で、授業中、フランキーのポーズをとっている男子がいた。
他の保護者がみれば伸びをしているように見えたかもしれないが、私の目を誤魔化すことは出来ない、明らかにふざけて「スーパー!」をやっていた。
しかし少年よ、あのポーズの正しくは、合わせるべきは手の甲であって手首の内側ではないのだ。


++++++++++






69. 誰がコマドリ殺したの?
(15) I wish your Merry X'mas.


「つーまんねえ!手応えがねェ!」
大人相手で刑事と聞いた、どれだけ骨のある戦いが出来るのかと楽しみにしていたのに、鳩尾一発でノックアウト。
不完全燃焼もいいとこのルフィは、スパンダムの頭脇で地団駄を踏んだ。
「何なんだよ、お前?えっらそーにしてたクセに弱過ぎるぞ?お前の国の刑事ってそんんんなに弱ェのか?ダメな国だな?」


「見た目で分かンじゃん。見るからに弱そうなヤツだって」
「一発目で急所に全力で突っ込むから、すぐ終わるんだ」
「違うー!おれは全力で戦いたいンだよ!」
お菓子をボリボリ食べながらルフィの戦いを論評するエースとサボ。
ギャラリーは「だらしねェヤツだな」とスパンダムを物笑いの種にしながら三々五々散っていく。
トムとアイスバーグも、フランキーやロビンに手を振って、仕事場に戻って行った。


「急所に数発喰らいながらも何度も立ち上がるのが、カッコイイんじゃねェか。つーか、お前ら、おれにもくれ!サンジのおやつー!あ、それとお前、警察辞めた方がいいぞ。弱ェから」
ルフィは自分の足元に沈む敗者に悪意のない言葉の止めを刺すと、エースとサボが美味そうに齧っているクッキーに突進していった。
3人はお菓子の取り合いを開始する。
ルフィにとってはスパンダムなんかよりも、エースやサボ相手の方がずっと刺激的なケンカが出来るようだった。


「おうし、いい動画が撮れたぞ?小学生にケンカを挑んで一発で負けた国家権力者」
「おう、ウソップ。つべに上げちまえ。このクソ野郎を晒し者にしちまえ」
「うわー、カッコ悪」
こちらは悪意アリの大学生チーム。
それだけはやめてくれ、と言いたいが泡を吹いたスパンダムの口からは声が出ない。


「住居不法侵入と器物損壊と傷害、刑事ってそんなことしていいのかァ?」
動けない鼻先数センチで、竹刀が道路に突かれた。
「ちょっと。アンタの壊したマイセンのカップ&ソーサー、後、椅子。どっちもヴィンテージ物なんだけど、どう落とし前つけるのよ?」
私の見立てだとこれくらいの損害額よ、とナミがスパンダムの眼前に請求書を突き付けた。
虚ろな目で眺めると、そりゃおかしいだろレベルの法外な金額が書き込まれている。
ツッコミを入れたいが、入れる力がない。


「ウチの船長、甘く見ンなよな」
「店の中にゃァ防犯カメラがついててな、てめェの破壊行為、きっちり映ってっぞ?」
「映像データ、ネットに流す他にも、全部まとめてお前の職場に送ってやろうか?」
「請求書の熨し付けてね。宛先はアンタの上司にしとくわ。出世の目が無くなるかも。お気の毒」
「レディーの命に傷つけやがって。どう落とし前つける気だ、このクソ野郎が」
円陣を組まれた中央に伸びるスパンダムに、矢継ぎ早な言葉の追い打ち。


「どうする?てめェがロビンを殴ったのも、店内備品壊したのも、小学生にケンカ売って無様に負けたのも、動画に残っちまってるが」
フランキーがしゃがみ込み、スパンダムに低い声で脅しをかける。
「ロビンに近寄らねェなら、表に出さねェ」
スパンダムは力無く、こくこくと頷いた。


「一発喰らったくれェでだらしねェなァ」
フランキーは立ち上がり様、「ザンバイ」と声をかけた。
「何すか、アニキ」
「悪イがコイツを、カマバッカに届けてくれ。『クリスマスプレゼントだ、好きにしてくれ』って言ってな」
ざわり、サンジの顔色が変わる。
「ふ…フランキー、何て恐ろしいことを…」


ザンバイ達に抱え上げられながら、どこに連れていく気だ、と言いたげに恐怖で顔を引き攣らせているスパンダムにフランキーが言う。
「なあに。心身ともにボロボロになったお前さんをパラダイスに連れてってやるのよ。感謝しろよ、いい夢見れるぜ」
冷たくニヤリと笑う。
「次に会う時、男でいられるといいな。ま…二度と会う気はねェけどよ」


えっさほいさ、と運ばれていくスパンダムを見送り、ようやく元の、楽しいクリスマスソングの流れる商店街の往来に戻った。
「おい…カマバッカって…」
ゾロが訊ねると
「ああ。発展場で有名なあの町に君臨する女王が直々に経営するオカマバーだ」
「ああ、あれは、地獄の釜、そのものだ…」
何やらトラウマがあるらしいサンジが、血反吐を吐きそうなやつれた顔で呟いた。


