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フラロビのSS置き場。
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『アメリカンブルー』ってのもフランキーぽい。


前回の話でふたりに一線を越えさせるか、寸止めにするかでも試行錯誤して、で、結局やらしてみたのは寸止めにしちゃうと今後ラブラブな濡れ場しか書けなくなっちゃうから。
レ●プ紛いのお互いに苦い思いを噛み締めながらのセックスする機会を失うのが惜しかっただけ。
愛があるのは大前提だとして、色んなシチュの裏文が書きたいんだよね。


++++++++++






82. Reset -ゆらぎの雨 (1)-


昨日からの雨はまだ降り続き、幾らかは弱くなったとはいえ、傘が手放せる程ではない。
傘の内側にポツポツと響く雨粒の歌は物悲しく、元より悲愴に暮れていたロビンの気持ちを更に落ち込ませた。
はあ、と幾度、肺の中を空っぽにしても、溜息が果てる気がしない。
「大、嫌い…か…」
フランキーに突き付けられた言葉を繰り返し呟く。
今回ばかりは、もう浮上出来ないかもしれない。


とうとう、フランキーと男女の関係になってしまった。
ずっと夢には見ていた。
フランキーのキスが欲しかった。
抱かれたいと思っていた。
『姉』ではなく『女』として見て欲しかった。


けれどそれは実現不可能、というよりは実現してはいけない夢だと承知していたから、実現させる気はサラサラなかった。
自分のその夢を叶えるということは、フランキーから大好きな『姉』を取り上げてしまうことに他ならなかったから。
ただでさえ、フランキーが理想としていた『高校時代のロビン』を壊してしまった自分だったから、せめて『姉であるロビン』は壊さないように、必死に想いを殺して来た。
フランキーのためにと、無理に無理を重ねて、『姉』を演じて来た。


でも、その関係性を自分の手で消滅させてしまった。
『姉』でなければ、フランキーの近くにはいられないと痛いほど分かっていたのに。
フランキーに大嫌いと言われてしまった。
以前、嫌いになることは絶対にないと力強く宣言したフランキーが、その宣言を覆すくらいに自分の行いは彼を傷つけたのだと、ロビンは激しく己を責めた。


永い間、他の誰も抱かずに好きな相手のために想いを育てて来たことも、無に帰させてしまった。
若いフランキーがそんな不自然の上で不安定になっていることを知りながら、己の欲望に負けてキスをして、彼の忍耐の堰を切らせたくせに、被害者顔で涙を流した。
諸悪の権現の女に、無言で責められてフランキーはショックだっただろう。
嫌われても当然の報いだ。


別に、フランキーに抱かれたことを嘆いて泣いたわけじゃない。
彼を責める意味合いはどこにもなかった。
ただ、自分が求めていたこと、本当に望んでいたことを考えた時、それはやっぱり自分の手には入らないのだと実感して、涙は自然と流れ出てしまった。
あんな過去を持っている女でも、過去を持っているからと諦め顔をしていても、心のどこかで人並みの幸せを望んでいたのかと、自分でも呆れた。


もう、フランキーの『姉』ではいられなくなった。
身体を重ねても、彼には好きな人が他にいる。
それなら心を抜きにして身体だけの関係になれるかと言えば、それもどうか。
昨夜の一度だけを思い出しても、「溺れさせる」どころか自分の方が「溺れて」しまうのが目に見える。
一時的に愛人関係になったとしても、フランキーに厭きられるのも時間の問題で、永続的な関係は到底見込めない。


俯いた視界で、シンプルな黒のワンピースの裾が翻る。
鬱陶しい雨だから、本当は急いで家に帰りたかった。
けれど、最短ルートの商店街を突っ切って知り合いと挨拶をにこやかに交わせる気分でもなく、ロビンの足は無意識に人気のない住宅地を抜けて帰る遠回り道を選択していた。


庭先や垣根に咲く初夏の花も、雨に煙って色褪せている。
それでもなお、花は色鮮やかであろうと競い合っている。
そんな花々を見ても、ロビンの心は一瞬も、フランキーのことから離れられない。


雨の音を聞く。
花を見る。
フランキーを想う。
溜息をつく。
その、繰り返し。







自宅に辿り着き、鍵を取り出そうとカバンを引き寄せながら玄関に向かう。
顔を上げるとそこに人影を見つけ、びくり、とロビンの足が止まった。
水色の髪と、アロハシャツと、見上げるような上背。
「…フ、ランキー」
心臓が痛みとともに駆け足を始める。
正直、こんなにも早くフランキーから会いに来てもらえるとは思ってもいなかった。


