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フラロビのSS置き場。
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フランキー一家のコスチューム、誰の趣味なんだろう。



フランキーがW7を離れた後、ザンバイたちが「明日からどうすっかなー、アニキに言われたことをやってたから何していいのかサッパリだ」とか何とか明るく途方に暮れてた辺り、解体業者フランキー一家は棟梁のワンマンで持っていたトップダウン集団にも程がある。
フランキーの指示が出ればザンバイ以下の動きは素早いし統制が取れるから問題はないんだけど、指示がなければ動くこともままならない、それを思うと統率力も牽引力もアニキすげぇなぁと思うわけで。
やっぱり重たい過去持ちロビンちゃんくらいどうってことないと思うんだ。


++++++++++






84. Reset -ゆらぎの雨 (3)-


「おれ、決めた。告白、する」
唐突な、フランキーの宣言。
ロビンにしてみたら一切の話の脈絡がなく、「え?」としか言葉が見つからない。
「でも、告白しない、って…」
途轍もない焦燥感に煽られて、ロビンは惑う。


「そのつもりだった。でも、おれが悶々としていると、またロビンが心配になって…のエンドレスだろ?そんなんじゃ駄目だもんな」
フランキーはロビンの戸惑いに気付かずに、言葉を続けた。
膝の上で両の拳をぎゅっと握る。
「駄目なら駄目で…はっきりすれば、スッキリするだろ」
おれも、ロビンも…俯く陰で唇を噛み締めた。
「…そう」
ロビンもまた、俯いた。


フランキーは自分に自信がないけれど、実際に告白をすれば相手の首が縦に振られるだろうと、ロビンは信じて疑わない。
何故なら彼女にとって、フランキーはとても魅力的なひとだから。
相手が『おねえさん』である以上、彼の人懐こさと可愛らしさに靡かないわけがない。
フランキーの告白は、事実上、ロビンへの孤独の宣告だった。
でもそれが、フランキーのためならば、『姉』として後押ししてあげねばならないと思った。


「何て、言えばいいのかな…」
「え?」
下を向いたまま、フランキーがボソボソと訊ねた。
「どう言えば、OK、してもらえるかな…」
アドバイスして欲しいんだ、と言うフランキーの水色の脳天にロビンは切ない視線を向ける。


「フランキーが思っていることを素直に言えば…いいのではないかしら」
「何て?」
「…『ずっと好きでした、付き合ってください』、って…それでいいと思うわ…何も奇をてらわなくとも…」
親身になっているフリをして、実のところそれしか頭に浮かばない。
フランキーに言わせる他の女への告白の文句を、どうして私が考えなければならないの、という腹立ちも湧き上がる。
それでも懸命に淡い笑顔を作った。


「伝わるかな…」
か細い、普段は自信家のフランキーにしては珍しい不安に満ちた声。
分からないでもない、ロビンだって、フランキーに対しては自信なんて持てない。
「大丈夫よ、フランキーなら。相手のひとだって、フランキーのこと、好きよ。上手くいくわ」
「ホントにかよ…」
適当なこと言うなよな、と非難がましい視線を向けた。


「おれ…駄目だったらマジで立ち直れないと思うぜ?」
「そうしたら…私…」
「私?」
「……何でもないわ」


私が何だと言うのか。
私がいるから?
私が代わりになるから?
愛情のおこぼれに預かろうとでも?
あまりの浅ましさにロビンは口を噤んだ。


「分かった」
フランキーは頭に掛けていたタオルを取ると、ゆっくりと背中を伸ばし、大きく深呼吸をした。
洗いざらしの髪はボサボサで、前髪を下ろしたフランキーは、どことなく幼げで。
リーゼントにしようと伸ばし始めた長い前髪の影で瞬く瞳は、所在なさげだった。
フランキーが真っ直ぐに見つめてくるので、ロビンは自分が告白の練習台にされるのだと理解する。
年恰好も背格好も似ているのであれば、練習台にしない手はない。
とても緊張した、見たことのないような真面目な顔で、ロビンは思わず、『こんな真剣な顔も、やろうと思えば出来るのね』なんて感想を持ってしまった。


フランキーはもう一度大きく深呼吸をする。
そして、
「ずっと…ずっと好きだった…おれ、と、付き合って欲しい…」
多少震えてはいたけれど、大きな声でフランキーは言い切った。
「おれの傍にいて欲しい…おれには、必要なんだ」
不安そうな空色の瞳が、揺らぎながら見つめてくる。
ロビンの胸が高鳴った。
まるで、自分が告白されたような気分になる。


