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フラロビのSS置き場。
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他には何ひとつできなくてもいい 'Cause I love you


『攻殻』のバトーと素子のCPは好きなんだけど、義体ゆえに肉体的な繋がりよりも互いの精神性に重きが置かれて、私的萌えの発展はない…(精神的なものは勿論大事なんだけど、肉体的要素が皆無になるとちょっと)。
素子はクールビューティーで過酷な過去持ちなんだけど、あの人、デレ要素皆無だし。
それを踏まえると、アニキのロボ化はロビンちゃんとの肉体的接触を遠ざけてしまいそうで、程々にして欲しい。


++++++++++





8. 守ってあげたい(後編)


「そっ…それから」
鼻をグズグズ言わせながら、フランキーは話を続ける。
「それから、おれはロビンの弟にだってなる。ロビンの家族になってやる」
「フランキー?」
友達はともかくとして、弟になる発言にはさすがにロビンも驚いた。
フランキーは腕でグイと顔を擦ると、キッと頭を上げる。


「今の叔父さん家族はロビンにやさしくないんだろ?おれはやさしい家族になってやる。ロビン、知ってるか?血が繋がってなくたって家族になれるんだ。トムさんだってアイスバーグだって、おれと血は繋がってねェけど、家族なんだ」
「……」
「はかせがじいちゃんで、おれが弟。スーパーじゃん」
唖然とするロビンを前に、フランキーは思いついたことを次々に口にした。


「な?そうしたらもう寂しくないだろ?」
「フランキー…」
「おれがすぐそばで悪いヤツからも守ってやる!」
涙で汚れた顔で、二カッ、と明るく笑うフランキーにロビンの肩の力が抜ける。
まったく。
強引なひとね。
クスクスと、だんだんと心がくすぐったくなってくる。
そしてついに、アハハハッ、と、ロビンが初めて声をあげて笑った。


「私はあなたのお姉さんなのね?」
ロビンはくっくっと笑いを噛み締めながら、水色の髪に手を伸ばす。
「よろしく、お友達で弟のフランキー」
柔らかい髪に指を挿し入れて、いいこいいこ、と撫でてあげた。
ロビンのポニーテールが楽しげに揺れている。
フランキーは嬉しそうに、涙で赤くなった目元を細くした。


可愛い友達と弟がいっぺんにできたわ。
なんて、ロビンがほんわりしていると
「よおし。いいコト考えた!おれも今日からここに住む。夏休みの間!」
とフランキーがとんでもないことを言い出した。
「え?」
「家族だもん。当然だろ?」
「え、それはそうだけれど、ちょっと、フランキー」
「決定ーィ!後で荷物持ってくるから」
それはさすがにどうかしら?大人の人にきちんとお話を通してから、
とか何とか、ロビンの語る至極当然のことはあっさりとフランキーの右から左へ。


思い立ったら吉日。
大人たちへの説得なんてどうにでもなる。
ただでさえ楽しい夏休みが、もっと楽しくなる予感。
フランキーの頭の中にはいくつものプランが浮かび上がって、そうしたらもう居ても立ってもいられない。


「おっし!おれってやっぱりスーパーだぜ!」
跳ねるようにして立ち上がる。
「外に遊びに行こう、ロビン」
フランキーはロビンの手を引っ張って、出来たばかりの姉、兼、友達を立たせた。
「え?今から?」
「うん。本なんか夜でも読めるじゃん」
「でも店番が」
「この店に客なんて来ねェって」


問答無用。
「ほら、早く早く!」
フランキーはロビンを眩しい太陽の陽射しの下に連れ出した。
ロビンは「しようがないわね」と言いながらも、笑顔でついてくる。
「この町、案内するよ!」
「フランキーに振り回されっぱなしね、私」
フランキーはニッと笑う。
手を繋ぐ、この綺麗な少女が自分の姉で友達であることを、早く皆に自慢したかった。


**********










ロビンは店内の隅にあるコンパクトなユーティリティに戻ると、トレーを作業台に載せた。
ふう、と大きな吐息をし、先程、フランキーの手が置かれた肩に、自分の手を滑らせた。
今でも彼の、重みと温もりが残っているような気がする。
カウンターから店内に目を向けると、生けられた紫陽花越しにフランキーが何やら思案顔でいるのが見えた。
「中身は少しも変わらないのに…外側ばっかり、大きくなって…」
その横顔を盗み見るロビンの眉が切なそうに顰められる。


