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フラロビのSS置き場。
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守ってあげたい あなたを苦しめる全てのことから


「ロボじゃねェ!サイボーグだ!」って反論していたアニキには、『サイボーグであるこだわり』が見受けられたけれど、今はもうない。
むしろ、あの身体を「サイボーグだ!」って言われても困るし、「ベースは人間」って言われても、それってどこよ?で、もういいよね、ロボで。
ていうか、アニキの生身部分ってどこ?バトーさんの義体化率とどっちが高いの?


++++++++++





7. 守ってあげたい(中編)


他愛のないおしゃべり。
お人形遊び、鬼ごっこ、かくれんぼ。
流行りのゲーム、何処其処での待ち合わせ。
草花を摘んで、虫を捕まえて、木に登って、日が暮れるまで転げ回って。


誰もが当たり前に通り過ぎてきた道を、ロビンはただ遠くから眺めるしかできなかった。
無邪気に遊ぶ子どもたちの輪の中に、入った記憶なんてどこにもなかった。
羨ましいと思ったことなんかない、
と、本当に、平気な顔で言えたなら。


従妹と一緒だった小学校、中学校時代は、全くと言っていいくらいに友達がいなかった。
学校では従妹が先頭に立ってロビンを苛めていたし、積極的に苛めに加担しない子どもたちも、そんなロビンと親しくするリスクを良く分かっていたので、彼女はいつも独りだった。
ロビンを色眼鏡で見る保護者たちも、自分の子どもを彼女と遊ばせようとは思わなかった。
元々、帰宅後に課せられた家事が多過ぎて、放課後に遊ぶという選択肢は最初からなかった。
高校に入ってからは比較的友達も出来たが、ロビンのトラウマが無意識に作る見えない壁のせいで、どことなく余所余所しい関係の域を出ることはなかった。







「ああ、でも」
ロビンが重ねた手でフランキーの手を、ぽん、と打った。
「昔、一人だけいたわ。会えなくなって寂しくて泣いた友達」
「いたんだ」
ロビンに友達が一人でもいた事実に、フランキーはホッとする。


「サウロ、って名前の男の子。小学4年生の時の転校生。今のフランキーと同じくらいの年ね。物凄い大きな子だったの。巨人かと思うくらいに」
「へー」
ロビンの大袈裟な物言いに、フランキーは明らかに「信じていない」顔をした。
「本当よ。フランキーよりもずっと大きかったもの」
「ウソ」
「嘘じゃないわ。10歳で170センチ越えていたんだもの」
「……」


10年後には天井に頭を擦りながら歩くようになるフランキーも、この頃は低い身長がコンプレックスだった。
学年でも最前列の座を常に譲ったり譲られたりを繰り返していたし、身体測定の度に渡される『健康の記録』が思うような折れ線グラフにならないことに落胆していた。
しかも当時、絶賛成長期中のアイスバーグが起きる度に背が伸びていて、事ある毎に年齢でも身長でもチビであることを指摘されてはムカついていた。


そのせいで、見ず知らずどころか、数秒前に名前を聞いたばかりのサウロ某に対し、フランキーの胸の中には猛然たる、そして甚だ理不尽な敵対心が湧き上がる。
サウロにとってはハタ迷惑以外の何物でもない。


身長ネタでフランキーの闘争スイッチが入ったことなど知る由もないロビンは、懐かしい友を思い出し、語り出す。
「サウロだけは私にやさしかった。私は苛められっ子なのに、私と仲良くしたら自分も苛められるかもしれないのに、誰が何て言っても、気にしないで私と遊んでくれた」
「……」
「彼は苛めっ子達を怒ってくれた。彼は見るからに大きくて強かったから、誰も文句を言わなくなったの。嬉しかった…」
ロビンがサウロを褒める。
これがまた、何でかフランキーは面白くなくて口が尖る。


「そんなに仲良ししてたら、からかわれたんじゃねェの?おまえらデキてんのー?って。アッチッチーってさ」
フランキーは頬を膨らませ、少し意地悪を言う。
「そうね。からかわれたわ。お約束よね。黒板に相合傘書かれたりしてね」
ロビンはふふふ、と、とっても綺麗に笑った。
フランキーにとってロビンが綺麗に笑ってくれる話をすることが当初の目的だった。
筈なのに。
サウロの話でロビンがこれまでにない、いい笑顔を見せている事実に、少年は意味不明の衝撃を受けていた。


「からかわれて、ロビンは嫌じゃなかったの?普通、恥ずかしいじゃん」
「そうね。でも私は嫌じゃなかったわ」
その後に続くロビンの言葉と笑顔に、フランキーは衝撃の追い打ちを喰らう。
「だって私、サウロのこと大好きだったもの」
「……!」
「サウロも私を好きだって言ってくれたし。悪口言うヤツのことなんか気にするなって。だから私も気にしなかったわ」
「りょ、両想い、ってことか?」


好き、という感情に色々な種類があることをまだ学ばない少年は、幼くて短絡的な結論を導き出す。
ロビンはそんなフランキーを微笑ましく思いながら
「そうだったのかもしれないわね」
と呟いた。
「サウロは……私のこと、笑うと可愛いとも言ってくれたわ」
その言葉にもまた、フランキーは衝撃を受ける。


