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フラロビのSS置き場。
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ナミに殴られて鼻血出すんだから、あの辺には生身部分があるんだ。


皮膚も筋肉も相当な強度を誇りながらも見た目は本物のような質感。
フラロビ的フランキーの触覚を考えるとどうしたって『攻殻』の義体、素子の皮膚触素16×16/平方cmを連想してしまう、高スペック高感度なアレ。
去年、アメリカの大学がサイボーグ・スキンを開発に成功したってニュースがあって「へえ」と思ったものだけど実用化は先の話だし、廃船でそんなものまで作ってしまうフランキーってやっぱすげー、って思う反面、そんなの作れるのは船大工っていうか科学者だよね、と冷静に思う。


++++++++++






79. Reset -I'm feeling you. (1)-


「これで後片付け終了、と」
ロビンは蛇口を捻り、濡れた手を振って水気を切ると、タオルで拭く。
ロビンは綺麗になったキッチンを眺め渡し、ふう、と息をついた。
棚からハンドクリームを取り出して水仕事を終えた手に塗り込むと、ラベンダーのやさしい香りが漂った。


「いい香り」
以前、フランキーにプレゼントとして貰って以来、ロビンは自分でもこのシリーズを購入するようになった。
この香りを嗅ぐ度に、フランキーが連想されて幸せな気持ちになれる。
でも、今夜は少し、胸が痛い。


フランキーの好きなひとを連想させる話題を振らなければよかったと、ロビンは後悔していた。
あんなに楽しそうにしていたのに、思い出させたことでフランキーの笑顔が曇ってしまったし、自分もまた、醜悪な嫉妬に苛まれる結果になってしまった。
自分ではフランキーの力になれない、好きなひとの代用にもなれないことを嫌という程に痛感した。
「ご馳走様。ありがとう、ロビン」
そう言って帰って行ったフランキーの苦い笑顔が、目蓋の裏に焼きついて離れない。


キッチンの灯りを落とすと、ロビンは半乾きの髪をタオルで拭き上げながら2階に上がった。
夜更けから風も出てきたようで、家を打つ雨がザラザラと音を立てている。
「読みかけの本の続きを少し読んで…それから寝ようかしら…?あら?図書室の電気点けっぱなし…」
そういえば、夕食の前にフランキーがここで宿題をやっていたことを思い出す。
「しょうがないわねぇ…電気を消さないでキッチンに飛んできたのね?」
ロビンはクスクス笑いながら、壁の調光ダイアルで灯りを絞る。


程良く薄暗くなったところでカウチに向かい、ロビンは心臓が止まるくらいにびっくりした。
カウチの背凭れから人の頭が覗いていたからだ。
水色の髪のおかげでそれがフランキーだとすぐに知れたけれど、自分しかいない筈の家に予想外の人体を見つけると、流石のロビンも心臓に悪い。


「ふ、フランキー?」
何でこんなところにいるの?
玄関で見送ったのに?
帰ったんじゃなかったの?
たくさんの質問を抱えて近づくと、フランキーはカウチでぐっすりと眠りこけていた。
無邪気な寝顔にロビンの頬が緩んだ。


「フランキー…」
カウチから滑り落ちた大きな手の先、床の上に、フランス語のテキストが落ちていた。
ロビンがシャワーを浴びているうちに忘れ物を取りに来て、何となくカウチに転がっている間に睡魔と意気投合してしまったのだろう。
フランキーはクッションに高く頭を寄りかからせて、あどけない顔で寝ていた。
ロビンは棚からブランケットを取りだすと、クーラーの冷気で寒そうな腹にそうっと掛けてあげた。


「昔はよく…こんな寝顔を見てたっけ…」
すっかり大人の顔になってしまったフランキーの中に、昔の名残を見て懐かしく思う。
「いつも今みたいにお腹出してて、仰向けで大の字で、こんな風に上掛けを直してあげて…」
サイドテーブル上にある読書用の小さなライトの灯りがフランキーの顔に当たっていたので、彼が眩しくないように、大きな身体越しに向きを変える。
フランキーの傍らについた手に体重がかかり、カウチがギシ、と音を立てた。


カウチが発した音に、生々しい情景がロビンの脳裏を横切った。
フランキーの寝顔を見下ろす。
眉間の皺、高い鼻梁、閉じた目蓋、半ば開いた唇、男らしい顎、逞しい首、大きな喉仏。
それらに落ちた灯りが作り上げるコントラストを見ているだけで、ロビンの身体はじわりと熱を帯びてくる。
乱れ始める呼吸を宥めるために、大きく深呼吸をした。


自分が与える刺激に若いフランキーが必ず陥落するという自信が、ロビンにはあった。
それだけの経験は過去に積んできたし、それらを身をもって教えてくれた男もいた。
最初は戸惑うかもしれない、けれどそれ以上に、狙った相手を籠絡させるだけの手管を、ロビンは持っている。
ロビンは身体を傾けた。
既成事実を作ってしまえば。
そんな短絡的な欲望が心身を支配する。