明るくて、イタズラで、腕白で、やさしくて、涙脆くて、強引で。
あの手に引かれた先にはいつも、私の知らない世界があった。
いつも、私に、初めての世界を見せてくれた。
頭でっかちで凝り固まった私の世界観を、簡単にひっくり返して。
幼い頃の私が渇望しながらも諦念の彼方に押しやった宝箱を、私に取り返してくれた。
私の心を…救ってくれた。
フランキーは少しも変わらない。
あの頃と変わらず、私を慕ってくれる。


そう。
『あの頃と変わらずに』、フランキーが慕ってくれることに息苦しさを覚えたのは何時からだったろうか?
慕ってもらえるのはとても嬉しい。
フランキーとは、とても仲がいい、と自負も出来る。
でもそれは、あくまで「姉として」であって、姉でなければこの関係は築けなかっただろうし、逆に言えば、姉でなくなればこの関係は容易く崩壊する。
フランキーの隣に居続けることが出来なくなる。
それが痛いくらいに分かっているから、懸命に『姉』の仮面を被り続けている。
仮面を被っているから、息苦しいのだ。
息苦しくて堪らない。


「あの頃は…未来でこんな気持ちを抱くなんて考えもしなかった…」
むしろ、抱くのはとても難しく。
手の焼ける弟で。
でも遊び友達としては先輩で。
ロビンはフランキーと出会った頃を思い返して、淡く微笑んだ。
洗い物をシンクに並べ、蛇口を捻る。










**********


「よおし。いいコト考えた!おれも今日からここに住む。夏休みの間!」
そう言い放ったフランキーはその日の晩、本当に有言実行した。
クローバーに了承を得る前に、担いできたお布団セットをロビンの部屋に持ち込んで、その半面を占拠した。
「いいだろ?一緒の部屋で。きょうだいだからな」
アイスバーグと同じ部屋なんだから、ロビンとも同じ部屋な!
と、枕を抱えて布団の上を転げ回るフランキーに
「アイスバーグは男だけれど、私は女よ」
と言ってみても、
「だから何?」
と言われて終わりだった。
「小5ならもう、保健体育で習ったでしょうに……思春期……」


有無を言わさない同居の結果、ロビンは毎晩、フランキー少年のあどけない寝顔を眺めることになった。
隣人の寝相の悪さに中途半端な時間に起こされてみたり、肌蹴た薄掛けをかけ直してあげたり、寝苦しそうなら団扇で扇いであげたり。
しかし思いの外、互いの無関心という共同生活しか知らなかったロビンにとって、傍らのフランキーからかけられる『甘えからくる迷惑』はとても心が高揚するものだった。
家事や料理をすることで、フランキーやクローバーが感謝してくれたり、褒めてくれたりすることも彼女にとっては新鮮で、嬉しいことだった。
これまで「やって当然」と言われてきたロビンは俄然、ふたりが喜ぶことに精を出した。


フランキーが毎日連れ出してくれる『遊び』もロビンは本当に楽しくて楽しくて仕方がなかった。
フランキーが自分の遊び仲間を紹介してくれたので、ロビンは『多人数でする遊び』を生まれて初めてすることが出来て大いに喜んだ。
毎日毎日、数人の小学生と一緒に遊ぶ、ひとりだけ大きな少女を道行く大人がどういう目で見ていたかは分からない。
でもロビンは他人の目などどうでも良かった。


フランキーたちは、ロビンが自分らがとうに知っている遊びを何も知らない事実に、物凄く驚いた。
鬼ごっこもかくれんぼもやったことがないロビンの生い立ちを聞いて、フランキーはまた泣いた。
どんな遊びも、ロビンは目を輝かせて楽しんだ。
ロビンが本当に楽しそうだったから、フランキーもこれまで以上に楽しかった。
現役の小学生女子よりも、子ども返りしたロビンははっちゃけていた。


ロビンは殆どの時間をフランキーと一緒に過ごした。
トムの工場に足を運び、彼らの仕事風景を見学することも間々あった。
フランキーが初めてロビンをトムズの面々に引き合わせた時、アイスバーグは彼女の学校名を聞いて細い目をこれでもかと見開いて驚いていた。
後でクローバーからロビンの優秀さの詳細を聞いたアイスバーグは、それと分かるくらいにロビンに一目置いていた。
時々、アイスバーグがロビンに勉強を教わりにくるようになり、そんな時フランキーは不機嫌になった。
彼らをふたりだけにするのが嫌で、同じ卓袱台で夏休みのプリントをやっつけたりして、珍しく勉強している姿をアイスバーグに気味悪がられたりしていた。


ロビンがフランキーと過ごす夏休みは飛ぶように過ぎて行った。



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しばらくフラロビ妄想で生きていけそうです。
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