玄関の廂の下には雨露を凌げるスペースが充分あるのに、フランキーはそこから少し離れた場所でわざわざ雨に濡れていた。
外壁にもたれ掛かり灰色の空を見上げ、キリなく落ちてくる降り頻る雨粒を顔に受けている。
ゴツリゴツリと後頭部を壁にぶつけては、当所もなく、瞳を宙に彷徨わせていた。


ふと、ロビンの帰宅に気付いたフランキーは、ほんの少し緊張した面持ちを緩めて
「よう」
と小さく声をかけた。
冷たい雨筋が高い鼻梁からも、男らしい顎からも次々と滴っている。
フランキーの寒そうな様子に、ロビンは水溜りを物ともせずにフランキーの元に駆け寄り、傘を差しかけた。


「フランキー、どうしたの…?びしょ濡れじゃない」
「何てこたァねェよ…頭、冷やしたくて」
アロハも短パンも、雨を吸って重たそうに色を変え、フランキーの肌に貼り付いていた。
いつも立ちあがっている水色の髪も、すっかりと濡れて萎れてみえた。


「どこかで葬式でも…?」
飾り気のない黒いワンピースと、黒い傘、黒い靴。
黒ずくめのロビンの格好にフランキーは質問を投げかける。
「…今日は博士の命日だから。お墓参りに…」
「そっか…」


フランキーもロビンも、俯いた。
視線の先で向かい合う、黒いパンプスと大きなスニーカー。
「……大学から戻っても古書店が閉まったままで、こっちにもいなかったから、ロビン、どこかに行っちまったのかと思って…もう、帰って来なかったらどうしよ、…って…」
「私に…行くところなんて他に…」
フランキーの言葉にロビンは少し目を上げる。
フランキーは首を背け、どこか遠くを見ていた。


「はかせの命日、今日だったか…」
空色の瞳が紫陽花の花を探す。
フランキーはクローバーの通夜もこんな雨だったことを思い出した。
そして、クローバーの最期に交わした会話も思い出し、ぎゅっと拳を握り締めた。
ふたりは言葉を探し、しばらく黙りこむ。


雨の音が五月蠅い。
でも、雨の音が五月蠅いから、沈黙も耐えられるのかもしれない。


「…どうしたの?鍵、失くしたの?」
ロビンが沈黙を破って話しかけた。
「鍵はある」
フランキーは短パンのポケットからキーホルダーを取り出して見せた。
「あるけど、外でいいやと思って…ロビンを待ってた…話が、あって…」


「鍵があるなら、中で待ってて良かったのに…」
フランキーは苦く笑う。
「……何となく、ここには入れなかった」
昨夜の出来事を示唆する言葉。
ロビンは、きゅ、と身を竦めた。


「中に入って」
自分を見上げる眩しく白い綺麗な顔に、フランキーは苦しそうに視線を逸らす。
「いいよ、ここで…おれは…」
「とにかく中へ…」
ロビンの身体が勝手に、いつもの調子でフランキーの腕に手をかけた。
雨に冷えた肌の下の、硬い筋肉を感じ、ロビンは反射的に手を離した。
それがまた気不味さを生む。


「ずい分長く、ここで待っていたのでしょう?…身体がとても、冷えているわ」
ロビンは玄関の扉を開け、中に入る。
「私も…あなたに話したいことがあるの。ここだと落ち着いて話が出来ないわ…上がって?」
ロビンが家に上がってしまったので、フランキーも躊躇いながら扉の内側に歩を進めた。
勝手知ったるロビンの家、なのに、中に入るのにこんなにも後ろめたい気持ちになったのは初めてだ。
玄関の三和土から進めず、全身から雫を落とし足元に水溜りを作るフランキーに、ロビンがバスタオルを手渡した。


「私も着替えてくるから、その間にシャワーを浴びてきて?このままだと風邪を引いてしまうわ」
「い、いいよ…おれ…」
「いいから。温かいコーヒー、煎れて待ってるから」
「…うん」
「きちんと温まるのよ?」


ロビンはパタパタと二階に上がって行く。
取り残されたフランキーは胸に抱えた丸まったバスタオルを見下ろして、大きく太く息をついた。
諦めて、玄関先でぐっしょり濡れたアロハと短パンを脱ぎ捨てる。
そしてバスタオルで身体を拭きつつ、海パン姿で風呂場へと向かった。



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