自分に溺れてくれれば、彼とは身体だけの関係が続くかもしれない。
6つも年が上のこの身体に、若いフランキーが溺れるかもなどという考え自体がおこがましいと思うけれど、実際にフランキーが恋している女性は自分と同じ年代だという。
彼はモテるのだから、幾らでも、選べる立場にいるのに年上の人が好きだという。
だからきっと、自分でも受けて入れてくれる筈。


けれど、でも。
一時の劣情に流されて。
フランキーを今宵だけ、強制的に肉欲の虜にしたところでどうなるのか。
彼には好きなひとが他にいるのに。
自分を姉と慕っている彼の心を無視して、明日から、どうやって接していけばいい?
夜が明けて冷静になったら、もう、会いに来てくれなくなるかもしれない。


ああ、
それでも。
抱かれたい。
フランキーに抱かれたい。
彼が欲しい。
心も、身体も、彼が欲しくて堪らない。


ロビンは苦しそうに唇を噛み締めた。
「ここにいてはもう…駄目…離れなくちゃ…」
自分を叱咤しながらも浅ましい未練に流されて、せめて、とフランキーの髪に手を伸ばし、そうっとその指を挿し入れた。
艶やかで柔らかな水色の髪はひんやりとしていた。


髪を梳る。
頭を撫でるように、指をやさしく這わせる。
「…きよ、フランキ…」
息が詰まる。
いつかきっと堪え切れなくなる日がやってきて、この想いは私の胸を引き裂くだろう。
いえ、もう、限界はとっくに超えていて、自分でも知らぬ間におかしくなっているのかもしれない。


離れなくてはいけないのに。
ロビンはフランキーの傍らに腰かけると、今度は真上からその寝顔を見下ろした。
長い黒髪が肩を滑り、フランキーの額に当たりそうになった。
「ふ…」
名前を呼ぼうとして、止めた。
名前ではない何かか、零れ出てしまいそうで。


「……んぅ……」
その時、フランキーが身じろぎをした。
フランキーの唇が微かに動き、無音の声で誰かの名前を呟いた。
やさしくて穏やかな表情、でも男らしい鼻筋に切ない皺が刻まれて。
そんな顔で誰の夢を見ているの?
私がここにいるのに、どうして他のひとを愛しているの?


フランキーは、私の大切なひと。
盗らないで。
誰にも、渡したくない。


引き結んだ唇を、フランキーのそれにゆっくりと近づける。
寝込みを襲って、唇を奪うだなんて、全く愚かしいことだと分かっている。
けれど、こんな機会はきっと、もうないから。
こんな風に、静かに、私の理性が欲望に負けるなんて。


繊細なワイングラスを触れ合わすように、唇と唇が触れた。







天窓を大粒の雨が叩く。
夜闇の帳、村雨の檻、雨垂れの幕、
透明な黒い水底に迷子の魚が2匹。







フランキーはトムズに戻る途中、図書室にフランス語のテキストを置きっぱなしにしてきたことに気がついた。
明日は家を出るのが早かったから、明朝に出直すよりも今取りに戻った方がいいと判断して、ロビンの家に戻った。
ピンポン鳴らしてロビンを呼び付けるのも気が引けたので、合鍵で入り込んだ。
ロビンはシャワーを浴びているようで、シャワー室の中、というものに興味はあったけれど、真っ直ぐに図書室に向かった。


テキストはカウチの上に放り投げてあった。
そのまますぐに帰っても良かったけれど、何となく、引かれるようにしてカウチに転がった。
ここはロビンのお気に入りのスペースで、彼女が良く読書をしている場所だったから、ファブリックに甘い花の残り香が感じられた。
「うは…ロビンだ…」
ロビンに抱き締められているような、そんな心地がして気持ち良かった。
気持ちが良くて、自棄酒気味に飲んだ最後の一杯が効いて、両目蓋を合わせたら最後だった。


うつらうつらと、浅い眠りを漂っていると、花の香りが濃くなった。
細い指が髪を撫でてくれる。
あのハンドクリームの匂いがした。
ああ、ロビンだ、ロビンが傍にいてくれてるんだ、と夢なのに嬉しくなる。
ロビンが傍にいるのなら起きなくちゃ……起きて、もっと話がしたい。
今度はロビンに気を遣わせないように、ちゃんと笑わせてあげるから。


好きなんだ、ロビン。
おれが好きなのはロビンだ。
ロビンがいるのに、他の女に目が行くわけ、ねェじゃねェか。
何でそれを、分かってくんねェのかなァ…


眠りがもっと浅くなる。
ほんの少しだけ、薄く目を開くと、すぐ近くにロビンの綺麗な顔があった。
周りは仄暗くて、あれ?おれって寝る前に灯り落としたっけ…、なんてまだ眠っている頭がぼんやりと考える。
何でこんなにロビンが肉迫しているのかも理解できなくて、やっぱり今はまだ、夢の中なのかもと目蓋がまた合わさった時。
羽根のように、ロビンの唇が、降って来た。



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しばらくフラロビ妄想で生きていけそうです。
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