「ロビン…が…」
「大丈夫。練習でこれだけ言えれば、本番でも上手くいくわ」
そんな馬鹿げた考えを払拭するために、ロビンは明るく笑った。
途端、フランキーの目が見開かれて、傷ついたような色が差した。
ブルブルと握られた拳に震えが走る。
その震えが全身に広がらないように、フランキーは手に目を据えて堪えた。


「今のは…」
「なあに?」
「練習じゃねェよ…」
歯の隙間から押し出されたような、かすれた力のない言葉がロビンの耳に届く。
「本番だ…」
「……」
「おれが好きなのは…」
訴えるように、フランキーは頭をガバリと上げた。


フランキーが合わせた正面の瞳は、表情がまるで読み取れない瞳だった。
フランキーには、ロビンが甚く冷静に思えた。
顔色一つ変えず、『弟』からの突然の告白に動揺するわけでもなく、嬉しがるわけでもなく、一笑に伏すわけでもなく、どう返事をすれば一番角が立たないかを考えているような、そんな表情に思えた。


誠心誠意、全身全霊をこめた告白が不発に終わったことを悟り、フランキーの首がガクリと項垂れる。
「練習…ね…」
想いの丈を込めたのに、誰か宛ての練習にしか思われないなんて、何て滑稽なんだろう。
燃え尽きて、頭の中は真っ白な灰になった。


フランキーが思うように、ロビンは冷静だったわけじゃない。
あまりに予想外の言葉に反応が全く出来なかっただけで。
フランキーが発した告白はほんの短いフレーズなのに、一言一言を思い出し、噛み砕き、理解するのにどうしてこんなにも時間がかかるのか。
頭脳の明晰さを自負していた彼女としては、自分が莫迦になったのではないかと思わざるを得ない。


実際に、ずい分莫迦になったと思う。
フランキーが絡むといつも、私は莫迦な女になる。
頭が全然回らない、客観的に物事を考えることが出来なくなる。
そして、莫迦で愚かで、嫉妬深くて疑り深い、始末に負えない女になる。


「私…」
フランキーの想い人が自分だったことが真実と受け取れない、彼がそんなことを言うにはそこに何か、そう言わなくてはならない切羽詰まった理由があるとしか思えない。
己に自信が全くなく、いささか混乱している女の脳が弾き出した答えは、
「フランキー…昨日、私にしたことを気にしなくていいのよ?」
というものだった。
「責任取らないと、なんて考えなくても…。告白はフランキーの好きなひとにすればいいのよ?」


突然、フランキーが破裂したように笑いだした。
どこかヒステリックさを感じるくらいの大笑いに、ロビンはキョトンと目をぱちくりさせた。







何でこのひと、こんなに真剣で、こんなに真面目なんだ?
可笑しいくれェに。
やっぱり、最初っからおれなんか頭にねェんじゃん。
おれが自分に告白するなんて可能性、これきりも持ってねェんだ?
ああ、ホントおれって馬鹿だ。
道化もここに極まれり、だ!







「冗談だよ」
フランキーが涙目で笑う。
くっく、と笑いを噛み殺し、「冗談だよ」を繰り返す。
「ロビンだって昨日、冗談でおれにキスしたんだ。お返しだ」
「な…」
大きく息を吸い込んだまま、ロビンの呼吸が止まった。
「何だ…」
息とともに言葉を吐き出して、空っぽの胸の中に残る棘の痛みに、一瞬でも本気に受け取ろうとした自分を嘲るように薄く笑った。







ほうらね。
フランキーが私を好きなわけ、ない。
選んでくれるわけ、ない。
自惚れてた…。
フランキーを傷つけた、罰が当たったのね。
心が高く持ち上げられて、思い切り下に落とされ、叩きつけられた。
もう、潰れて壊れてしまえば良かったのに、私の心なんか。








「本気にした?」
と訊ねると、
「ええ、心臓に悪いわ」
と胸を押さえた。
「そんなに真に迫ってた?ロビンが本気に思うくらいなら、おれの告白、きっと上手くいくよな」
「……もちろんよ……」


どちらともなく、カップを口に運ぶ。
コーヒーはすっかり温まっていて、苦いだけで、不味かった。
強い雨音が立ち返り、自分達を押し包んでいるものが沈黙だと、嫌という程に知らしめる。
フランキーが、ガタリ、と席を立ち、背もたれに掛けられていた短パンに足を突っ込んだ。


「おれ、帰るわ」
「あ…そ、う…」
コーヒーごっそうさん、と言う背中を追いかけて、ロビンも玄関に見送りに行く。
暗い廊下をふたりは無言で歩いた。
いつの間にかきちんと揃えられているスニーカーは中までぐっしょりと濡れていたけれど、フランキーは構わずに足を突っ込む。
一気に足先が、心と同じくらい冷えた。



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