忍者ブログ
フラロビのSS置き場。
×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。


どっちも恋愛に不器用なタイプだと面白い。


で、結局船を降りる段になっても、どちらからも本心を打ち明けることもなくて、「またな」「またね」って笑って別れて。
決定的な言葉も、確かな約束もなくて、それぞれの道に進んだ後、胸にぽっかり空いた穴の原因を考えればいい。
そして、「見っとも無い姿を晒しても欲しい物は掻っ攫えば良かった、海賊だったんだから」って後悔しまくるといい。


++++++++++






73. 男子お悩み座談会 part2 (後編)


「てンめェ、このクソ野郎!ロビンちゃんを一体どんな目で見てたンだよ、この筋肉ダルマ」
怒りに燃える金髪グルマユにアロハの両襟を掴まれて、頭をガクガク揺らされる。
「どんな目て。サンジ、てめェと変わンねェよ」
と言えば、
「十二分に色情魔だ、クソ野郎!」
と意味が分からない。


「あの女神のようなロビンちゃんのバディを犯す妄想に耽りながら、他のレディ達とセックスして、抱いてンのがロビンちゃんじゃないと気付いたら中折れして、だからもう駄目だって泣いてたのか!知るか!」
てめェなんか、一生インポになれ!一生女抱くな!
サンジが再び喚き出したので、ウソップは「どうどう」とサンジを押さえ付けた。
ウソップはもうとっくに話についていけず、周回遅れも何周目だろう。


「わ、悪かった。おれが悪かったって」
フランキーは謝った。
「おれァ、てっきり勃たねェのは身体の問題だとばかり思ってたのよ。心因性、ってこともあるってまるっきり考えてなかった」
フランキーは両拳を床について、すまん、と男らしく(?)頭を下げた。
「そうと分かりゃァ、悩む必要もないじゃないの」
フランキーは勝手に自己解決した。


「結局なんだ?フランキーはロビンが相手だったらセックス出来るって話か?」
ウソップが端的にまとめると、サンジが
「おれはそんな結論、絶対ェに認めん!」
と叫んだ。
「もお、それはそれで置いとけよ!とりあえず、フランキーの話にケリをつけようぜ。解決の糸口見えたじゃん」
どいつもこいつもめんどくせーな、とウソップは思う。


やってられっか!
とサンジは席を立つと冷蔵庫から冷えたビールを3本取り出した。
「こんなクソ野郎の話、素面で聞いてられっか!」
とプルトップを開け、ごくごくと飲み下す。


「フランキー、お前はロビンちゃんが好きだってのは認めるンだな?」
フランキーは一瞬言葉を詰まらせる。
他人の前でそれを認めるにはエネルギーが必要。
大きく深呼吸をするとビールを一気に煽り、覚悟を決めたように、「ああ」と頷いた。
「認める、おれはロビンが大好きだ」


どすう、とビール缶を床に叩きつける。
缶はひしゃげ、フロアリングが缶底の形に丸く凹んだ。
「だからサンジ、もうロビンには寄るンじゃねェ、目障りだったンだ。前っから」
「何だとコラ…上等じゃねェか、クソ野郎…」
睨み合う目と目の間に火花が散る。
「何でそこで喧嘩を売るんだよッ!てめェも買うな!」
ゆらり、と立ち上がろうとするふたりをウソップは懸命に引き止めた。


「喧嘩腰イクナイ。ここは冷静に話し合おう」
大体、お前の悩みを聞いてんだからな、とウソップに釘を刺され、フランキーは渋々大人しくなった。
「で、それに気がついたのが、最近、か」
「どういう経緯だ?」
「先だっての雑誌記事の一件で……色々あって。気がついた」
ロビンは遠の昔に自分の中で、『姉』ではなく、『惚れた女』になっていたことに。


「そうだな…あの記事の内容は、なかなかヘビーなものだった」
サンジが重たい口調で、紫煙を吐き出した。
「おれだけが、ロビンの過去を全部受け止めてやれるんだと再確認した。おれはロビンを幸せにしてやりてェ」
「おれだって、ロビンちゃんの全てを受け止められるぜ!過去が何だ?大事なのはおれとロビンちゃん、ふたりの薔薇色の未来だァ!」
確かにサンジならロビンを過去ごと受け止めるキャパシティを持っていそうだが。
フランキーは「言ってろよ」と浅く笑った。


