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フラロビのSS置き場。
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萌えって幾らでも湧いてくるから困るよね。


W7に戻って、最初は面白可笑しく過ごしているんだけど、そのうちに原因不明の空しさに襲われて、何度逡巡してもその挙句にロビンに行き当たるフランキー。
小型の超高速艇でも何でも即行で作り上げてウェストブルーに向けて出航、ロビンがオハラに出してくれる船を探しながら苦心の末に故郷に辿り着くと、そこには既に仮屋(にしてはやたら立派なヤツ)を建て終えたフランキーが「遅かったな」なんて言いながらコーラを飲みつつ出迎えるといい。
驚いて目を丸くしているロビンに「ヒマだったからちょっと来てみた」とかなんとか、相変わらずに本心を言えないと尚良い。


++++++++++






74. 恋は歌になれ(前編)


「ロビンちゅわーん!ナミすわーん!おまたせー!」
ピンク色の気色悪いフォントで表現されるサンジのレディー向け挨拶が店内に轟いた。
「お邪魔しまーっす」
続いてウソップの声。


「来た来た」
ナミはアイスティーのグラスを片手にスツールを降りた。
「ロビン、さっきの話。サンジくんにもしてみて。放っといてもこっちに来るだろうから」
ナミはロビンに目配せをして、3人の元に向かう。


「やっと全員揃ったわね?今から説明をするから良く聞いて?」
「だーかーら。おれは引き受けるなんて言ってねェ。おい、ウソップ、おまえもそうだろ?」
「いや、引き受けた。おれはカヤ経由で頼まれてるから」
「……サンジ……は、アレだしな」
「おれはナミさん、ビビちゃん、カヤちゃんのためなら、例え火の中水の中!どんなことでも御用命ください」


ロビンは4人のやり取りを微笑ましく聞きながら、サンジとウソップのための飲み物を支度する。
「うちの大学でやるフェスタのブースをね、アンタ達に作って欲しいのよ。タダで」
「やっぱり!ナミの頼みは絶対に持ち出しになるから嫌なんだよ!いつも手弁当じゃねェか」
「ウソップはデザイン、フランキーはそれの製作、予算と期限はこのプリントを見てね」
「おい!人の話を聞けよ!」
「諦めろよ、フランキー。ナミのゴリ押しが覆ったことなんて、今だかつてねェだろ?」
「お前はいいよ、カヤのため、っつー大義名分があンだろ?それにデザイン自体には材料がいらねェだろーがよ。こんな予算で材料なんざ用意出来っか?トムズの資材を当て込みやがって」


「今日もお茶菓子持って来たよー」
サンジがロビンの元に、今日も大袋を届けに行く。
「おい、ナミ。サンジは話聞かなくていいのか?」
とのウソップの指摘に、ナミは手を振る。
「サンジくんは当日のコンパニオンだから」
それに、サンジにはロビンの本音を訊き出すという使命がある。


「とりあえず、低予算で高品質の物をお願いね」
「イメージとか希望を教えてくれよ。このプリントじゃ大まか過ぎてデザインも何も」
「おれは引き受けるって言ってねェからな」
「フランキー、この日トラックを出してもらいたいんだけど。トムズの車借りられる?」
「おおい!」


フランキーの形勢不利を見て取って、結局、引き受けさせられるわね、とロビンは予想する。
「今日のはハート形のビタースウィートなコーヒークッキーとぉ、黒砂糖風味のビスコッティ」
「いつもありがとう。助かるわ」
サンジはカウンター上のネコ瓶を入れ替えて、ウソップにアイスコーヒーをデリバリーして戻って来たロビンに、本日のクッキーの説明をする。


「ほろ苦い味はまさにおれとロビンちゃんの恋の味で」
「サンジくん、訊きたいことがあるの。ちょっとお時間いいかしら?」
「貴女を想う、おれの苦しい胸の内ですか?」
「違うわ」


さっきまでナミが座っていたスツールに腰かけるように促して、サンジのコーヒーをカウンターに置いた。
「ロビンちゃんの訊きたいことって何?」
ちょっと変なことかもしれないけれど、と前置きをしてロビンは言う。
「フランキーが最近、片想いで悩んでいるみたいなの。サンジくん、何か知ってる?」
サンジはコーヒーを口に含みながら、片眉を上げた。


「何で、おれに訊くの?」
「ナミが、サンジくんに訊けば分かるって言うから」
「ふうん。ナミさんは何て?」
「詳しいことは知らない、ただ、フランキーが好きな相手は私みたいなタイプだと」
「ロビンちゃんみたいな?」
「見た目とか、年齢とか、学歴とか」
「はー」







フランキーが意中の女の名前を自爆に近い形で暴露してから、彼これ1年半。
あの日の言葉を律義に守り、女も抱かずにロビン一筋に邁進しているフランキーに、サンジは一種の畏敬の念みたいなものを感じている。
全世界のレディーに愛を捧げるスタンスのサンジと、無節操にスポーツ感覚でセックスしていたフランキーとでは方向性はまるで違うけれど、やってたことは同じなわけで、サンジとしては一人の女性のために他を切り落とすことは出来ない。