フランキーの目がロビンを探す。
ロビンは古書店の奥で、カヤに傷の手当てを受けていた。
ホッと安堵の息をつき、いかっていたフランキーの肩が下がる。
「カヤー、行くぞー」
ウソップがカヤに声をかけた。


ナミの手が、とん、とフランキーの背中を押す。
「私たちは先にマキノさんの店に行ってるから」
「後はよろしくね」
店から出て来たカヤにも笑顔で言われる。
「フランキー、『もいすとひーりんぐ』だぞ。おれ、いがくしょ、おいといたから よむといいぞ」
「じゃあな、お先に」
「ちゃんとロビンちゃんを連れて来いよ」


仲間達は連れ立って去っていく。
ひとり取り残されたフランキーが古書店の中を覗くと、椅子に腰かけたロビンが微笑んでフランキーを見つめていた。







「小さい頃は怪我したら、とりあえず消毒薬ぶっかけてたもんだったが」
今は、消毒しないってのが傷を治すコツなんだなァ…、と、フランキーはチョッパーの置いていった絵本を見つつ、ラップにワセリンを塗る。
「ふうん…水道水で傷をよく洗って、ラップを張る、白色ワセリンで保護すると尚良い、ってか」
水道水での処置は既にカヤが済ませておいてくれたので、フランキーに任されたのはロビンの頬にラップを張る作業。


「あンの野郎…ロビンの顔に傷つけやがって…」
スパンダムの馬鹿面を思い出すと未だにムカムカしてくるフランキーだった。
「フランキー…ありがとう…」
「ん?」
「でも、もう…あんな無茶は止してね」
フランキーはラップから少し目を上げた。


「フランキーがスパンダムを殴ったって分かった時、どうなるかと思ったわ。あの男はとにかくしつこいの。フランキーが目を付けられたら大変よ?もう、私のために無茶はしないで?」
「約束は…できねェなァ…」
フランキーは、ワセリンを塗り終わったラップを、そうっとロビンの頬に当てた。
薬剤の冷たさにロビンの顔が顰められる。


「痛むか?沁みたか?」
と訊かれ
「ううん。冷たかっただけ」
と答えた。


「おれァ…目の前でロビンが殴られているのを見て黙っていられる程、聖人君子じゃねェよ」
固定用の紙テープの巻き終わりを爪で探しながら、フランキーは言った。
「これからも、ロビンに悪さするヤツがいたら容赦はしねェ」
「でも…」
「ま、それでロビンが心配するってなら…肝には銘じとくよ」
フランキーはようやく見つけたテープの巻き終わりを、コリコリと爪先で突いた。


「でも…良かったな。追っ払えて」
ロビンはくすりと笑った。
「そうね。しばらくは大人しいと思うわ」
「この町…いいヤツらばっかだろ?」
「ええ」


フランキーはラップの上に、紙テープを二の字に張る。
ラップの上から親指の腹でワセリンを肌になじませて
「傷が残らなきゃいいけど」
と呟いた。
「大丈夫よ、皆で手当てしてくれたのだもの」
「チョッパーがな、『もいすとひーりんぐ』がいいんだって言うからさ」
フランキーはチョッパーの『医学書』を手に笑った。


「さて。皆が待ってるクリスマスパーティーに行きましょうか」
「そうだな。早くロビンを連れてかねェと、サンジにドヤされちまう」
ふたりは席を立ち、出かける身支度をする。
フランキーは、ロビンが上着を取りに行っている間に、スパンダムの鼻血で汚れた床を綺麗に拭いておいてあげた。


「おまたせ」
戻ってきたロビンが綺麗になっている床に気付き、申し訳なさそうな、それでいて嬉しそうな笑顔をフランキーに向けた。
「フランキー」
「あン?」
「ありがとう。いつも助けてくれて」


ロビンがフランキーの手をきゅっと握った。
フランキーの胸の中がドキドキする。
前は、手を重ねても全然平気だったのに。
緊張するのと興奮するのと、手の平がじっとりと汗ばんで、ロビンに変に思われなければいいけれど。
「クリスマスだから。これくらいはいいでしょう?」
「こんなんで表に出たら、『姉弟で仲がいいわね』、ってまァた言われるなァ」


繋いだ手を持ち上げて、自嘲気味に笑う。
自分の手の中に収まる細い指に、さっき店で見かけた指輪はやっぱり似合うと思った。
ロビンに指輪を贈れる日は、いつか来るのだろうか?
表に出ると外は結構寒くて、どうしたって寄り添ってしまう。
傍らでパーティーに浮かれているロビンは、どこか跳ねるように歩いてて、可愛い。


「今日は天気がいいのね。雪なんか降らなそう」
ロビンが見上げる冴え澄んだ空に、降るような冬の星座。
フランキーも空を仰いで、白い息を長く棚引かせた。







とりあえずは。
メリークリスマス。
胸の痞えがとれた最愛の人に訪れる新しい年が、良い年でありますように。



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