「ほお?怒らねェとはなァ」
嫌に余裕を見せるフランキーに、サンジは片眉を上げた。
「巷に流れた話だけがロビンの真実じゃねェからな。おれはロビンから直々に全部聞いた。それはもう誰にも話す気はねェとよ」
自分が背負った重みと、サンジが背負おうとしている重みは違うと言うフランキーに、「成程ね」と、サンジは深々と吸い込んだ白煙を吐き出しながら言った。


「でもよ、ロビンちゃんがお前に全てを話したのは、お前の立ち位置が『弟』だからなんじゃねェの?」
サンジの言葉にフランキーの顔が強張った。
「人間、誰かには自分の秘密を知ってて欲しい、そういう気持ちは分かるぜ?重たい秘密を打ち明けられた、ってことは、その相手に信頼されてる証だってことも」
サンジは吸い差しの火を灰皿の中で捩り消した。


「でもさ、本当の意味で『好きな男』に洗いざらい言えるモンか?躊躇しそうなもんだがな」
サンジは新しいタバコを唇に挟む。
フランキーの目が据わり、その瞳に尋常ではない色が差す。
「さっきも言った通り、ロビンちゃんはお前に確固たる信頼を寄せてるから、他人には言えない秘密を言えたんだろうよ。ただそれは、お前が『赤の他人』じゃねェから、『弟』っていう、彼女にとっての唯一の『家族』という不変のものだか…ッ」
「やめろ、フランキー!」


フランキーの片腕が伸びて、サンジの喉輪を掴んだ。
鉤のように曲がった指が首に喰い込み、みし、と骨が鳴った。
サンジの両手がフランキーの腕を握り、引き放そうとするもびくともしない。
「か…はッ」
息が詰まったサンジの唇からタバコが落ちた。







もう黙れよ
口を開くな


そんなこと、外野に言われなくても分かってる
おれが『弟』だからロビンに信頼されてるってことくらい
おれは『弟』だからロビンの『好きな男』になれないことも痛いくらい知っている


だけどロビンは言ったんだ
フランキーにだけは嫌われたくなかったって
だから過去を黙っていたんだって


本当はおれに過去を話すのを躊躇してた
おれに知られたくなかったんだ


ああ
おれを『弟』って言うな
言うンじゃねェよ!







「やめろ、っつってんだろ、フランキー!」
ウソップのスリングショットが放った玉がフランキーの眉間にヒットした。
フランキーの膝の上に割れたドングリが転げ落ちる。
「う…痛ゥ…」
思わず両手で額を押さえたフランキーからサンジは解放され、ゲホゲホと咳込んだ。


「馬鹿!痛ェのはサンジだろ。おい、大丈夫か、サンジ」
「な、何とかな」
声掛けをするウソップにサンジは答え、赤い手形のついた喉元を摩った。
「おい、どうしたんだよ、フランキー」
手の平で顔を隠し俯いたままのフランキーの脳天に、ウソップは呼びかける。


「こんな至近距離で眉間狙いやがって」
「このおれが素手でお前を止められるかよッ」
「流石の馬鹿力だな。後もうちょっとで死ぬとこだったぜ」
「悪ィ…サンジ。あんまりにも図星過ぎて、ムカついてカッとなった」


フランキーは、バシ、と自分の膝を打った。
「『弟』、てのがてめェの殺気のトリガーポイントか?」
「…ああ。すまん」
フランキーはサンジの首を締めた手で、自分の頭をバリバリと掻いた。


「サンジの言う通りだ。ロビンにとって、おれは『弟』だから…全幅の信頼を寄せてもらえる。おれが『弟』だからロビンも…普通、他の男に言ったらドン引きされるような過去も、平気で言えンだ」
「フランキー」
「ロビンはおれに『弟』を求めてる。逆に言えば、そういう目でしか見てもらえねェんだ、おれは」
改めて言葉にして、フランキーは胃が痛くなる想いに打ちひしがれた。
「ロビンちゃんには言う気はねェのか?好きだって」
フランキーは力無く、首を縦に振る。


