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フラロビのSS置き場。
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若ンキーは海パン姿よりも短パン姿の方がグッとくる。何故だろう。


『変態ってのはさ、単に形式的な行為じゃないわけよ
それにこめられたそいつの想い、もっといえば魂とか生き様
そういう部分に痺れるわけ
ああ、こいつの真似はできねえな、本物だなーっていう
一種の感動を求めているわけ』


某巨大掲示板の、とある変態紳士事件スレッドからレス抜粋。
これらの言葉は私の心の琴線を弾いた(ロクでもねぇ琴線にも程があるが)。
まさにフランキー。


++++++++++







83. Reset -ゆらぎの雨 (2)-


「はい、コーヒー」
ダイニングテーブルに腰かけるフランキーの前に、湯気を立てるコーヒーカップが差し出された。
「さんきゅ…」
濡れた髪にタオルをかけたまま、フランキーはカップを受け取って、口をつける。
熱い液体が喉を割って、腹の底をじんわりと温めた。


「ごめんなさい。勝手にトムズから着替えを取って来たわ。適当に選んで来たけど、それでよかったかしら」
「ううん、いいよ。ありがと。素っ裸でコーヒー飲むことになんのかなって、ちと心配してたとこだったから」
アロハに海パン、いつも通りのフランキーのスタイル。
ロビンが持ってきた短パンは表に出る時用であり、室内では用のないシロモノなので、椅子の背もたれに掛けられたままになっている。
「濡れた服は洗濯してるから。乾いたら渡すわね」
「うん…」


ロビンが自分のカップを手にフランキーの向かいの席に着いた。
向かい合ったふたりは黙ってコーヒーを啜る。
室内には雨が家を叩く音が遠く近く、視線はテーブルの上に生けられた水色の紫陽花に縫いつけられた。
ふたりの間を天使が幾度も通過する。
フランキーは、おれはここにシャワーを借りに来たわけでも、コーヒーを飲みに来たわけでもねェ筈だよな、と己を叱咤した。


「昨日はごめん…短気は損気だ、って分かってたんだけど…つい、口から出ちまった」
何度も唾を飲み込んで、言葉を選び選び話し出す。
「あれ、嘘だから。大嫌いなんて……全然思ってねェから」
ロビンの肩が揺れ、黒い瞳が控え目に合わされる。
不安と怖れが、水晶玉のように大きな瞳の向こうに覗いた。
「絶対ェに嫌いにならねェって、あれ、変わってねェから。今も」
真剣なフランキーの瞳から逃げるように、ロビンの目が自分の手元に落ちた。


「私はあなたに嫌われても仕方のないことを、したの……私の過去を聞いても嫌いにならないでいてくれたあなたに、そこまで言わしめるだけの酷いことを、してしまったの…」
カチャリ、と静かな音を立ててカップがソーサーに置かれた。
「……なのに、嫌いじゃない、だなんて。やさしいのね、フランキー…」
「…おれはやさしくなんかねェよ」
フランキーは吐き捨てるように言った。


ロビンのために、と言いながら、自分のことしか考えていない。
昨日だって、ロビンの制止を振り切って、己の本能に従順になった結果がアレだ。
昔から、自分の望みのためにロビンの不幸を願って、そんな愚かな自分を容認してきた。
ロビンが傍にいてくれるなら、ロビンが他の誰に傷つけられても構わない。
むしろ誰かが傷つけてくれれば、自分の元に震えながら駆けこんでくる彼女を守ってやるという名目で自分に縛り付けておけると、そんなことばかり、考えている。


甘えるだけで。
何も与えないで。
昔からそんな男だから、ロビンに選んでもらえないのに。


「おれの方がロビンに酷いことした。馬鹿だよな、おれ…」
「フランキーは悪くない。私が、キスなんて…したから…」
ロビンの声がフェードアウトしてゆく。
フランキーとの情交が、ロビンの脳裏に生々しくフラッシュバックした。
身体の奥底から熱い蜜が融け出して、ロビンは慌てて太腿を引き締めた。
フランキーも同様で。
昨夜の情事がふたりの間に横たわり、口ごもる。


「やっぱり……あのキスは、冗談だった…?気まぐれ、ってヤツ…?」
数呼吸置いて、フランキーが口を開いた。
「私……昨日、ナミやサンジくんに訊いたの。フランキーの好きなひとって、どんな人?って。何か私の立場でアドバイス出来たら、って思ったから…」
ロビンはフランキーの問いに答えない。
アタリ、か。
とフランキーは鉛を飲み込んだようにズンと重くなった胃に、苦い唾を落とし込む。


「そうしたら二人とも、フランキーの片想いの相手は私みたいだと…年齢も背格好も、職業も。そして、フランキーはそのひとと、『弟』みたいに接してる、って…」
「アイツラ…余計なことを…」
「それで、思ってしまったの。どうしてフランキーは、二人いる『おねえさん』のうち、私ではないひとを、選んだのだろう、って。一緒にいたい人として、そのひとを、選んだのかしら、って…」
きゅう、とロビンの指がスカートに皺を作った。