10年後のフランキーには、女と見れば褒め千切る、「可愛い」はただの挨拶にしか過ぎない女性至上主義者の友人が出来る。
その友人を見て
「ああ、世の中にはこういうヤツもいるんだ」
と学んだことは確かだが、自分もそういうヤツに『なれる』とも『なりたい』とも決して思わない。
20歳のフランキーは女の子に「可愛い」と言った経験はあるものの、現在進行形で惚れている女に巧い褒め言葉が全然出なくて難儀している。
まして、小学生の彼には「同級生の女子を可愛いと言う」なんて思いも寄らない。
サウロの発言は、青天の霹靂としか例えようがない。


「だから私、それからはどんなに辛くても笑うことにしたの。サウロがまた転校していなくなっちゃうことが分かっても」
フランキーが衝撃を受けまくっているうちに、ロビンの話には終幕が近づいていた。
ロビンの笑顔がそれとなく、暗くなる。
それがまた、フランキーは嫌だった。
「サウロの前では泣かなかった。笑ってた」
「でも、寂しくて泣いたって」
「最後にバイバイしてから、家まで走って、布団かぶって泣いたの」
「……」
「サウロがいてくれた間だけは、何にも苦しくなかった。楽しかった……あれから一度も会えないけど、元気でいるのかな…?」


彼は今、どこで何をしているのだろう。
ロビンは目蓋の裏で、懐かしい親友の顔を思い描いた。







「お、おれだって!」
突然、フランキーが大声を張り上げた。
さっきまで普通に話を聞いていたのに、一体どうしたの?
旧友に心を馳せていたロビンは心底驚いた。
フランキーの手はぎゅうとロビンを掴んでいる。


「ど、どうかしたの?フランキー」
「おれだって、もうロビンの友達だ!」
フランキーが自分の爪先に目を向けたまま、叫ぶ。
その内容に、ロビンは、は、と息を飲んだ。
「おれだって、学校でロビンが苛められてたら助けてやる。おれ、ケンカ強ェんだ。誰にも負けねェ」
「……」
「おれだって、ロビンのこと、す、す、好きだし、笑うといいなって思ってたぞ」


何がきっかけだったのかは分からないけれど、フランキーがサウロに対して対抗心を燃やしてくれているのはよく分かった。
対抗心を燃やしてくれたということは、自分のことを、サウロと同じように想ってくれたということ。
ロビンの胸の中がほんのり暖かくなる。
「うん。もしもフランキーが私のクラスメイトだったら、きっと私を守ってくれてたと思う。強そうだもの」
ロビンはフランキーの言葉に同意を示し、その小さな手を包むと、
「ありがとう…」
と心から感謝を述べた。


「おれも……本当の家族じゃない人たちと暮らしてる」
少しかすれた声でフランキーは言った。
ロビンは先日、フランキーの短い話で彼がトムの里子であることをすぐに察していた。
彼女がクローバーの元にやってきた何回目かの時、トムがそのうち里親になろうと思っている旨のことを口にしていたことを覚えていたからだ。
フランキーの逃走後、クローバーがロビンに彼の生い立ちを語って聞かせてくれた。
実の親に捨てられたこと。
施設に見学に来たトムに自分を売り込んだこと。
彼なりの苦労もあったろうに、明るく強く、多少風変わりに生きていること。


ロビンと自分の境遇は似ている、とフランキーは思う。
だが、フランキーが今、自分の生活を楽しく幸せだと感じていられるのは
「おれはトムさんと家族になれたから」。
ロビンが楽しく幸せに暮らせてないのは
「ロビンにはトムさんみたいな人が家族にいないから」。


だから、ロビンのことが『トムと暮らせなかった自分』の姿に思えて、フランキーは切なくなった。
「はかせの家族になればよかったのに」
と言ったら
「例え厄介に思ってても、私を放り出せない理由が、叔母さん達にはあったのよ」
と返事が来た。


ロビンは笑う。
簡単に割れてしまう、氷みたいな薄さで。
すぐに散ってしまう、花のような儚さで。
どうして笑うの?
何で泣くのを我慢するの?
泣きたい時はいつだって、泣けばいいのに。
フランキーの肩が小刻みに震え出す。


「どうしてフランキーが泣くの?」
「……バカ、泣いてねェ」


空色の涙が、ロビンの手にぽたぽたと落ちてくる。
ロビンは泣かない。
ロビンは泣けない。
だから代わりに、フランキーが泣く。
ロビンの心に溜まった泣けない涙が、フランキーの目から零れ出していく。
「笑うことは大切だけど……おれの前で……無理して笑うなよ」
「ありがとう」
ロビンはハンカチを差し出した。
けれど、フランキーが受け取らなかったので、ロビンは心優しい涙を拭いてあげた。







ロビンが古書店で過ごしている間、フランキーは何度も泣いた。
ロビンの過去の片鱗を耳にする度に、涙脆い彼はボロボロ涙をこぼした。
必ず彼は、「泣いてねェ」と言い張るのだけれど、そんな時は必ず、鼻水もヨダレも垂れていた。
自分のために涙を流してくれるフランキーの存在は、ロビンの心をずいぶんと救ってくれたものだった。



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