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フラロビのSS置き場。
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『ワンピース』の世界には鉄とワポメタルしかないのだろうか?


バルジモアの爆発事故で前面の皮膚が吹っ飛んだ姿に、生身との接合部はホントどうなってるの?、と思わざるを得ないのだけど、何にしても鉄人フランキーは鉄の骨格に人工筋肉、それを人工皮膚で覆っている、でいいのかな?
考え出すと頭蓋骨は?背骨は?変えたんならどうやって?ひとりで改造したんでしょ?となってしまうので、能力者じゃないくせに不思議人間、としか言いようがない。
ご立派様が生身なら、まぁいいか。


++++++++++






78. Reset -学びの雨-


「あー!食った食った!」
フランキーは仰け反るようにして伸びをして、身体いっぱいで満足感を表した。
「ロビン、美味かった!ご馳走様!」
「お粗末様でした。喜んでもらえて良かったわ」
ロビンはテーブルの上を綺麗にしながら、フランキーからの絶賛に嬉しそうに頬を染めた。
フランキーは見るからにご満悦で、見ているロビンにも満足が感染ってくる。







ショッピングモールでのロビンとのデートも大成功だったと思う。
ホームグラウンドでないために知っている顔もないから、ロビンと一緒に歩いていても誰も『姉弟』だなんて言い出さないし、茶化さない。
だから頑張って、ちっと押してみる、を実践してロビンの手を握ってみた。
指を絡めてそうっと折り曲げると、ロビンもゆっくりとそれに応えてくれた。
それがどれだけフランキーを有頂天にしたか、隣を歩くロビンは分かりもしないだろう。


アミューズメントパークに自分から誘ったくせに、ロビンはこの手の場所に来たことが一度もなかったらしく、見る物全てが珍しい彼女は好奇心旺盛な瞳を少女のようにきらめかせていた。
自分では上手く出来なかったゲームをフランキーが難無くクリアしてみせると、恥ずかしくなるくらいの賞賛の嵐を浴びせた。
フランキー的にはゲーセンなんて特別な場所でも何でもないし、取り立てて目新しい物など何一つなかったけれど、ロビンが一緒というだけでとにかく新鮮で楽しかった。


カートを押しながら買い物をしてても、ロビンは老若男女の衆目を集めて、同時にフランキーにも向けられる羨望と嫉妬の眼差しは非常にフランキーの優越感をくすぐった。
精肉売り場でひき肉を選ぶロビンを、フランキーが少し離れたところで荷物番しながら待っていると、売り場のおじさん店員が、
「お兄ちゃんの彼女、物凄い別嬪だなあ」
と声をかけてきた。


自分とこの商店街だと『姉弟』がデフォで、それ以外の関係で誰も見てくれないから、初めて『恋人同士』と言ってもらえたフランキーは、目の前にいるおじさん店員を心底、「いい人だ…」と目頭が熱くなった。
振り返ったロビンと目が合う。
ロビンはにっこりと微笑むと、その唇を「もう少し待ってね」と動かした。


「おれの彼女、美人でしょ」
とフランキーが調子づくと、おじさん店員は
「しかも彼女、お兄ちゃんにぞっこんと来たもんだ。お兄ちゃん、幸せだねえ」
と来た。
さすがにそれはねェよ、と心の中で苦笑する。
ぞっこんなのは、おれだけだ。


両手いっぱいの買い物袋をロビンのキッチンに届けた後、フランキーは一端トムズに戻ってシャワーを浴びた。
湿気でベタベタで気持ち悪いのもあったし、念のため、小奇麗になってみた。
隣家に戻ると早速、ロビンがひき肉と格闘を始めていたため、料理が出来上がる間、宿題の続きをすることにした。
古書店は灯りが落ちていたので、スポーツバッグを手に二階へ上がる。
そして図書室のカウチに腰かけて、ロビンの仏訳を自分の字で書き写す作業をしながら、呼ばれるのを待った。







そんなこんなで食事も終わり、今は向かいに座るロビンと酒の杯を傾けている。
フランキーが溢れんばかりの充足感に浸っていると、ロビンが
「良かった…」
と呟いた。
「何が?」
と訊ねると
「少しはフランキー、元気になったみたいで」
と返って来た。


「私では好きなひとの代わりにはなれないのは分かってるけど…でも、フランキーの明るい笑顔が見られて嬉しいわ」
「そんなにおれ、おかしかった?」
「何だか辛そうだった。今日も…とても…」
「……」


フランキーが複雑そうな表情を浮かべている。
それがとても大人びていて、ロビンは瞳を細めた。
「フランキーは…そのひとのことがとても好きなのね」
フランキーが目を上げると、ロビンはその細い指でワイングラスの縁を撫でていた。
「1年半もそのひとのために独りぼっちで…」
ロビンはその相手を、甚く羨ましく思う。


「前は彼女のいない時期がなかったのにね。次から次へと途切れ目なく…呆れるくらい」
昔を思い出して、ロビンは苦笑する。
フランキーを辛そうだと言う自分もまた辛そうだったロビンが苦笑いながらも、笑顔を見せたので、しょうがないな、とフランキーは己の見っとも無い過去話に乗る。
「おれが好きなヤツを探さなくても、向こうから付き合いたいってのがやってきて、ちょっといいなと思えばとりあえず付き合ったからな。オレもヤリたい盛りだったし」
頭の後ろで手を組んで天井を見上げる。