「同じ『おねえさん』な筈なのに、どうして私はフランキーに選んでもらえなかったのだろう、って…」
「ロビン…」
「嫉妬したの、結局、また…。あなたを盗られたくなかったの…。寂しいのを我慢するなんて、嘘。出来るわけない、私に…」
額に手を置き、大きな吐息を漏らす。
「対抗意識、燃やしたの。駄目ね…『おねえさん』なのに…。フランキーが好きなひとのために忍耐してきたことを台無しにしてしまった。フランキーが1年半も、そのひとのために独りでいた苦労も聞いていたのに……」


ロビンはぺこりと頭を下げた。
「フランキーには嫌な思いをさせたわ…本当にごめんなさい。昨夜のことは…気にしないで…」
「気にするも何も」
またも昨夜のロビンとのセックスを思い出し、ペニスがロビンの肉莢に包まれた、あの興奮が立ち返り、海パンの中で肉棒が頭を擡げた。
フランキーはコーヒーカップの柄の曲線を、指で撫でる。


「別におれは…ロビンとヤれたこと自体は後悔してねェし…スーパーに…気持ち良かったし…」
ついつい、妄想にはまり黙り込んだ後、変なことを口走ったことに思い当たり、焦って顔を上げるとロビンが真っ赤な顔で困ったように俯いていた。
「ご、ごめん…」
「う、ううん…」
胸元を押さえ頬を染めて恥じらうロビンに、フランキーの胸の中がきゅうんと鳴った。


年上だとか、過去に色々あったとか、ロビンは凄く気にしているけど。
何この、ウブな反応。
と、フランキーは唖然とした。
正直フランキーも、ロビンがこんな表情を見せるとは意外だった。
やっぱりロビンは年上で経験豊富だと思っていたからだ。
フランキーが抱いた女は山程いたけど、セックスした翌日にこんな恥じらいを見せた女なんて、ひとりもいない。
フランキーにもロビンの赤面が感染った。







ちくしょー
ずりー
可愛いじゃねェか!







「あの…」
ロビンが目を伏せたまま言う。
「フランキーが私を嫌いにならないでいてくれて、気にもしないでいてくれるのなら……また、元通りになれるわよね、私たち…?」
ロビンの問いに、フランキーの眉間に皺が寄った。


「私も気にしないから。だから…」
「ロビンは気に、しない…?」
「ええ」
「何とも思わないで、元通りの顔でいられる…?」
「ええ」
フランキーの眉間の皺が更に険しくなった。


今日、フランキーがここに来たのはロビンに謝るためだった。
レイプ紛いに抱いてしまったことも、「大嫌い」と言ってしまったことも、彼女から大事な『弟』を取り上げてしまったことも、全部謝って赦してもらうためだった。
昨日、自室に帰ってからも後悔ばかりが先に立って一睡も出来ず、大学に行っても授業など耳にも入らず、部活もすっぽかしてロビンに会いに行くと古書店のシャッターは閉まったままで。
自宅のチャイムを幾ら鳴らしても家主は出てきてくれなくて。


ショックで寝こんでしまったのか、客が自分だと分かった上で居留守を使われているのか、それとも傷心して出奔してしまったのか、そのいずれかでも恐ろしくて、フランキーは雨に濡れていることしか出来なかった。
胸が痛くて、息が苦しくて、会って謝っても赦してもらえるかどうか、不安で堪らなかった。
顔も見たくない、とロビンにそっぽを向かれたらと思うと、フランキーはそこから動けなくなった。
結局はそのどれでもなく、ロビンは恩人の墓参りに行っていただけで、自分から逃げていたわけではなかったと知れて、フランキーがどれだけ安堵したか、ロビンは知る由もない。


そして、彼女は「自分には他に行く場所がない」と口にしていたけれど、ロビンが頼めば部屋を提供する男は幾らでもいる、とフランキーは知っている。
他の男のところに身を寄せたのではないかという懸念が、待っている間、フランキーを悩ませた。
彼女がその身体を差し出してくれると言うのなら、フランキーだって一生面倒をみる。
心をくれるのなら、尚更だ。


フランキーは謝った。
赦してもらえた。
赦してもらえるのなら、また傍にいていいと言ってもらえるなら、永遠に『弟』を演じてもいいと思っていた、筈だった。
でも。
昨日のセックスを、なかったことに出来るのか?
と問われれば、No、だ。


ロビンに元通りの関係を求められ、それがもう難しいのだと実感した。
表面ばかりの『姉弟』を取り繕っても、心は違う形を求め、身体は一夜限りのあの快楽を忘れることはない。
無い物ねだりなのは分かっている。
けれど、想いを押し殺して歪んだ関係を続けることは無理だ。
同じことを必ず、繰り返してしまう。


このままではロビンのことも、自分のことも傷つけるだけの未来しかない。
だから、フランキーは決心をした。



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