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フラロビのSS置き場。
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「嫁に来ないか?」


時折、最寄りの島に買い出しに行ったりしながら、湖から本を引き上げては乾かして、その本の保管庫を作ったり、それまでの人生が嘘みたいにのんびりとふたりで生活して。
膨大な本の引き上げが間もなく終わる頃、話の流れで「おまえもW7に来るか?」ってなって。
ああ…脳内でフランキーとロビンが会話を始めてしまった、ここには書き切れない。


++++++++++






75. 恋は歌になれ(後編)


「フランキーは、どうしてそのひとに想いを告げないの?フランキーはあんなにモテるのだもの、相手の年齢なんて気にしなくても」
「相手のひともね、フランキーのことは憎からず想ってるよ。でも、『弟』キャラなんだよ、結局」
サンジの説明に、ロビンは
「ああ…成程ね」
と即座に納得した。


「『弟』としてしか見てもらえてないから、自分から『弟』キャラを取ったら、きっと彼女にとって自分の存在価値がなくなっちまうだろうから、言わない。だったら、『弟』扱いされるのは辛いけど、『弟』キャラを保ったままずっと傍にいる方がいい、ってさ」
「だからなの…」
だから片想いを続けているのか、とロビンは切なく思った。
「フランキー…不憫…」
「本当に」
ここまで言っても当人に分かってもらえないフランキーは、心底不憫だ。


「ねえ、ロビンちゃん」
サンジは『フランキーの恋を一緒に悩んでいるいい友人』顔を作って、ロビンに語りかける。
こういう時は興味本位な表情と質問ではなくて、同じ悩みを分かち合う同士、みたいなやり取りの方がいい。
ロビンのような賢い女性は尚更だ。


「同じくらい年上の女性として…ロビンちゃんはフランキーをどう思う?男性的な魅力あるように見える?おれから見たら、ゴリラみてェな、馬鹿で、粗野で、腕っ節だけが取り柄の乱暴者なんだけど」
ワザとフランキーを悪く言ってみた。
すると、ロビンはムッとした声で
「そ、そこまで言うことないと思うわ」
と反論した。


「フランキーはやさしいひとよ?明るくて、真っ直ぐで。私は、フランキーに男性的魅力があると考えるわ。頼り甲斐もあるし、既に手に職をつけているし。確かに泣き虫で甘えん坊だけど…」
ロビンは結構、フランキーに好印象、高評価。
ラストのマイナス点も、母性本能をくすぐる系だとポジティブに受け取れないわけでもない。
それほど感触は悪くない。


「なら、そういう部分もひっくるめてさ、どう?ロビンちゃんみたいな女性は、フランキーを彼氏に出来る?そうだなァ…ロビンちゃんの年齢だと結婚も視野に入れるだろうから、生涯の伴侶として見れるか、ってのもクリアしないと、彼氏には出来ないよね?」
「そう、ね…」
「そうするとさ、まだ大学生ってのもネックだよね。相手は社会人だし…」
かなり緻密にシミュレーションをしているのか、ロビンはしばし黙り込む。


「そうか…ロビンちゃんも答えに窮するのか。フランキーはあんなんだからなァ、ガキならともかく、きちっとした大人には相手にゃしてもらえないよな。最初から見込みのない恋だったんだろ。片想い実らず、しばらくはこのまま…」
サンジの煽りに、ロビンはフランキーの援護に回る。
「フランキーは何にも問題無いわ。だって私はフランキーと…!」
「私は…フランキーと?」


つい釣られて、意気込んでしまった自分に気がつき、ロビンは一端口を噤む。
サンジにはロビンが猛スピードで考えをまとめているのが分かった。
「私は、フランキーと…恋人にだって、伴侶にだってなれるわ。…私が、そのひと、ならね」
さっき、ロビンが色めき立ったように見えた気がするサンジは、相変わらずに取り澄ました白い顔に、低く唸った。


「私はフランキーの『おねえさん』だから。私の意見は例え話の域を出ないけれど…」
「ん?ちょっと待って」
サンジは額に指を当てた。
「実際問題としてさ。もしも、フランキーが『弟』としてではなくて、『男』として想いを伝えてきたら、ロビンちゃんは受けるの?」
「その話、さっきナミともしたのよ?」
流行ってるの?、とロビンは苦笑した。