「まだ20歳だもの。今も盛りでしょ?」
ロビンに興味深々な瞳で露骨に言われて、
「まーね」
と言いつつ、少し恥ずかしい。
「でも今は…」
「今は?」


自分の言葉を複唱し話を促すロビンに、フランキーはニヤリと笑う。
「何?ロビン興味あンの?おれのセキララなセックス事情」
「ま、まぁ…ないと言ったら…嘘に、なる、けど…」
「へーえ」
とニヤニヤすれば、
「フランキーが話したくないなら、無理しなくても」
と赤い顔を背けた。


好きな女に向かって話す話でもねェよなァ、と内心考えながら、ぽつりぽつり、と酒の肴にでもと語り出す。
「知り合ってからずいぶんになる女がいて…彼女のことはずっとそういう対象に見てなくて…でもある日、気になり出したら…その時付き合ってたヤツを抱けなくなった…抱いても、気持ち良くなくてさ。他の女でも試したけど、ダメだった。萎えちまうのよ」
ラムコークで舌を濡らし、苦々しく過去を笑う。


「中折れしたときゃァさすがにショックだったなァ。男としてソレどうよ、って」
「……」
「惚れたヤツ、抱いてるつもりになっててよ……目を開けたら違う女で。もう、どうしようもねェよなァ…」
目の前に、その惚れた女がいる。
「もう……ダメなんだ。彼女、……でないと。ヤリたくねェ」
ロビンに訴えるようにして、言葉を吐き出した。


「ロビ…」
「フラン…」
「いいよ、ロビンからで。何?」
「そのひとに告白、しないの?」


サンジから、フランキーが告白しない理由は聞いたけれど、本人の口からも聞きたかった。
「……してもダメだと思うから、しない」
こんな言葉を確認したところで、時限式の小さな自己満足しか得られないことは分かっているのに。
「どうして?モテるんでしょ?女の子と付き合った経験たくさんあるじゃないの」
「それがさァ…、おれって告白されてばっかでよ、自分からってのは、一度もなくて」
情けねェよな、とフランキーは頭を掻く。


「それに……おれなんか、相手にしてもらえねェのよ」
「どうしてどう思うの?私、フランキーなら、大丈夫だと思うわ」
フランキーの目が丸くなる。
簡単に「大丈夫」なんて言うロビンに、「おれが好きなのはお前だぞ?」と言ったらどんな顔をするのか見てみたいとも思ったが、一時の情動で取り返しがつかないことをするのは止めた。


「彼女がおれに求めている姿は……そういうンじゃねェんだ。おれが女として見ていると知ったら、今の関係性が壊れる。そうしたら、彼女はきっとがっかりする。おれは…何かを失う思いを、彼女にはさせたくない」
フランキーは詳しく言わないけれど、その関係性が『弟』であることはサンジから聞いてロビンは知っていた。
重度のシスコンのために自分と同じような年上の女性を好きになって、その好きなひとに対してまで弟として接してしまったフランキーに同情が禁じ得ず、不謹慎とは思いながらも可愛いな、と思ってしまう。


でも、その陰で黒い嫉妬がロビンの心を蝕む。
『姉』なら私がいるじゃないの?
もっと『おねえさん』が欲しかったの?
私ひとりでは…駄目だったの?
どうして好きな相手が『おねえさん』だったのに、私を選んでくれなかったの…?
指で突いたグラスの中で、ワインが涙のように揺れた。


「なるほどね。それじゃ一生、告白できないわね」
「まーな。もうしょーがねェわ」
諦め顔でウハハと笑うフランキーを、ロビンは眉を困ったような形にして見守った。
そうやって、そのひとを好きで居続ける以上、フランキーは物想いに耽り続けるのだろう。
そのひとのために操を立てる真似をして、限りの見えない忍耐を己に強いていくのだろう。
嫉妬でロビンの胸が焦げる。


「なァ、ロビン」
名を呼ばれ、慌てて瞳から浅ましい色を散らす。
「おれの片想いをさ、そうやって後押ししてくれる気持ちは有り難いんだけど……」
「ええ、それが?」
「そうやってさ、ロビンのお陰でもしもおれが上手くいって、その惚れた女と付き合ったら……多分、入り浸ってここには殆ど来なくなると思うんだ」
ロビンの心臓がぎゅうっと締めつけられた。


「これまで付き合って来たコ達と、今、惚れてる女は別格なんだ。初めて、おれは誰かを好きになった。そのひとがいたから…おれは、自分も誰かを愛せる人間なんだって知ることができた」
フランキーの唇が、見ず知らずの女を褒める度、ロビンの心が黒々とした闇に覆われていく。
どうして自分がそのひとでないのか、息が詰まっていく。


「そうしたら…ロビン、寂しくなるだろ?」
ロビンはテーブルの下で震える手を強く握り合わせて、でも顔にはにっこりとした笑顔を浮かべた。
「寂しいけれど、我慢するわ」
「……」
「いつまでもフランキーに甘えてたらいけないもの」
「そっか」
「ふふ。予想通り、フランキーの方が先に結婚することになりそうね」
ロビンの言葉にフランキーの目が伏せられる。







ウソツキ。
私が結婚するまで結婚しないと言ってたくせに。
ばあか。
何で、分かんねェんだよ、おれがロビンを放ってどこか行くわけねェって。







外は大雨。
激しく雨垂れが歌っている。
ふたりは黙って、それぞれのグラスに口をつけた。
蟠った想いも、こうやって呑み下すことが出来たら。



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