しかも意中の女には決して想いを告げないという意固地な程の意志を持っている。
これを持ち続ける以上、誰ともセックスが出来ないわけで、到底サンジには真似が出来ない。
純粋に凄いと思う。
が、それも最近は綻びが出てきている気がする。
それも仕方がないと思う。


フランキーはまだ20歳、本当ならヤリまくりたいお年頃。
けれど、簡単に触れられるところに最愛の女性がいるのに、でも触れられなくて、女日照りを続けてて。
いつか誰かが掻っ攫っていってしまうのではないかという不安感に毎日浸りつつ、我慢と忍耐を重ねている毎日。
苦悩している友人に、もらい泣きしそうな今日この頃だ。


何とか楽にしてやりたいとも思うけれど、本人は絶対に告白しない決心が揺らがない。
だとするとその相手、ロビンがフランキーの想いに応えてくれないだろうか、とも期待するのだけれど、この冷静沈着な女性はなかなかガードが硬い。
本音をなかなか晒さない。
訊ねても、年上の余裕でのらりくらりと交わされる。


でも、今日のこれはいつものロビンとは違う気がする。
通常はこちらサイドがロビンの情報を訊き出そうとして問うのだけれど、今回はロビンの方に訊きたいことがある。
それを上手く、さりげなく誘導して、ロビンがフランキーをどう想っているのかを訊けたら御の字だ。







「フランキーの好きなひとって、どんな感じなの?私みたいと言われてもピンと来なくて」
腕を組み、片手で頬を覆うロビンの眼差しは甚く真面目。
本気でフランキーの好きな相手を知りたがっている様子。
「サンジくんは会ったこと、ある?」
グラスに口をつけつつ、ロビンを観察する。


「幾ら弟分って言ってもさ、デリケートな内容じゃない?それを聞いて、ロビンちゃんはどうしたいの?」
ロビンは眉を顰めて、爪を噛む。
「何か…私の立場でアドバイスしてあげられたら…フランキー、辛そうなんだもの」
そう言うロビンの表情も、サンジには辛そうに見える。
「それでフランキーに彼女が出来ちまっても、いいの?」
「いいも何も…もうずい分、彼女を作ってないのでしょう?本人、そう言ってたわ。その好きなひとのために、ずっと独りでいるのだと」


ロビンは笑顔を見せる。
綺麗な笑顔なのは否定のしようがないが、サンジにはその笑顔が作り物かどうかが分からない。
『姉』として『弟』を気遣う、いつも通りの発言以外のニュアンスが嗅ぎ取れない。
「フランキーにはいつも笑っていて欲しいから。私はフランキーに幸せでいて欲しいもの」
ふたり揃って、同じことを言う。


「だから上手くいくようアドバイスしたい?」
「そう。駄目かしら?やっぱり私じゃ…フランキーにアドバイス、出来ないかしら…元気出して欲しいのだけれど…」
ロビンは本当に心配そうな顔で、我が事のように悩んでいる。
フランキーに少しでも気があったら、恋愛の後押しなんてしようと思う筈、ないよなァ…、とサンジは考えた。


「そうだなァ…まず、フランキーの好きなレディーには、おれも会ったことがある。ナミさんの言う通り、『ロビンちゃん』、だな」
サンジは、『フランキーの好きな相手がロビンに似ている』と言ったナミの意図を汲んで、口裏を合わせ、今一歩踏み込む。
「そうなの…シスコンだからさもありなん、とは思っていたけれど…」
本人は至って、それが自分だと気付く気配もない。
天然なのか…、それとも彼女にとってフランキーは、全くの守備範囲外なのか…。


「どういう関係の人?私くらいの年齢ならお仕事している人?」
「ロビンちゃん、小姑になってるよ」
サンジに指摘されて、ロビンは「本当にね」と苦笑しながらも
「それで、どういうお仕事…」
と追撃を止めない。


「…本に囲まれた仕事をしているよ」
「本当に、私みたいなひとなのね。大学の図書館の、司書?」
「アイツが言わないのに…おれの口から特定しちまうのはちょっと」
「そ、そうよね」


今日のロビンは余裕があまりないような気がする。
サンジが
「気になるの?」
と訊ねると、
「気になるわ」
と即答された。


「だって、フランキーが嬉しそうにいつも笑えるようになるかどうかの瀬戸際だもの」
ロビンの瞳は本当に真剣で。
とにかくフランキーの幸せを第一義に考えているのが伝わってくる。
その点では、ロビンもフランキーも同じだ。
相手のことが、大事。


「ここのところのフランキーは、本当に苦しそう。私にその人を重ね合わせてるのね、凄く…瞳が寂しそうなのだもの。何とかしてあげたいわ、微力でも」
どんな形でも、これだけお互いに想い合っているのなら充分じゃないか、という気もしてくるサンジだった。



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