「受ける、って返事をしたわ。だって私はフランキーに幸せになって欲しいのだもの。それを…まぁ万が一、フランキーが求めるのなら」
その万が一があり得ないけれど、とロビンは淡く笑った。
「フランキーが幸せになるなら、ロビンちゃんはフランキーを『弟』として見ないでもいられると?」
「話の構造上はそうなるけれど、フランキーは私を『姉』と慕ってくれているから、本当に絵空事に過ぎないわ。それに私だから、フランキーの幸せに視点が行くわけで、フランキーの好きなひとには当てはまらないかもしれない」


サンジが少し考え込んでいる。
受けない、と返事をした方が良かったのかもしれない。
でも、どうしてか、この問いには嘘がつけなかった。
サンジはストローでグラスの中をくるくると掻き回した。
「ロビンちゃん的には、6歳年下の男は充分許容範囲、ってことか」
ロビンは小さく息をついた。


「逆を問えば…6歳も年が上の女なんて、恋愛対象になるものなの?」
「なるよ。レディーは幾つになっても愛すべ」
「サンジくんの私見はいいわ。特殊だから。一般的に、の話」
「それこそ、『愛があれば年の差なんて』ってヤツだよ」


ロビンは額に手を当てて、溜息をつくように笑う。
「年が…下のひとの方がどうしたって有利なの。今はどうあれ、時間が流れれば自然と社会人になる。子どもっぽさを気にしていても、気が付いたら大人になっている」
サンジはロビンの表情に留意しながら、話に耳を傾けた。


「数年後、彼がれっきとした大人の社会人になった時、自分が年下だなんて気にならなくなっているわ。でも、6つも年上の女は…先に老いていく自分と、彼との年齢の差が、気にならなくなる日なんて来ないの」
ロビンの眼差しが翳る。
「24と30、34と40、44と50…。それが逆転することはなくて…彼の目が他の女のコを見る度に、やっぱり若い方がいいな、と考えていたらどうしよう、って。愛していると言われても、きっと、その不安は拭えない」


「ロビンちゃんも…好きなヤツがいるんだね。それも、年下の」
サンジが探るように自分を見ていることに気がついた。
知らず、自分語りをしてしまった。
考えてみたら、自分の方がサンジよりも人生経験は豊富だけれど、恋愛経験は彼の方がずっと長けていた。
ロビンには恋愛経験は皆無。
サンジは女性の心の機微に敏い人だった。


「ロビンちゃんの好きな年下って、おれ?」
困っている自分のために誤魔化してくれるサンジのやさしさに、甘えることにする。
「ふふふ。どうかしら」
ロビンはいつも通りの顔で笑った。


「とりあえず、フランキーのことだけど」
「ええ」
「ロビンちゃんが、年上女性としてのアドバイス、なんてしなくていいよ。そんなことしたら、おれがバラしたってすぐバレちまう。口が軽いヤツ、ってフランキーに思われたくないしさ」
「それもそうね」


じゃあ、どうやって元気づけてあげればいいのかしら?、と思案するロビンにサンジは言った。
「ロビンちゃん…アイツにやさしくしてやってよ」
「やさしく?」
私、フランキーにやさしくしてないように見える?実際、してない?、と心配顔になったロビンに、サンジは
「そういう意味じゃなくてさ」
と、首と手を振った。


「アイツさァ…多分、ロビンちゃんに対しても背伸びしてるとこあると思うんだ。子ども扱いされたくない、一人前の男として認められたい、みたいなさ」
サンジがフランキーをチラリと見ると、「いつまでロビンと話してんだよ、てめェ!」って顔で睨んでいた。
早いとこ切り上げないと、後で本格的に殺されるかもしれない、と話のまとめに入る。


「だから基本的に、おねえさん目線で接するんじゃなくて、一女性として、さ」
「何だか、難しいわ」
ロビンは眉間に皺を寄せて、本当に難しそうな顔をしている。
『姉』の仮面を被っていても本心を隠しきれなくて難儀しているのに、それを外してしまったら、恋心の抑制が利かなくなってしまいそうで怖い。


けれど、サンジに
「そうだとは思うけど。でも、ロビンちゃんに『大人の男』として接してもらえたら、アイツきっと自信がつく」
と真摯な目で言われたら、
「分かったわ。出来る限り頑張るわ」
と返事をするしかない。


「コーヒー御馳走様。じゃあ、そういうことで」
とサンジはフランキー達の元に向かう。
ロビンは表向きはにこやかにしながら、心の中では「どうしよう」を繰り返した。
一番大事なのは、フランキーが幸せであること。
彼が悩み事を払拭し、太陽みたいにいつも笑っていられること。


「フランキーの、自信…」
おねえさんではなく一女性としてフランキーに接する自分、を脳内シミュレーションするロビンの耳にはウソップのお代わりオーダーの声が全く届かないのだった。



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