「おれが、ロビンに好きだ、なんて言っちまったら、ロビンの大事な『弟』はこの世から消滅しちまう。凄く『弟』を可愛がってるってのに」
そうしたらロビンが可哀想だろ、とフランキーは笑う。
「そんなこと言ってたら、お前…一生、ロビンに告白出来ねェじゃん」
「告白なんかする気はねェよ。おれはずっと、ロビンの『弟』でいる。ロビンがそれを望んでンだ。おれが『弟』でなくなったらロビンを悲しませる。おれはロビンに、幸せでいて欲しいンだ」


「もしかしたら、ロビンが付き合ってくれるかも、って可能性に賭けねェの?」
ウソップの言葉にフランキーは大袈裟に肩を竦めてみせる。
「考えてもみろよ?向こうは6つも年上なんだぞ?おれの小学生時代も知ってる、散々面倒もかけてきた」
「まあ、な」
「おまけに知識の貧富差もハンパねェ。こちとら、品、なんてモンも持ち合わせてねェしな」
「ああ、見るからに美女と野獣だもんな」
「そんなヤツに、ロビンが惚れると思うかよ?」
サンジとウソップは揃って溜息をついた。


「だから…代用品、って言われても、おれは本命を彼女に出来ない理由があったわけだ。何とかなれば、自分を誤魔化していこうと…」
フランキーは自嘲を浮かべてビールを飲んだ。
「そんでどうすんだ?ロビンに何にも言わねェってんなら」
「この先ずっと、中折れだぞ?」
部屋の中には3人がビールを啜る音だけが響く。


フランキーは後ろ手に手をつくと、天井を見上げて明るく言った。
「もう、いいかなーって思うんだ。女作るの。女はこれまでに充分抱いたしな。代用品にされる相手が気の毒だし、時間と金の無駄だし」
はあー、と感嘆にも似た声をウソップは出した。
「多分もう、ロビンじゃねェとダメなんだ。抱いても、気持ち良くねェんじゃな、意味がねェ」
「ウソップには言えねェセリフだなァ」
「何でそこでおれなんだよ」


「じゃあ、フランキーはロビンちゃんが他の男に奪われていくのを黙って眺める未来を選択するわけだ」
サンジが咥え煙草でニヤリと笑う。
「まーな。でも黙って見てる気はねェよ。とりあえずはロビンに近づく野郎は蹴散らすし。こんな小舅付きでロビンと一緒になれる猛者はそうそういねェだろ」
「おれがいる」
とサンジが名乗りを上げた。
フランキーは目を丸くした後に、ウハハ、と笑った。


「別にいいぜ?ロビンがお前のことを好きだ、って言うならな」
「止めとけよ、サンジ。あんな風に笑ってるけど、実際にロビンが結婚するってなったら…」
血を見るぜ?
ウソップは話途中でサンジの首に目を遣った。
くっきりと残る、フランキーの狂気の形に思わずぞっとする。
サンジも、ビールを飲み下す度に感じる喉の痛みに、笑うフランキーの懊悩と覚悟を知る。


「何にしても、迷惑をかけた、悪かった」
と頭を下げながら、「いつもありがとな」と口にするフランキーに友人達は苦笑いを隠せない。
「気にすんな」
「気にするべきは、てめェがさっき缶で凹ませたおれンちのフローリングだ。責任もって直しやがれ、クソ野郎」
とサンジに凄まれ、フランキーは
「請負いました…」
と返事をした。


**********









その日から今日まで、フランキーは言葉通り、彼女を作ったことはない。
告白をされても断って。
ロビンのために、女日照りを甘んじて受けている。



next
この記事にコメントする
Name
Title
Color
E-Mail
URL
Comment
Password   Vodafone絵文字 i-mode絵文字 Ezweb絵文字
カレンダー
04 2024/05 06
S M T W T F S
1 2 3 4
5 6 7 8 9 10 11
12 13 14 15 16 17 18
19 20 21 22 23 24 25
26 27 28 29 30 31
ブログ内検索
プロフィール
HN:
Kuu
性別:
女性
自己紹介:
しばらくフラロビ妄想で生きていけそうです。
人型の何かです。

     
PR
Template "simple02" by Emile*Emilie
忍者ブログ [PR]